恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

文字の大きさ
69 / 81
第3章 揺れる想い

第66話 いつもの帰り道

しおりを挟む
 カフェ・バレンシアからの帰り道
 祐希とさくらと沙織の3人は、星ヶ丘駅前から同じ電車に乗り、柏琳台駅で降りた。
 そこからシェアハウスまでは、徒歩8分ほどの距離だ。

 美里ママが持たせてくれた3人分の賄いが入った紙袋を祐希が持ち、3人は並んで歩いた。
 さくらにとって、祐希と2人で歩く帰り道は、いつもなら甘い雰囲気になるドキドキタイムなのだが、今日は全く違った。

「ねえねえ、先輩、今日の吉永教授の『RAGラグ』の講義、分かりました?
 あのベクトル化の処理が、私、いまいち理解できなくて、あれってどういうことですか?」
 沙織は、さくらが理解できない話を祐希に振って、彼を独占しようとしていた。

「あぁ、その話か……
 僕は分かったよ、何なら後で、まとめノート見せようか?」

「わぁ~、嬉しい。お願いしま~す。
 やっぱり先輩って、頭いいんですね」

 さくらは、その会話に全く入っていけず、無言で歩みを進めた。
 それに祐希が沙織のことを、呼び捨てにしていることも気になっていた。

 (なんで沙織さんは呼び捨てなんだろう……
 いくら大学の後輩だからって、普通呼び捨てにするかな?
 未来さんも『未来』って呼び捨てにしてるのに、私だけ『さくらさん』だし……
 なんか、距離感じちゃうな……)
 さくらは、ため息をついた。

 その様子に気づいた祐希はコンビニを過ぎた辺りで、そっとさくらの手を握った。

「あ~、手ぇ繋いでる~。
 え、もしかして、2人は付き合ってるんですか?」
 沙織が祐希に聞いた。

「いや、そうじゃなくて……
 さくらさんはストーカーに狙われてるし、この辺りから暗くなるから……
 いつもここからシェアハウスまで、手を繋ぐことにしてるんだ」

「あ~、そういうことですか……
 じゃあ、私も手繋ごうっと」

 沙織は、祐希が左手に持っていた紙袋を奪い取ると自分の左手に持ち、右手で祐希の空いた左手を握った。

「あ、ホントだぁ~。
 手を繋いだら、なんか安心感ありますね。
 私も大学入学したばかりの頃は、変な男に後をつけられたんです。
 でもメイク変えて、三つ編みにしてメガネかけたら追いかけられなくなりましたよ」

「え、沙織の大学の姿って変装だったのか?」

「まぁ、変装まではいかないですけど、ダサコーデにして頭ボサボサにして眼鏡かければ、大抵の男は寄ってこないですよ」

「なるほど、その手があったか。
 さくらさんも真似してみたらどう?」

「えっ、私がですか?」

「うん、今のさくらさんの容姿って、完璧すぎるくらいだから、沙織のマネして崩してみるといいよ」

「……そんなこと、思いつきもしませんでした。
 沙織さん、どうすればいいか教えて下さい」

「いいよ、それくらい……
 でも、さくらさん、可愛いから隠しきれるかなぁ……」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 3人は、シェアハウスに戻り、それぞれの部屋で部屋着に着替えて、ラウンジに集まった。
 さくらは、3人分の賄いをレンジで温めた。

「さて、今日の賄いは、何かな?」
 祐希が蓋を開けると、メインディッシュはチーズハンバーグだった。
 それに付け合わせの人参のグラッセ、ブロッコリーのソテー、皮付きフライドポテトにターメリックライスといった内容だ。

「わぁ~、美味しそ~!
 さすがは一流シェフの作る賄いですね」
 沙織はマスターの腕前を知っているらしい。

「あらぁ、美味しそうねぇ」
 明日奈が、沙織の賄いを覗き込んだ。

「明日奈さんも味見してみます?」

「ありがとう、でも沙織ちゃんの晩ごはんだから、遠慮しておくわ」

「お~、ホントに美味しそうね。
 ねえ祐希、今度私にも賄い作ってってマスターにお願いしてくれない……」
 里緒奈が祐希に言った。

「ダメです!
 この賄いは、従業員限定なんですから!」

「祐希のイジワル~」

 3人で、遅い夕食を取った後、話題は『沙織のダサメイク・ダサコーデ』の話となった。

「なるほどね~、沙織ちゃん、可愛いのに頭ボサボサにして眼鏡掛けて大学行くの謎だったけど、そういうことだったのね」

「そうなんです。
 入学当初はバッチリメイク決めて、おしゃれファッションで大学通ってたんですけど。
 星城大学って共学じゃないですか……
 講義受けてても、私をジロジロ見る男の人の目が不快で、別にオシャレする必要ないなって思って、今のスタイルに変えたんです。
 そしたら、ジロジロ見られなくなって、とても楽なんですよ」

「確かにそれ、一利あるかもね。
 さくらちゃんも真似してみたらどう?
 それでストーカーも寄ってこなくなるかもよ」
 明日奈がさくらに勧めた。

「分かりました。
 私、やってみます」

 明日奈の勧めで、さくらの『即席ダサメイク・ダサコーデ計画』が始まった。

「眼鏡、これ使ってみて」
 明日奈がさくらに眼鏡を渡した。

「明日奈さん、眼鏡持ってたんですね」

「それ、伊達眼鏡なの。
 レンズはただのガラスだから……
 さくらちゃんにあげるわ」
 それは安っぽい、赤いプラスチックフレームの眼鏡だった。

「ありがとうございます」

「それじゃ、早速やってみましょ。
 まずは今のメイクを落とさないとね」

「は、はい」

 さくらは、洗面所でメイクを落とした。
 しばらくして戻ってきたさくらを見て、ラウンジにいた全員が息を呑んだ。
 さくらの肌は、化粧していた時と変わらないくらい白く、キメ細かかった。

「うわっ、すっぴんでも全然変わらない!
 肌、きれいすぎ……」
 怜奈がさくらの顔を見て驚いた。

「本当にきれい……さすがは秋田美人ね」
 明日奈も感心しきりだった。

「ホントに綺麗……
 でも、このメイクを施せば大丈夫!」
 沙織はさくらの顔にメイクを始めた。

 マットなファンデーションで艶を消し、頬には濃いめのチークを入れる。
 仕上げにアイブロウペンシルで、鼻の周りに『偽そばかす』を描き足した。

「はい、これで完成です」

「ど、どうですか?」
 さくらがメイクした顔をみんなに見せた。

「ん~、確かに変わったけど、前とは別の可愛さになったわねぇ」
 明日奈が素直な感想を言った。

「そうね、なんか欧米の人形っぽくなったかも……
 祐希、なんで赤くなってるのよ」
 怜奈に突っ込まれ、祐希が慌てて顔を背けた。
「いや、別に……」

「でも、三つ編みにして服装もダサくしてみたら、また変わるかもしれませんよ。
 さくらさん、着替えに行きましょ」
 沙織はさくらを連れて、部屋に着替えに行った。

 しばらくして、さくらと沙織が戻ってきた。
 さくらは、白いポロシャツにデニムスカートを着て、きっちりとした三つ編み姿だった。

「こんな感じですが、どうですか?」
 さくらがみんなに聞いた。

 全員がさくらの姿を見て溜息をついた。
「なにこれ、ダサくなるはずが、むしろレトロ可愛いんですけど……」
 里緒奈が呆れながら言った。

「すっぴんが最強すぎて、何をやっても『あえて外したオシャレ』になっちゃうんです……」
 沙織が本音を漏らした。

「うわ、ここまでして、まだ可愛いの……
 素材がいいと何をしても無駄なのね。
 私……なんか悔しい……」
 怜奈が頭を抱えた。

「でも、変装にはなってるから……
 しばらくこれで通学すれば……さくらちゃん」
 明日奈は半分呆れながら言った。

「はい、そうしてみます」

 さくらのダサメイク・ダサコーデ計画は、こうして『半分失敗・半分成功』という、微妙な結果に終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。

水鳥川倫理
青春
主人公、目黒碧(めぐろあお)は、学校では始業時間になっても現れない遅刻常習犯でありながら、テストでは常に学年トップの高得点を叩き出す「何とも言えないクズ」として教師たちから扱いにくい存在とされている。しかし、彼には誰にも明かせない二つの大きな秘密があった。 一つ目の秘密は、碧が顔を隠し、声を変えて活動する登録者数158万人を誇るカリスマゲーム実況者「椎崎(しいざき)」であること。配信中の彼は、圧倒的なゲームスキルと軽妙なトークでファンを熱狂させ、学校での「クズ」な自分とは真逆の「カリスマ」として存在していた。 二つ目の秘密は、彼が三人の超絶可愛い幼馴染に囲まれて育ったこと。彼らは全員が同じ誕生日で、血の繋がりにも似た特別な絆で結ばれている。 習志野七瀬(ならしのななせ): 陽光のような明るい笑顔が魅力のツンデレ少女。碧には強い独占欲を見せる。 幕張椎名(まくはりしいな): 誰もが息をのむ美貌を持つ生徒会副会長で、完璧な優等生。碧への愛情は深く、重いメンヘラ気質を秘めている。 検見川浜美波(けみがわはまみなみ): クールな外見ながら、碧の前では甘えん坊になるヤンデレ気質の少女。 だが、碧が知らない三重目の秘密として、この三人の幼馴染たちもまた、それぞれが人気VTuberとして活動していたのだ。 七瀬は元気いっぱいのVTuber「神志名鈴香」。 椎名は知的な毒舌VTuber「神楽坂遥」。 美波はクールで真摯なVTuber「雲雀川美桜」。 学校では周囲の視線を気にしながらも、家では遠慮なく甘え、碧の作った料理を囲む四人。彼らは、互いがカリスマ実況者、あるいは人気VTuberという四重の秘密を知らないまま、最も親密で甘い日常を謳歌している。 幼馴染たちは碧の「椎崎」としての姿を尊敬し、美波に至っては碧の声が「椎崎」の声に似ていると感づき始める。この甘くも危険な関係は、一つの些細なきっかけで秘密が交錯した時、一体どのような結末を迎えるのだろうか。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

処理中です...