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6章 女神祭に行こう
21話 秘湯巡り
しおりを挟む本神殿に行くにはいくつか方法がある。
1つ目は神殿から続く道。半分くらい地下道というかトンネルというか、魔物避けも施され安全ではある。が、高額なお布施が必要なのです。
2つ目は神殿横の門を出て龍峰を登る。金はかからない。冒険者が龍峰に行くときはここを通る。
龍峰には珍しい薬草とかも生えてるし、ここケルムの冒険者ギルドには龍峰の素材集めの依頼があるようだ。
常時依頼の魔物討伐もある。そういえば調査依頼もあったよな。
3つ目は一旦ケルムを出てカリオソの森添いから龍峰に登るコース。あんまり使う人はいない。
私達は3つ目コース選択です。
というか4つ目と言ってもいいかもしれない。レイディに乗って空から行くコースです。その方が早いです。
秘湯巡り地図の南側の5合目辺りにある秘湯から行きます。
5合目にはほとんど人は行かないそうで、この10年ほどは訪れた人はいないという秘湯中の秘湯です。
というかその温泉入れるのか、それ以前に今もあるのか。
空から探すことしばし、それっぽい場所を発見。しかし木が生い茂りレイディが降りれそうにない。
「エル姉、あの辺り降りれそう」
アレクス君が4合目辺りに開けた場所を発見。
「ちょっと距離ありそうだけどあそこからなら真っ直ぐ山を登れば良さそうね。レイディ、お願い」
『了解したなのヨ』
バサバサバサっと勢いよく降りるレイディ。
着地の瞬間は風魔法で勢いを殺しふわっと着地。最近着地が上達したレイディです。
よしよし。なでなでしておく。
これで重力魔法覚えれたらホバリングとかもできるし助走なしで飛び立てるようになるんだが。
しばらくレイディに乗ったまま山を登る。
こちらを伺う魔物の気配がそれなりにあります。あ、なんか突っ込んできそう。
「エル姉、熊っぽいのが来る」
樹々の生い茂った山では弓は使いづらいのでウリュ君は魔法一択にした。
さっと飛び降りそれぞれ得物を構えて待ち受ける。
現れたのはマウンテンベアのようだ。ウリュ君は詠唱を省略せず魔法を放つ。
「山の大地よ、ちょの暗き穴に獲物を取り込め《落とし穴》」
ドタドタと走り寄るマウンテンベアが見えない穴を踏み抜き、勢いのまま突っ込んで落ちた。
「ギャオウ」
「蒼き閃光の槍よ、降りそそげ《雷の槍》」
アレクス君は最近お気に入りの雷魔法を穴を覗きつつ放つ。
「グギャオォォ」
断末魔の叫びと共に香ばしい肉の焼ける匂いが。
「エル姉、エル姉、マウンテンベアって美味いのかな?」
「おいちちょうな匂いがちまちゅ」
「だねぇ。お風呂の後でちょっと焼いてみるかな」
「やった~」
アレクス君がジャンピングで喜びを表現しております。
穴に手を伸ばしマウンテンベアに触れ一旦インベントリに入れてから出すと穴から引き上げる手間が省けます。
さあ解体しよう。
解体中に春階層でお会いしたことのあるビッグマンティスがやってきました。
グリーンホッパーという体長50センチほどのバッタ、ブラックフライという体長30センチの蝿などがちょろちょろ現れます。
虫多いな。
ウリュ君もアレクス君も一撃で倒していきます。強くなりました、ほんと。
あ、レイディ、そんな蝿なんか食べちゃダメです。ペッしなさいペッ。
やはり龍峰、それなりに魔物が出るので温泉まで結構時間がかかってますね。
ん、何か不穏な気配が。
「このちゃきに何かいまちゅね」
「何だろう、これ?」
足音を立てずそっと進むと気配の主がいました。
「Gururururu…」
「えっと、シルバーウルフでちょうか?」
銀色の狼は伏せたままこちらに向かって唸る。あれこの気配って。
「あ、エル姉、こいつ怪我してる」
マズルが短めでまだ子供かも。近くに親がいる可能性が高い。
見ると後ろ足が『トラバサミ』というのだろうか。サビサビのボロい罠が食い込んでいる。
こんな場所に罠?人が来ないって地図に書いてあったけど。
かなり古そうな罠なので仕掛けたことも忘れられもう随分放置されていたのだろう。
「おまえ、捕まったのか…」
アレクス君がボソリと呟きました。
以前聞いたのですが盗賊や人攫い達は罠を仕掛けて獣人達を捕まえることもあったそうで。
罠にかかった姿に思うところがあるのでしょう。
「なあ、そいつ外してやるからさ、ジッとしてろよ」
「Gurururu…」
「あ、おまえ腹減ってないか、肉食うか?」
アレクス君がポーチから干し肉を取り出しちらつかせる。子狼の意識をアレクス君が惹きつけウリュ君がそっと後ろへ回る。
「ほーら、美味いぞー」
子狼は腹が空いているのか干し肉を目で追いながらよだれを垂らす。
差し出された干し肉パクリと食いついた。
ガツガツと食べる子狼をジッとみるアレクス君にさっきの熊肉を小さく切って渡す。
「こっちあげてみて」
干し肉をあっという間に食べてしまった子狼の前に熊肉を出すとクンクン匂いを嗅ぎだした。
「ほらほら、これも美味そうだぞ」
子狼は私の方をジッとみてからパクリと肉に食いついた。やっぱりこの子狼……
ガチャンとウリュ君が罠を解除した。
子狼は一生懸命熊肉を食べているうちに、ウリュ君がヒールポーションを怪我した脚に振りかける。
「Kyaunn」
ヒールポーションが染みたのか小さく鳴いた。
アレクス君が子狼の頭をそっと撫でる。
「大丈夫、痛くない、痛くない」
「ちゅごい、アレクちゅ。この狼おとなちいの?」
「この子、シルバーウルフじゃないわ。フェンリルの子供だと思う」
「「え…」」
驚く2人をよそにフェンリルの子供は熊肉を頬張る。
突然目の前の空間が引き裂いたように割れ、巨大な殺気が漏れる。
「「ヒッ」」
アレクス君とウリュ君が声にならない悲鳴をあげ飛び退る。
空間の割れ目からのそりと白銀の狼が顔をだした。
「あ、あ、あ」
サイズはバイコーンよりも大きいだろう。そんなフェンリルがギロリとアレクス君を睨んだ為、尻餅をついてしまった。
「ちょっと、グランザ。うちの子達を脅さないでちょうだい。って言うかあなた何で龍峰にいるの?」
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