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第3章 揺れる想い
第66話 いつもの帰り道
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カフェ・バレンシアからの帰り道
祐希とさくらと沙織の3人は、星ヶ丘駅前から同じ電車に乗り、柏琳台駅で降りた。
そこからシェアハウスまでは、徒歩8分ほどの距離だ。
美里ママが持たせてくれた3人分の賄いが入った紙袋を祐希が持ち、3人は並んで歩いた。
さくらにとって、祐希と2人で歩く帰り道は、いつもなら甘い雰囲気になるドキドキタイムなのだが、今日は全く違った。
「ねえねえ、先輩、今日の吉永教授の『RAG』の講義、分かりました?
あのベクトル化の処理が、私、いまいち理解できなくて、あれってどういうことですか?」
沙織は、さくらが理解できない話を祐希に振って、彼を独占しようとしていた。
「あぁ、その話か……
僕は分かったよ、何なら後で、まとめノート見せようか?」
「わぁ~、嬉しい。お願いしま~す。
やっぱり先輩って、頭いいんですね」
さくらは、その会話に全く入っていけず、無言で歩みを進めた。
それに祐希が沙織のことを、呼び捨てにしていることも気になっていた。
(なんで沙織さんは呼び捨てなんだろう……
いくら大学の後輩だからって、普通呼び捨てにするかな?
未来さんも『未来』って呼び捨てにしてるのに、私だけ『さくらさん』だし……
なんか、距離感じちゃうな……)
さくらは、ため息をついた。
その様子に気づいた祐希はコンビニを過ぎた辺りで、そっとさくらの手を握った。
「あ~、手ぇ繋いでる~。
え、もしかして、2人は付き合ってるんですか?」
沙織が祐希に聞いた。
「いや、そうじゃなくて……
さくらさんはストーカーに狙われてるし、この辺りから暗くなるから……
いつもここからシェアハウスまで、手を繋ぐことにしてるんだ」
「あ~、そういうことですか……
じゃあ、私も手繋ごうっと」
沙織は、祐希が左手に持っていた紙袋を奪い取ると自分の左手に持ち、右手で祐希の空いた左手を握った。
「あ、ホントだぁ~。
手を繋いだら、なんか安心感ありますね。
私も大学入学したばかりの頃は、変な男に後をつけられたんです。
でもメイク変えて、三つ編みにしてメガネかけたら追いかけられなくなりましたよ」
「え、沙織の大学の姿って変装だったのか?」
「まぁ、変装まではいかないですけど、ダサコーデにして頭ボサボサにして眼鏡かければ、大抵の男は寄ってこないですよ」
「なるほど、その手があったか。
さくらさんも真似してみたらどう?」
「えっ、私がですか?」
「うん、今のさくらさんの容姿って、完璧すぎるくらいだから、沙織のマネして崩してみるといいよ」
「……そんなこと、思いつきもしませんでした。
沙織さん、どうすればいいか教えて下さい」
「いいよ、それくらい……
でも、さくらさん、可愛いから隠しきれるかなぁ……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
3人は、シェアハウスに戻り、それぞれの部屋で部屋着に着替えて、ラウンジに集まった。
さくらは、3人分の賄いをレンジで温めた。
「さて、今日の賄いは、何かな?」
祐希が蓋を開けると、メインディッシュはチーズハンバーグだった。
それに付け合わせの人参のグラッセ、ブロッコリーのソテー、皮付きフライドポテトにターメリックライスといった内容だ。
「わぁ~、美味しそ~!
さすがは一流シェフの作る賄いですね」
沙織はマスターの腕前を知っているらしい。
「あらぁ、美味しそうねぇ」
明日奈が、沙織の賄いを覗き込んだ。
「明日奈さんも味見してみます?」
「ありがとう、でも沙織ちゃんの晩ごはんだから、遠慮しておくわ」
「お~、ホントに美味しそうね。
ねえ祐希、今度私にも賄い作ってってマスターにお願いしてくれない……」
里緒奈が祐希に言った。
「ダメです!
この賄いは、従業員限定なんですから!」
「祐希のイジワル~」
3人で、遅い夕食を取った後、話題は『沙織のダサメイク・ダサコーデ』の話となった。
「なるほどね~、沙織ちゃん、可愛いのに頭ボサボサにして眼鏡掛けて大学行くの謎だったけど、そういうことだったのね」
「そうなんです。
入学当初はバッチリメイク決めて、おしゃれファッションで大学通ってたんですけど。
星城大学って共学じゃないですか……
講義受けてても、私をジロジロ見る男の人の目が不快で、別にオシャレする必要ないなって思って、今のスタイルに変えたんです。
そしたら、ジロジロ見られなくなって、とても楽なんですよ」
「確かにそれ、一利あるかもね。
さくらちゃんも真似してみたらどう?
それでストーカーも寄ってこなくなるかもよ」
明日奈がさくらに勧めた。
「分かりました。
私、やってみます」
明日奈の勧めで、さくらの『即席ダサメイク・ダサコーデ計画』が始まった。
「眼鏡、これ使ってみて」
明日奈がさくらに眼鏡を渡した。
「明日奈さん、眼鏡持ってたんですね」
「それ、伊達眼鏡なの。
レンズはただのガラスだから……
さくらちゃんにあげるわ」
それは安っぽい、赤いプラスチックフレームの眼鏡だった。
「ありがとうございます」
「それじゃ、早速やってみましょ。
まずは今のメイクを落とさないとね」
「は、はい」
さくらは、洗面所でメイクを落とした。
しばらくして戻ってきたさくらを見て、ラウンジにいた全員が息を呑んだ。
さくらの肌は、化粧していた時と変わらないくらい白く、キメ細かかった。
「うわっ、すっぴんでも全然変わらない!
肌、きれいすぎ……」
怜奈がさくらの顔を見て驚いた。
「本当にきれい……さすがは秋田美人ね」
明日奈も感心しきりだった。
「ホントに綺麗……
でも、このメイクを施せば大丈夫!」
沙織はさくらの顔にメイクを始めた。
マットなファンデーションで艶を消し、頬には濃いめのチークを入れる。
仕上げにアイブロウペンシルで、鼻の周りに『偽そばかす』を描き足した。
「はい、これで完成です」
「ど、どうですか?」
さくらがメイクした顔をみんなに見せた。
「ん~、確かに変わったけど、前とは別の可愛さになったわねぇ」
明日奈が素直な感想を言った。
「そうね、なんか欧米の人形っぽくなったかも……
祐希、なんで赤くなってるのよ」
怜奈に突っ込まれ、祐希が慌てて顔を背けた。
「いや、別に……」
「でも、三つ編みにして服装もダサくしてみたら、また変わるかもしれませんよ。
さくらさん、着替えに行きましょ」
沙織はさくらを連れて、部屋に着替えに行った。
しばらくして、さくらと沙織が戻ってきた。
さくらは、白いポロシャツにデニムスカートを着て、きっちりとした三つ編み姿だった。
「こんな感じですが、どうですか?」
さくらがみんなに聞いた。
全員がさくらの姿を見て溜息をついた。
「なにこれ、ダサくなるはずが、むしろレトロ可愛いんですけど……」
里緒奈が呆れながら言った。
「すっぴんが最強すぎて、何をやっても『あえて外したオシャレ』になっちゃうんです……」
沙織が本音を漏らした。
「うわ、ここまでして、まだ可愛いの……
素材がいいと何をしても無駄なのね。
私……なんか悔しい……」
怜奈が頭を抱えた。
「でも、変装にはなってるから……
しばらくこれで通学すれば……さくらちゃん」
明日奈は半分呆れながら言った。
「はい、そうしてみます」
さくらのダサメイク・ダサコーデ計画は、こうして『半分失敗・半分成功』という、微妙な結果に終わった。
祐希とさくらと沙織の3人は、星ヶ丘駅前から同じ電車に乗り、柏琳台駅で降りた。
そこからシェアハウスまでは、徒歩8分ほどの距離だ。
美里ママが持たせてくれた3人分の賄いが入った紙袋を祐希が持ち、3人は並んで歩いた。
さくらにとって、祐希と2人で歩く帰り道は、いつもなら甘い雰囲気になるドキドキタイムなのだが、今日は全く違った。
「ねえねえ、先輩、今日の吉永教授の『RAG』の講義、分かりました?
あのベクトル化の処理が、私、いまいち理解できなくて、あれってどういうことですか?」
沙織は、さくらが理解できない話を祐希に振って、彼を独占しようとしていた。
「あぁ、その話か……
僕は分かったよ、何なら後で、まとめノート見せようか?」
「わぁ~、嬉しい。お願いしま~す。
やっぱり先輩って、頭いいんですね」
さくらは、その会話に全く入っていけず、無言で歩みを進めた。
それに祐希が沙織のことを、呼び捨てにしていることも気になっていた。
(なんで沙織さんは呼び捨てなんだろう……
いくら大学の後輩だからって、普通呼び捨てにするかな?
未来さんも『未来』って呼び捨てにしてるのに、私だけ『さくらさん』だし……
なんか、距離感じちゃうな……)
さくらは、ため息をついた。
その様子に気づいた祐希はコンビニを過ぎた辺りで、そっとさくらの手を握った。
「あ~、手ぇ繋いでる~。
え、もしかして、2人は付き合ってるんですか?」
沙織が祐希に聞いた。
「いや、そうじゃなくて……
さくらさんはストーカーに狙われてるし、この辺りから暗くなるから……
いつもここからシェアハウスまで、手を繋ぐことにしてるんだ」
「あ~、そういうことですか……
じゃあ、私も手繋ごうっと」
沙織は、祐希が左手に持っていた紙袋を奪い取ると自分の左手に持ち、右手で祐希の空いた左手を握った。
「あ、ホントだぁ~。
手を繋いだら、なんか安心感ありますね。
私も大学入学したばかりの頃は、変な男に後をつけられたんです。
でもメイク変えて、三つ編みにしてメガネかけたら追いかけられなくなりましたよ」
「え、沙織の大学の姿って変装だったのか?」
「まぁ、変装まではいかないですけど、ダサコーデにして頭ボサボサにして眼鏡かければ、大抵の男は寄ってこないですよ」
「なるほど、その手があったか。
さくらさんも真似してみたらどう?」
「えっ、私がですか?」
「うん、今のさくらさんの容姿って、完璧すぎるくらいだから、沙織のマネして崩してみるといいよ」
「……そんなこと、思いつきもしませんでした。
沙織さん、どうすればいいか教えて下さい」
「いいよ、それくらい……
でも、さくらさん、可愛いから隠しきれるかなぁ……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
3人は、シェアハウスに戻り、それぞれの部屋で部屋着に着替えて、ラウンジに集まった。
さくらは、3人分の賄いをレンジで温めた。
「さて、今日の賄いは、何かな?」
祐希が蓋を開けると、メインディッシュはチーズハンバーグだった。
それに付け合わせの人参のグラッセ、ブロッコリーのソテー、皮付きフライドポテトにターメリックライスといった内容だ。
「わぁ~、美味しそ~!
さすがは一流シェフの作る賄いですね」
沙織はマスターの腕前を知っているらしい。
「あらぁ、美味しそうねぇ」
明日奈が、沙織の賄いを覗き込んだ。
「明日奈さんも味見してみます?」
「ありがとう、でも沙織ちゃんの晩ごはんだから、遠慮しておくわ」
「お~、ホントに美味しそうね。
ねえ祐希、今度私にも賄い作ってってマスターにお願いしてくれない……」
里緒奈が祐希に言った。
「ダメです!
この賄いは、従業員限定なんですから!」
「祐希のイジワル~」
3人で、遅い夕食を取った後、話題は『沙織のダサメイク・ダサコーデ』の話となった。
「なるほどね~、沙織ちゃん、可愛いのに頭ボサボサにして眼鏡掛けて大学行くの謎だったけど、そういうことだったのね」
「そうなんです。
入学当初はバッチリメイク決めて、おしゃれファッションで大学通ってたんですけど。
星城大学って共学じゃないですか……
講義受けてても、私をジロジロ見る男の人の目が不快で、別にオシャレする必要ないなって思って、今のスタイルに変えたんです。
そしたら、ジロジロ見られなくなって、とても楽なんですよ」
「確かにそれ、一利あるかもね。
さくらちゃんも真似してみたらどう?
それでストーカーも寄ってこなくなるかもよ」
明日奈がさくらに勧めた。
「分かりました。
私、やってみます」
明日奈の勧めで、さくらの『即席ダサメイク・ダサコーデ計画』が始まった。
「眼鏡、これ使ってみて」
明日奈がさくらに眼鏡を渡した。
「明日奈さん、眼鏡持ってたんですね」
「それ、伊達眼鏡なの。
レンズはただのガラスだから……
さくらちゃんにあげるわ」
それは安っぽい、赤いプラスチックフレームの眼鏡だった。
「ありがとうございます」
「それじゃ、早速やってみましょ。
まずは今のメイクを落とさないとね」
「は、はい」
さくらは、洗面所でメイクを落とした。
しばらくして戻ってきたさくらを見て、ラウンジにいた全員が息を呑んだ。
さくらの肌は、化粧していた時と変わらないくらい白く、キメ細かかった。
「うわっ、すっぴんでも全然変わらない!
肌、きれいすぎ……」
怜奈がさくらの顔を見て驚いた。
「本当にきれい……さすがは秋田美人ね」
明日奈も感心しきりだった。
「ホントに綺麗……
でも、このメイクを施せば大丈夫!」
沙織はさくらの顔にメイクを始めた。
マットなファンデーションで艶を消し、頬には濃いめのチークを入れる。
仕上げにアイブロウペンシルで、鼻の周りに『偽そばかす』を描き足した。
「はい、これで完成です」
「ど、どうですか?」
さくらがメイクした顔をみんなに見せた。
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明日奈が素直な感想を言った。
「そうね、なんか欧米の人形っぽくなったかも……
祐希、なんで赤くなってるのよ」
怜奈に突っ込まれ、祐希が慌てて顔を背けた。
「いや、別に……」
「でも、三つ編みにして服装もダサくしてみたら、また変わるかもしれませんよ。
さくらさん、着替えに行きましょ」
沙織はさくらを連れて、部屋に着替えに行った。
しばらくして、さくらと沙織が戻ってきた。
さくらは、白いポロシャツにデニムスカートを着て、きっちりとした三つ編み姿だった。
「こんな感じですが、どうですか?」
さくらがみんなに聞いた。
全員がさくらの姿を見て溜息をついた。
「なにこれ、ダサくなるはずが、むしろレトロ可愛いんですけど……」
里緒奈が呆れながら言った。
「すっぴんが最強すぎて、何をやっても『あえて外したオシャレ』になっちゃうんです……」
沙織が本音を漏らした。
「うわ、ここまでして、まだ可愛いの……
素材がいいと何をしても無駄なのね。
私……なんか悔しい……」
怜奈が頭を抱えた。
「でも、変装にはなってるから……
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