69 / 140
5章 嵐は…
7話 嵐?失礼な、春のそよ風でしてよ
しおりを挟む「この辺で終わりにしましょう」
「うーん、やっぱり雷魔法むずかしいな。ウリュはなんでできるんだ?」
「なんでって言われても困る」
何度か初級雷魔法を見せたりしたけどアレクス君の雷魔法は発動に至らずでした。
「見てわからないなら受けてみればいいとおもう…」
ぼそりと呟くウリュ君、ある意味正解ではあるな。体験して理解できることもある。
「ええ~、シビシビすんの?オレ」
アレクス君が露骨に嫌そうな顔をする。当然と言えば当然だ。話をしながら訓練所をあとにする。
「私、レイディにご飯あげてくるから、2人とも先に戻っててくれる?」
「オレ、受け付けに訓練所使い終わったって知らせてくるよ」
「僕も、いっちょにいきまちゅ」
というわけで二手に別れました。
昨日、今日と半日だけでも依頼で外に出たのでレイディはさほど退屈はしていないだろう。厩舎に入ってレイディに…
アレ、見間違いかな。眼をこすってもう一度見る。レイディの横にヒッポグリフがいる。この大型従魔用厩舎にレイディ以外がいるの初めて見たな。ヒッポグリフか…
レイディが楽しげにして…
……
……………
「…カルラ?」
ええええええっ、なんでカルラがここに!!って言うことは。
「エル姉、なんかエル姉を探してる冒険者がいるって受け付けの人が教えてくれたぞ」
ギルドハウスの裏口から厩舎に向かって、アレクス君とウリュ君が駆けてくる。
2人は近くに来るとさらに説明してくれた。
「グリフォン連れた女の冒険ちゃってオネーちゃんの事だと思うの」
「…それって、私を探してる人、どんな人かきいた?」
「綺麗な女の人だって言ってたぞ」
マズイ、マズイマズイマズイマズイマズイ…絶対お母…
「あら、あら、まあまあなんて可愛らしい」
「うぐっ」
「ア、アレクちゅっ」
なんの気配も感じられなかった。突然目の前からアレクス君の姿が掻き消えた。
ウリュ君と2人周りを見回すと5メートルほど離れた厩舎の扉横にアレクス君を抱きかかえてスリスリする女性……
「エレーニア、いえ、今はエルと名乗っているのよね、貴女いつの間にこんな可愛い子を捕まえたの。1人ワタクシに……貴女、その髪…」
「おっ、お母様っ」
ママンはエルの方を見て言葉を詰まらせる。あ、髪切っちゃったし、色も変えてるから。え、なんだか瞳潤ませてません?再会に感涙?そんなタイプでしたっけ?
「その……髪の色似合ってるわ…」
お互い呆然と見合いしばし動かず。ママンの腕の中でもがくアレクス君だがふんわり抱きしめてる様に見えて、一向に抜け出せずにいる。
「くそっ、離せ、なんで、くっ」
「ア、アレクちゅ、オネーちゃん?」
オタオタするウリュ君の声にハッと我にかえる。
「お母様、とりあえずアレクス君を離してください」
私の問いかけにママンも我にかえる。
「えー、この子ちょうだい」
「アレクス君はものじゃありません」
「ん~、仕方ないわね」
ちゅっ
頬にキスをしてからアレクス君を離すママン。突然の事にボーゼンとするアレクス君は、次に真っ赤になって駆け出し私の後ろに回る。ウリュ君も危険を察知して後ろに回った。
「なななんだよ、あんた!ナニモンだよ」
「あら、わたくしのことかしら」
シナっとポーズをとるママン。
「…ごめんなさい。アレクス君、ウリュ君。この人私の…「姉なの」ってえええぇぇっ」
堂々と被せてきたよこの人。
「ちゃっき、『お母ちゃま』って呼びまちたよ?」
ママンが『あっ!』って顔をした後『チッ』って舌打ち…舌打ちしやがりましたよ、この人。
さっきのことはなかったことのようににっこり微笑む。
「とりあえずどこかでお話ししましょう」
ママンの提案に一旦宿の部屋に戻る事にした。はあ、どうしよう。
テーブルと椅子は出したままだったので勧めると3つしかない椅子を見てママンがウリュ君に声をかける。
「お膝にいらっしゃいな」
「もう1つ出すから、その必要ないからね」
「チッ」
あ、また舌打ちした。本当にこの人侯爵夫人かよ。インベントリから予備の椅子を出す。このテーブルセットだったので椅子は4個買ってあるんだよ。
お茶をいれてそれぞれの前に置く。ウリュ君とアレクス君にはパンナコッタも。
ママンは小指を立ててカップ(木製のマグカップでインベントリの陶器の茶器は使わなかった)お茶を一口。
「ん、まあまあかしら。蒸らしが足らないけど」
「「……」」
アレクス君とウリュ君が気まづげに眼を泳がす。それを見てママンが口を開いた。
「まずは自己紹介をしましょう」
言いながら胸元から金色のカードを取り出しテーブルに置く。
「エルの母親でリッサと言うの、よろしくね」
2人はテーブル置かれたカード、Aランクの冒険者ギルドカードを見て眼を見開く。
(ちょっと、どうしてお母様が冒険者ギルドカードをお持ちなんですか、しかもAランクの!)
(貴女は何を言っているの、学園では最終学年でギルド登録をして実習に出るでしょう。その時登録したのよ)
(なん年前の話ですかっ、それに学園の実習程度でAランクに上がれるはずないでしょう!)
(それは卒業してからもときどき、ねっ。)
(何が『ねっ』ですか。卒業と同時に侯爵家に嫁いだんじゃなかったんですか。もしかしてお父様に内緒で…)
「「!!」」
ずっとヒソヒソ声でやり取りをしていたが、突然冷気が辺りを包んだ。アレクス君とウリュ君が飛び上がる。
(あの人にバラそうと言うなら、いますぐ連れて帰るわよ)
(わかりました、絶対言いませんから、と言うかお父様に会うつもりないし、それやめてください。2人が怯えるから、怯えてるからぁ)
「あら、ごめんなさいね」
2人の青ざめた表情にママンはすぐさま威圧を引っ込める。
「初めて会った時のエル姉よりこえーよ」
アレクス君のセリフにその時いなかったウリュ君はきょとんとする。
「オレはアレクス、こっちはウリュ。オレ達エル姉のチームにいれてもらった」
「怪我ちてたところをたちゅけてもらいまちた」
2人もそれぞれのギルドカードをテーブルに置く。
「まあ、チームを組んでるのね、どんな依頼を受けてるの?」
「依頼はFやGのだけど、明日からはダンジョンに行くんだ」
「まあ、ダンジョンに行くの楽しそうね……エル、私も行きたいわ、チームに入れなさい」
「「「え?」」」
ーーエルの心のうち
何言ってるのこの人、連れ戻しに来たんじゃないの?あ、ダンジョンか、ダンジョンなのね。去年の夏もそもそも行こうと言い出したのはお母様の方。私を探してここまで来た理由よりダンジョンが優先されるのね、はあ。
ーーアレクス君の心のうち
すっげー、エル姉の母親Aランクの冒険者なんだ。すっごい美人なのに。強いんだろうな、だいたいさっきも近づいて来てたの全然わからなかったし、抱えられた時も《魔力纏》までしたのに抜け出せなかったんだよ。
ーーウリュ君の心のうち
この女の人、凄いでちゅ、近づいて来たの全然わかりまちぇんでちた。さっきの威圧もすごくて僕動けまちぇんでちた。だからかな、オネーちゃんに上から「入れなさい」って命令ちてまちゅよ。
「私たち【転移水晶柱】でダンジョンの6階層から始められるのだけど、お母さ「リッサ」ま?」
「リッサって呼んでちょうだい」
ニッコリ微笑むが眼は笑っていない、あこれ逆らっちゃダメなやつだ。
「…えっと、リッサは【四季ダンジョン】は行ったことが無いから1階層からしか始められないと思うの…です、が」
ママンはコテンと小首を傾げ顎を人差し指でポンポンと叩く。
「従魔、連れて行けるんでしょ?」
「ええ、私達レイディと一緒に潜ってるわ」
「じゃあレイディとカルラですっとばしたら5階層まであっという間でしょう」
「カルラって?」
ウリュ君から質問。
「ワタクシの従魔のヒッポグリフよ、レイディの育ての親でもあるから。2頭は仲良しだから、一緒でも問題ないわ」
「お姉さん、ヒッポグリフ従魔にしてるの?あ、厩舎でレイディといたやつ?」
「そうよ」
「すっげー、いいな、俺もいつか飛行タイプの従魔欲しいな」
キラッキラッの眼でママンに話しかけるアレクス君。お姉さん呼びにママンはニッコリ。
「エル姉、いいじゃん。5階層まで飛んでいけばあっという間だよ」
「中ボスいるよ」
「大丈夫だって、中ボスだってオレ達とヒッポグリフも増えるんだぜ」
アレクス君はノリノリです、ウリュ君はやや緊張気味と言うか…
「オネーちゃんがいいなら僕いいでちゅ」
「まあ、ありがとう」
おい、ママン、私まだ返事してないんですけど。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご期待に添えてるでしょうか?
0
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる