恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

文字の大きさ
44 / 81
第2章 光と陰

第41話 茜ママの秘密

しおりを挟む
 スナック茜は柏琳台駅前にある、名物スナックである。
 2次会参加メンバーの怜奈、里緒奈、瑞希、祐希、未来の5人が店のドアをくぐった。

「茜ママ~、お客さん連れてきたよ~」
 瑞希と里緒奈が声を揃えて言った。

 すると店の奥にいた茜ママが、こちらへやってきた。

「いらっしゃ~い。
 あら~、祐希くんじゃない。
 来てくれて、ありがとね~」
 茜ママが祐希にハグして、頬に髭面(ひげづら)を押し付けた。

「ちょっ、ちょっとママ、勘弁してくださいよぉ」

 茜ママは隣にいた未来みくを見て目を見開いた。
「あらまぁ、すっごい美少女じゃない。
 祐希くんの彼女?」
 未来みくは、彼女と言われて嬉しかった。

「ち、違いますよ、同じシェアハウスの同居人です」
 祐希が手を振って否定した。

「ゆ、祐希さん、そんなに全力で否定しなくてもいいじゃないですか……」
 未来みくが唇を尖らせた。

「あら、唇尖らせちゃって、可愛い。
 私、茜よ、よろしくね、ツインテールのお嬢さん。
 お名前聞いてもいいかしら……」

「はい、私、同じシェアハウスの未来みくと言います。
 よろしくお願いします」

「あらぁ、礼儀正しいいい子ねぇ。
 私の好感度メーター振り切ったわよ」

 茜ママと話しているうちに、バイトの里緒奈と瑞希は着替えに行った。
 怜奈、祐希、未来の3人は、カウンターの端に座った。
 茜ママに注文したドリンクが出てくる頃、里緒奈と瑞希が店の制服に着替えて戻ってきた。
 それは胸元が大きく開いたワインレッドのショートドレスだった。

 祐希が奥のカウンター席を見ると、一人の男がクールにグラスを傾けていた。
 その横顔には見覚えがあった。
「あの人、どこかで見たことあるような……誰だっけ?」

 その言葉を聞いたママが言った。
「あら、祐希くん、倉橋のこと知ってるの?」

「え、あの人、倉橋っていう名前なんですか?」
 その時、祐希のシナプスが繋がり、彼の正体を思い出した。

「あっ、駅前交番のお巡りさんだ!」
 その言葉を聞いた倉橋がこちらを向いた。

「あれ、あなたは確か……ストーカー被害者の彼氏さんでしたね」

「あ、いえ、彼氏じゃなくて、ボディガードです」

「おお、そうでした、こんなところで会うなんて奇遇ですね」
 非番の倉橋巡査はおしゃれで、なかなかのイケメンだった。

「祐希くん、倉橋と知り合いなの?」
 茜ママが聞いた。

「はい、シェアハウスの同居人がストーカー被害に遭って……
 一緒に駅前交番に被害届を出しに行ったんです。
 その時に受付してくれたのが倉橋さんだったんです」

「へ~、そうなんだ」

「でも、私服だと分からないものですね」

「そうですか……ボクもこの辺で出歩くのは先輩の店くらいで、普段は来ないんですよ」

「えっ、先輩の店?」

「あ、そうか、知らないよね。
 茜ママが元刑事だったっていう話……」

「え?」
 祐希と未来みくは、驚いて茜ママの顔を見た。

「ちょっと、倉橋ぃ。
 その話はここでするなって、言ってるでしょ。
 あんた、出禁にするよ」

「す、すみません、班長はんちょう

 後で聞いた話だが、茜ママの本名は、権堂京太郎ごんどうきょうたろうといって、ニューハーフになる前は、警視庁暴力団対策課の刑事だったそうだ。
 柔道5段の猛者で、現役時代は「丸防の鬼」と呼ばれ、その筋から恐れられていた。
 倉橋は彼の部下として配属され、刑事の基礎をみっちり叩き込まれたそうだ。

「その後、ストーカーの方はどうですか?」
 倉橋巡査が祐希に聞いた。

「最近は、ボクが送り迎えしてるせいか、全く見かけないですね」

「そうですか……、でも気を付けてくださいね。
 守秘義務があるので、詳しいことは言えませんが、彼女のストーカーは1人だけじゃないようですから……」

「え!そうなんですか?」

「はい、コンビニに設置されている防犯カメラを解析した結果、少なくとも2人はいるみたいです」

「え、それってヤバいんじゃないの、倉橋」
 茜ママはいつもとは違う厳しい顔つきで言った。

「はい、ストーカーは彼女にかなり執着しているようなので、気を抜かないでくださいね」

「はい、十分気をつけます」

「それでは、ボクはそろそろ失礼します」
 倉橋巡査は、茜ママに挨拶すると「じゃあまた」と言って帰って行った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 店内には他に3組ほどの客がいて、茜ママと瑞希、里緒奈が、それぞれ接客していた。
 瑞希は客から頼まれた焼き鳥を買いに行った。
 隣は、茜ママの父親が経営している焼き鳥屋だ。

 祐希は怜奈の仕事について聞いていた。
「怜奈さん、お天気お姉さんの仕事ってどんなことするんですか?」

「そうね~、何から話したらいいかしら……私、気象予報士の資格を持ってるのね。
 だから、天気予報は全部自分で立てるのよ」

「えっ、そうなんですか?」

 怜奈の話では、気象庁から送られて来る情報や天気図、衛星画像などを解析して、独自の予報を作成するそうだ。
 あとは、それを視聴者にどう伝えるか、原稿を書いて、番組で使うCGをスタッフに発注したり、とても忙しいそうだ。
「ネット番組も生配信だと、本番前はすごく慌ただしいのよ」

「へ~、たいへんなんですね」

 未来は、怜奈の話をぼんやり聞いていたが、頭の中では祐希とどうすれば付き合えるかで一杯だった。
 祐希には、もう小手先の手段は通用しないと未来は思っていた。
 こうなれば直接的な手段に出るしかない。
 未来は頭の中で考えていたあるプランを実行することにした。

「あの、私、体調悪いので、そろそろ帰ります。
 祐希さん、送ってくれますか?」
 未来が祐希に聞いた。
 時計を見ると既に午前0時を過ぎていた。

「未来ちゃん、大丈夫?
 祐希くん、未来ちゃん、送ってあげてね」
 怜奈が祐希に言った。

「はい、じゃあ未来、一緒に帰ろうか」

「お願いします」

「怜奈さん、ごちそう様でした、お休みなさ~い」
 祐希と未来はカウンター奥の茜ママ達に挨拶して店を出た。
 今日の飲み代は、怜奈のおごりだった。

 2人は50mほど歩くと未来が立ち止まった。
「祐希さん、私、気分が悪い」
 未来は苦しそうに道端にしゃがみ込んだ。

「未来、大丈夫か?」

「ううん、大丈夫じゃないかも…
 どこかで、休みたい…」
 祐希には未来が本当に苦しそうに見えた。

「そう言われても……この辺には飲み屋しかないしなぁ」

「祐希さん、あそこで少し休んでいこ」
 未来が指さしたのは、ヤケにキラキラした電飾がまぶしいラブホテルだった。

「え、未来、あそこはラブホテルだぞ」

「もう、どこでもいいから横になりたい」
 未来は具合が悪そうにグッタリしていた。

「う~ん、しょうがないなぁ。
 未来あそこまで歩けるか?」
 祐希は、ラブホテルで未来を休ませることにした。

「もう、歩けない、祐希さん、おんぶして」

「マジか、じゃあ、未来、僕の肩に捕まって」
 祐希は未来の前でしゃがみ、彼女を背負うと思ったよりも軽かった。
 未来の胸の膨らみが背中に当たり、その柔らかな感触に祐希の鼓動は早くなった。
 
 祐希さんの背中って、こんなに広くて温かかったんだ。
 未来は祐希の背中の広さに驚きながら、両手を首筋に回し、ぎゅっと抱きついた。

 2人はラブホテル「アバンチュール」の門をくぐった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 その頃、瑞希が焼き鳥屋から戻ってきた。
「怜奈さん、祐希と未来ちゃん、帰ったんでしょ」

「うん、未来ちゃんが体調悪いからって、ちょっと前に帰ったよ」
 怜奈が言った。

「あの2人、そこのラブホに入ったんだけど、そういう関係だったの?」

「え、マジで?」
 祐希と未来がラブホテルに入るのを、瑞希が目撃していたことを2人は知るはずもなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。

水鳥川倫理
青春
主人公、目黒碧(めぐろあお)は、学校では始業時間になっても現れない遅刻常習犯でありながら、テストでは常に学年トップの高得点を叩き出す「何とも言えないクズ」として教師たちから扱いにくい存在とされている。しかし、彼には誰にも明かせない二つの大きな秘密があった。 一つ目の秘密は、碧が顔を隠し、声を変えて活動する登録者数158万人を誇るカリスマゲーム実況者「椎崎(しいざき)」であること。配信中の彼は、圧倒的なゲームスキルと軽妙なトークでファンを熱狂させ、学校での「クズ」な自分とは真逆の「カリスマ」として存在していた。 二つ目の秘密は、彼が三人の超絶可愛い幼馴染に囲まれて育ったこと。彼らは全員が同じ誕生日で、血の繋がりにも似た特別な絆で結ばれている。 習志野七瀬(ならしのななせ): 陽光のような明るい笑顔が魅力のツンデレ少女。碧には強い独占欲を見せる。 幕張椎名(まくはりしいな): 誰もが息をのむ美貌を持つ生徒会副会長で、完璧な優等生。碧への愛情は深く、重いメンヘラ気質を秘めている。 検見川浜美波(けみがわはまみなみ): クールな外見ながら、碧の前では甘えん坊になるヤンデレ気質の少女。 だが、碧が知らない三重目の秘密として、この三人の幼馴染たちもまた、それぞれが人気VTuberとして活動していたのだ。 七瀬は元気いっぱいのVTuber「神志名鈴香」。 椎名は知的な毒舌VTuber「神楽坂遥」。 美波はクールで真摯なVTuber「雲雀川美桜」。 学校では周囲の視線を気にしながらも、家では遠慮なく甘え、碧の作った料理を囲む四人。彼らは、互いがカリスマ実況者、あるいは人気VTuberという四重の秘密を知らないまま、最も親密で甘い日常を謳歌している。 幼馴染たちは碧の「椎崎」としての姿を尊敬し、美波に至っては碧の声が「椎崎」の声に似ていると感づき始める。この甘くも危険な関係は、一つの些細なきっかけで秘密が交錯した時、一体どのような結末を迎えるのだろうか。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

処理中です...