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2章 冒険者になろう
11話 納品します
しおりを挟む夕方のこの時間にギルドハウスに来るのは初めてだ。朝よりは少ないが其れなりに多い。テーブルで報酬を分配するチームや、買取カウンターで交渉してる人など色々だ。さて私も列ぼう。何だろう、生臭い気がする。
前に一度見た頭の寂しげなおじさんだ。ロブスさんと言うらしい。
「依頼分の納品に来ました」
先に依頼書とギルドカードを渡す。ロブスさんは受け取った三枚の依頼書を確認する。
「角兎肉5キロ以上と、角兎の毛皮5匹分、角猪肉10キロ以上と。あれ、今日受けた依頼ですよね、もう達成されたんですか?と言うか依頼品はどこに?」
たすき掛けの鞄一つで荷物がないのでロブスさんは怪しむ。私は少しカウンターに身を乗り出し小声で伝えた。
「マジックバック持ってますので中に入れてます」
「そ、そうですか、じゃあ、か、買取カウンターの奥の方へ、結構ありそうなので」
ロブスさんは噛みながら案内してくれる。顔が赤いぞ?ロブスさんは買取カウンターにいる男性に声をかけ私の依頼書を手渡した。
「よう、嬢ちゃん。あんた昨日登録した新人だよなぁ、オレはギブソン、解体と査定係だ。よろしくな。で、角兎と角猪って、おいまじか」
依頼書を見て意外そうな顔をする。
「エルと言います。お願いします」
ギブソンさんの前に角兎肉5匹分と皮5匹分、角猪一匹分を出す。ふと見るとギブソンさんの口が開いていた。
「あ、ああ、ちょっと査定すっから、こいつは番号札だ。番号で呼ぶからその辺で待ってな」
8番と書いた木札をもらう。待ってる間に依頼書ボードを見てこよう。新しいのがあるかもしれない。
【角鹿の毛皮】が残ってる。あとは【角兎肉】が増えてる、依頼が【酒と肉亭】ってなってる、ここって酒と肉しかメニューにないのかな?鹿肉の依頼があればいいけど無さそう。この辺は商業ギルドにでも売るか。
ん?【角鹿一頭】って言うのがある、こっちの方が解体してないしちょうどいいや。あとは薬草系だな。ぴっと二枚の依頼書を剥がす。ちょうど8番が呼ばれたので買取カウンターへ行った。
「角兎はどれも一発で仕留めてあって毛皮に傷がない。依頼書は2500だが3000ってとこだ。肉の方は6.6キロなんで2970メル。角猪肉は16キロで12800メル、合計で18770メルだ」
なんか渋い顔で依頼達成のところにギブソンさんのサインが入った依頼書を差し出される。受け取ろうとした時ギブソンさんが口を開いた。
「…査定、待ってる間に依頼書剥がしてたよな、嬢ちゃん。そのバックの中にまだとって来たもん入ってんのか?」
「はい、他にもあるんでこの後受付処理して貰おうと思ってます」
そう告げるとますますギブソンさんの眉間に皺がよる。
「邪魔くせえからここで俺が受理してやる。出しな」
「常時依頼の薬草なんかはどうしたらいいですか?」
「薬草まであるのか?そいつもここで出しな。薬草の本数で依頼書書いてやる」
「わかりました、ではお願いします」
【角兎肉】と【角鹿一頭】の依頼書を渡しインベントリから兎肉と角鹿を取り出す、あ、ヤベ!角鹿ほんのり温かい、どうしよう。そうだ無詠唱で氷魔法《温度低下》で温度を下げつつ出して見た。
ザワザワッと周囲が騒めく、あ、バレたかな周りがなんかこっち見てる。
「おい、今鞄から角鹿一頭丸々出さなかったか?」
「マジックバックじゃあないのか」
「いやそれより、あの子が倒したのか?あの角鹿!」
そっちですか、ちょっとホッとした。前を向くとまたギブソンさんが難しい顔をしている。
「角兎肉がこんだけあるんだったら毛皮もあるんじゃないのかい?」
ギブソンさんの後ろから聞き覚えのある声がした。
「マスッ、ランダか、俺もそう思ってたとこだ、あるなら買い取るぜ」
うーん、レイディが捕まえた角兎は爪跡があって売り物にはなりそうにないんだよね。まあ、見せたら納得してくれるか。
「残りの毛皮は傷が多くてちょっと売り物にはなりそうもないんですが」
カウンターに置いた毛皮をギブソンさんとランダさんが手に取って調べる。
「なんだい、この大きな傷、爪跡だね」
「従魔が捕まえた分なんです。捕まえた時の傷が…」
「へえ、従魔持ちかい、何連れてんだ?嬢ちゃん」
「グリフォンです」
ガタン、ドタッ、バタン
あっちこっちから物音がする。前を見ると今度はギブソンさんとランダさんの口が開いていた。
ランダさんがハッと我に返り
「暫く前にグリフォン連れの冒険者が街に入ったって聴いたが、このイチニにグリフォンを従魔にしてる冒険者なんていないからガセネタだと……あんただったのかい」
「一体どこでグリフォンテイムしたんだ?」
尋ねるギブソンさんをランダさんが止める。
「冒険者の詮索は御法度だよ、ギブソン」
「ああ、そうだな、つい。すまんな嬢ちゃん。まあこの皮は買い取れても一枚100メルだな、どうする?」
持ってても仕方ないので売っちゃおう。ギブソンさんに売ると返事をする。
「わかった、あとは薬草か」
インベントリから薬草を取り出す。
解熱草15本、解毒草10本、ロキ草16本、ビオ草20本、ヒール草10本。それぞれ水で湿らせた麻布に挟んであるので状態はすこぶるいい。
「お、おう、じゃあ査定すっから待ってろ」
今度は15番の木札を渡された。なんかランダさんの視線が痛い。いやランダさんだけじゃなく周りの視線が痛い気が…もしかしてやっちゃった?
査定の結果、角兎肉7キロ2800メル、角兎の毛皮700メル、角鹿一頭1万メル、薬草は状態がいいので解熱草500メル、解毒草450メル、ロキ草650メル、ビオ草500メル、ヒール草550メル。
合計16150メル。本日の収入34920から1割ひいて31428メル…一桁ってどうするんだろ?最低貨幣は10メルの小銅貨だよね。
ギブソンさんから7枚の達成サイン済み依頼書と薬草を包んでた麻布を渡された。
「エル、カウンターで依頼達成処理してもらいな」
ランダさんとギブソンさんに礼を言ってロブスさんのカウンターに並ぶ。1日の収入としてはまあまあかな。グリーンウルフは今日は出さない方がいいだろうな、今度にしよう。先の達成済みの依頼書とあわせて10枚か、ん?10枚…
「ではエルさん、達成済み依頼書を出してください」
ロブスさんに依頼書を渡す。数えてるうちに何だか手が震えてるような、気のせい?あれ、なんか汗かいてますよ。
「え~っとですね、エルさんは依頼連続10件達成で…ランクアップ条件をクリアしましたので……
今日からFランクになりまずね、じょっどおまじぐだざい」
最後なんか変な言葉になってたが、ロブスさんは依頼書を持って奥に引っ込んだ。
若干ふらつきながら戻って来たロブスさんは袋と赤いカードを差し出す。
「Fランクになったので赤のギルドカードになります。表面に間違いがなければ魔力を流して下さい」
名前:エル・年齢:16歳・性別:女
出身地:ディヴァン領、オルフェリア王国
職業:魔法剣士、冒険者
所属:オルフェリア王国、エイデ領、イチニ支部
ランク:F
賞罰:ー
「ではこちらは依頼達成料の31430メルです」
大銀貨3枚、小銀貨1枚、大銅貨4枚、小銅貨3枚いただきました。一桁は切り捨てかな。
「ありがとうございます」
さあ、宿に帰ってお風呂に入ろう。
「登録1日目でランクアップって嘘だろ…」
そんな呟きがエルの後ろ姿に向かって放たれた。
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