最弱勇者のギリギリライフ

奇妙な海老

文字の大きさ
1 / 15

最弱勇者のプロローグ

しおりを挟む
「自由な世界…サービス再開だと…」

長い髪に目の下の隈が特徴的な、親からも言われてしまった最悪のクズニート野郎こと神樂忠弘は一人パソコンの前で目を見開いた。

「あの神ゲーが復活するのか…?」

日本で一時期大人気となったMMOゲーム《自由な世界》
キャッチコピーは「現実の世界よりも広大な世界でもう一つの自分の人生を体験しよう!」と言う物だ。

このゲームの本質は題名にもあるとおり、自由性を追求し尽くしたと言う物であり、何百とある大陸の旅をするのもよし、ゲーム内のSNSで友達を作るのもよし、現実世界に関係してくるカジノなどで一攫千金を狙うもよし、と、まさにもう一つの世界なのである。

また、バトルシステムにも目を見張る物があり、基本RPGなのだが、グラフィックは繊細でとても綺麗。
しかもどんなに低いスペックのパソコンでもぬるぬる動く。いままでは容量が大きすぎてまともに詰め込むことができなかったことがどうゆうわけか、魔法からスキル、装備品から、アイテムまで『それぞれ』約一万通りの種類のデータがなんと1GB。ダウンロードにも不可がないと言う手軽さ。
そしてストーリークエストと言う物が存在し、これもまた確認されているだけでも千通り以上の数があり、何千何万というプレイヤーが同時に挑戦したりと、もはや人生を全て費やしてでも全容を明らかにできないという怪物ゲームなのである。

しかし、さすがに処理しきれなかったのかとうとうゲームにバグが出てしまい、それを火種にどんどんバグが見つかっていってしまったため、運営はこれを修正する為にゲームのサービスを中断。
実質《自由な世界》は終わってしまったかに思われた。が、

「なになに……専用ソフトとゲームのセーブデータをつなげば良いんだな?……さすがに出たばかりの物はネット通販じゃ買えないよな……しょうがない」

ガタッと、神樂は危なっかしく立ち決意する。

「3年ぶりに外に出るか!」

これぞ、彼の運命の分かれ道__







「おぉぉぉぉ……寒いぃぃぃ」

何も考えず外へ飛び出してしまったが、今日は12月3日。もう真冬なのだ。

勢いで外に出てきてしまった神樂は服を重ねて着てこなかったのを少し後悔し、街中で一人、身体をこすった。

巨大なビル群がそびえ立つ神樂の住む街。

今は夜だったので中々ロマンチックな風景だったが、周りのオタクが全てを台無しにしているような気がしないでもない。

神樂の住むこの街は、いわばオタクの聖地と呼ばれている場所である。
小太りのオタク、でかいリュックを担いだオタク、アホみたいに荷物を持ってるオタク、と、オタクにもいろいろある。

そんな神樂忠弘はかなり重度のゲームオタクであり、今までクリアしてきたゲームは数しれず。
そして今、ただ一つクリアすることのできなかったゲームを買いに行く!

神樂は意気揚々にして店に入っていく。
何処かで、騒ぎ声が聞こえてくる。

なんでも、飲酒運転らしい。







身体が痛い、ような気がする。
頭が痛い、ような気がする。

直感で分かる、今の自分の状態。
この異常な程の四肢への痛みが、でかかった走馬灯が、全てを物語っている。

神樂忠弘は、どうやら死んでしまったらしい。

まさか三年ぶりに部屋から出て外に行ったら速攻軽トラに跳ね飛ばされるとは思いもしなかった。
あの飲酒運転の騒ぎ、まさか俺が店から出て来るまで、警察とカーチェイスを繰り広げていたとでも言うのだろうか。

…しかし何度も言うが横からいきなりくるとは思いもしなかった。

当たる瞬間は何も痛みが感じなかった。が、今この全身に走る謎の激痛…


……まぁ、そんなことは今更どうでもいい訳よ。


軽トラに跳ね飛ばされた瞬間、目の前に眩しい光が広がり、体を謎の浮遊感が襲った。

はぁ、ここは、ここは何処だろうか。
俺がいた都市とは違う世界。
森林が何処までもひろがっている。

……心なしか、あのゲームの冒頭に似ていたような…似てないような…

まさかな。

「……メニュー」

ブォン

嫌だな、やめてくれ。

謎の音と共に光のスクリーンが現れる。
なになに?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《カグラ・タダヒロ》
Level《283》
職業:なし
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…ふぅっ……よぉしっ!」

強くてニューゲーム…あざーした!

ここ絶対異世界じゃん!《自由な世界》じゃん!
このレベルなら現実世界より順風満帆な生活ができる!
俺最強じゃんか!
俺TUEEEEEE!!!!!

「ス、ステータスどんな風になってたっけ……」

期待しながらメニューを開く。
そこには

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

HP:50
MP:50

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ちょっと待て、大丈夫。違うから。違うから」

そのあとも俺は他のステータスを見て行く。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


攻撃力:5
防御力:5
魔力:5
魔防:5
素早さ:5

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「う、うおおおおおお……!!」

な、な、何の間違いだ…?
これは、おかしい…おかしいぞ……
異世界に来たのにこの戦闘力!
酷すぎる………

「はっ!?ぶ、武器は?防具は?レアアイテムは?メニュー!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アイテム3000/3000

装備

武器:なし
防具:気だるそうなジャージ
アクセサリー:なし

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「よ、よしっ!凄いアイテムを持ってる系の勇者に転生したんだ俺は!きっと!きっと!そうに違いない!」

装備を何も装備してないところが嫌な空気を漂わせるが、きっと何も無いに違いない。
きっと気だるそうなジャージのせいだ。

「アイテムはっと…よし、ちゃんとある。エクスカリバーを装備!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エクスカリバー:装備できません。筋力値があと300必要です。

筋力:5

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ノオオオオッ!?しまった!!迂闊だった!筋力値が、5!!」

もう……もう駄目だ……これで魔王を軽々倒したり、奴隷の女の子でハーレムを作る夢もなくなった……。
俺の持ってる超レアアイテムも使えないんじゃ意味がない…もう、こうなったら持ち物全部売って大富豪になるしか………

はっ!?

「まだ…まだっ!可能性はある!メニュー!取得スキル一覧!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スキル

最弱の勇者スキル

他力本願

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なかなか長きに渡ってお世話になる、俺の相棒との最初の対面だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

処理中です...