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5章 嵐は…
8話 氷の?
しおりを挟む「えっと、おか…リッサは帰りの予定は?」
「あら、そんなもの無いわよ」
「でも、ほら寂しがるヒトいるでしょう?」
「いいのよ、可愛い娘に色ボケで下のだらしない男を見繕った責任取らせなきゃ」
「…は?」
「まあ、期限は別にないってこと、それとも貴女は帰りたいの?」
「いえいえ、それはございません」
「なら気にしない、気にしない」
いえ、気にしない訳には参りません。貴女が帰らないと確実に追ってくる人が、何もかも放り出しちゃう人がいるでしょうが。しかし言い出したらきかないだろう、ここはちゃっとダンジョン行ってサッとお帰りいただこう。
ウリュ君とアレクス君の方を見る。アレクス君はニコニコ、ウリュ君は心配げにこっちを見る。
「はぁ、商業ギルドがトレントもう少し欲しそうにしてたし、1階層からでいいかな?」
「いいよ」
「僕もいいでちゅ」
「じゃあ今回のダンジョンは余裕見て5日の予定で行きましょう」
「ありがとう2人とも」
「「!!」」
チュッ、チュッ
素早い、あっという間に2人の間に移動して頬にキス…そういえば小さな頃よくキスされたな。何かあればチュッチュ、チュッチュ…この人キス魔かも。
「なあに、エルもして欲しいの?」
「結構です!」
「あら、小さな頃は『お母さまちゅー』って「いつの話ですかっ」」
危ない、自由にさせると危なすぎる。
「それじゃあ食事に行きましょう。おか、リッサは宿は取ってるんですか」
「ここに泊まるわ」
「ダメです、ベッド1つしかないんですから、ちゃんと部屋をとってください」
「じゃあウリュ君貸して?」
小首を傾げて『うふっ』って、ちょっとあざと可愛く演出してませんか?
「…可愛く言ってもダメです。貸しません」
「え~、エルのけちんぼ、独り占め反対!」
何かを感じたのかウリュ君がサッと私の後ろに回りチュニックの裾を掴む、ほら、怖がってるじゃないですか。じぃーーっとママンを睨めつける。
「わかったわ、ちゃんと部屋をとるわよ」
そんな会話を聞いているのかいないのかマイペースな肉好き君。
「エル姉、金牛亭行く?」
「そうね、しばらく食べられないから金牛亭にしましょうか」
「美味しいの、そこ?」
「角牛肉がおいしいんだ」
ママンの質問に笑顔のアレクス君、彼はぶれませんね。
そして金牛亭で美味しくステーキを食べ終わろうとした時、イベントは私でなくママンに発生するのだった。
「よう、ねえちゃん、そんなガキ相手やめて、こっちきて酌でもしろや」
酔っ払い冒険者が絡んできた。愚かにもママンに声をかける。
「おっ、そっちのねえちゃんもなかなか、美人2人に挟まれ飲む酒はうまいだろうなぁ」
え、もうお酌決定?バカがいる、ここにバカがいるよ、見ちゃいけません2人とも。
ウエイトレスが慌ててこっちにやってくる。
「お客様、他の方の迷惑になりますので「うるせえ、俺はこっちの美人に酌しろっていってんだ、お前じゃねえよ」」
ウエイトレスも可愛い子なのに、あ、ママンの額に血管浮いたぞ、しーらない。
酔っ払いはママンの肩を掴もうとしたがスカッと手が空をきる。そして冷気が辺りを包み込む。
ゆっくりと立ち上がるママン。アレクス君とウリュ君の耳がへにゃんとなったので結界でママンの威圧を遮断する。
「あなた、ワタクシが美人なのは当然なのでこれは許します。でもなぜワタクシが貴方ごときに酌をしなければなりませんの?正当な理由があるなら100文字以内で答えなさい。その答えが認められたならこのワタクシが、お望み通り酌をしてあげてよ」
ママンが一言一言喋るごとに、周りの温度が下がっていく。一番近くにいる酔っ払いの持つエール、きっと冷え冷えで美味しいよ。酔っ払いの仲間だろうか、さっきまでニヤつきながら見ていた男が腕をさすりながらぶるぶると寒さに震えだす。
「あ、あの…」
酔っ払いの吐く息が白くなってきた。あ、ウエイトレスも歯がガチガチいって震えてるよ。仕方ないのでママンに注意する。
「おか、リッサ、周りが真冬のようになってます、他の人に迷惑ですよ」
しかし氷点下の眼差しで酔っ払いを睨みつけるママン。固まって(恐怖&寒さに)答えない酔っ払いにシビレを切らしたか、腰のポーチ(エレーニアがあげたマジックポーチ)から武器を取り出した。
あ、やば。先に武器出したら正当防衛主張できないよ?
「黙ってないで何かお言いなさい」
ピシィィィン
床を打ち鳴らすママンのメインウエポン
鞭の音が金牛亭に響きわたる………
「「「「「す、すいませんでしたあああぁぁぁぁ」」」」」
ん?なぜか謝罪の声が多いぞ。
鞭が床打つ音で我に帰った酔っ払いとその連れは、小銀貨をテーブルに投げ出し『あわ、あわわわわ』と金牛亭を飛び出していく。
ウエイトレスの女の子が涙目で座り込んでいた。
なぜか関係のない周りの客も頭を下げるもの、土下座するものまでいる。
結界で保護したはずのウリュ君は私の服の袖を掴んでいた。アレクス君は……
アレクス君はキラッキラッの瞳でママンを見てる。なぜ?
「すっげー、鞭だ、初めて見た。あんな風に振り回すのか、すっげーなー」
何故か鞭にご執心だった。
もう、金牛亭に来にくくなったじゃんか、ママン。来れなくなったりしたらアレクス君泣くよ?
あの後、店側からは迷惑をかけたと謝られてしまった。酔っ払い客をうまく捌くのもこう言う仕事には必要だとウエイトレスの娘も頭を下げる。
迷惑をかけたのはこちらのような気もするが、出禁にならなくて良かったよ。
金牛亭はちょっとお高いお店で、酔っ払いが絡んでくるなんて珍しい。あの酔っ払いも依頼金がたっぷり入ってお祝いだ~的な感じだったのだろう、羽目を外し過ぎたね。
後日、金牛亭に【氷結の女王様が降臨された】と言う噂がエオカ中を席巻したとかしないとか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エルの威圧は黒いオーラが立ち上るのですが、ママンの威圧は周りの温度をさげます。
ママンのメインウエポン、読者様の予想通りでしたでしょうか、そうでもなかったかな?
ギルカは面倒くさいので学生時代の『剣士』のままです。
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