恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

文字の大きさ
73 / 81
第3章 揺れる想い

第70話 夜の砂浜で

しおりを挟む
 シェアハウスの住人たちは、午後6時になるとホテル1階のレストランへ集合した。
 広々としたフロアには、10人が一度に座れる大きなテーブル席が用意されていた。

「じゃあ始めましょうか……」
 全員が揃ったところで明日奈が立ち上がった。

「今回の『海水浴』は天気に恵まれ、みんな朝から夏の海を十分に満喫したことと思います。
 これも入念に準備してくれた幹事のお陰かな……
 祐希くん、ありがとね……」

 思いがけないいたわりの言葉に、祐希は軽く頭を下げた。

「それじゃあ、乾杯しましょ。
 素敵な夜の始まりに、かんぱ~い!」

 明日奈の音頭で、20歳以上のメンバーはスパークリングワイン、未成年はソフトドリンクで乾杯した。

 この日は本格的なイタリアンのコース料理だった。
 サーモンのカルパッチョとカプレーゼから始まった。
 ピッツァ・マルゲリータに続き、ウニのクリームパスタ、ゴルゴンゾーラのニョッキがテーブルに並んだ。
 メインは鯛のアクアパッツァと国産牛のタリアータ。
 デザートのマンゴー・タルトと苺のジェラートがコースの最後を華やかに飾った。

 美味しい料理に会話も弾み、和やかな時間が流れていると、窓の外が朱色に染まり始めた。
 レストランの大きな窓からは、水平線に沈む夕陽が見える。
 逆光でシルエットになった富士山と江の島が、オレンジ色の夕陽を背景に浮かび上がり、息を飲むような美しさだった。

「うわぁ……! 見て、空が燃えてるみたい……」

「嘘……! 富士山と江の島が並んで見えるなんて……綺麗すぎ……」

「ヤバい! この夕陽、綺麗すぎでしょ! 写真撮らなきゃ!」

「ため息が出ちゃう……。こんな素敵な景色、生まれて初めて見たわ」

「……なんか、泣きそうになっちゃうね」

「私、この景色……一生忘れないと思う」

「なにこのマジックアワー! 最高にエモい……」

 全員が食事の手を止め、窓際に駆け寄り、その荘厳な夕陽に感動していた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 夕食後、住人たちは夜の海岸へ出た。
 日中の暑さがまだ残る中、時おり涼しい風が吹き、穏やかな波の音が心地よかった。

 午後7時30分になると、森尾海岸で年に一度開催される、お待ちかねの花火大会が始まった。
 海岸の端にある突堤から約2千発の花火が夜空に打ち上げられた。
 間近で打ち上げられる大迫力の花火に、シェアハウスのメンバーたちは圧倒されていた。

 祐希の左隣にはさくらが、右隣には沙織が、沙織の隣には未来と琴葉が立って花火を見ていた。
 花火が打ち上げられる度に、さくらの横顔が光に照らされ、神々しい程に美しかった。

「せんぱ~い、凄い迫力ですね!
 私、こんなに近くで花火見たの初めて~」
 沙織は、祐希の右腕に自分の腕を絡ませ、豊かな胸の膨らみを押し付けていた。
 おそらく、それは彼女の計算された行動であろうと祐希は思った。

「ホントだね……
 僕もこんなに近くで見たの初めてかも知れない」
 祐希は右腕に沙織の柔らかな胸の感触を感じつつも、平静を装った。

「わぁ~、私もこんなに近くで花火見たの初めて……」
 さくらは、花火を見上げながらも沙織の大胆な振る舞いを見逃さなかった。
 沙織さんって、随分と過激なことするのね……
 私には真似できないわ……
 さくらは心の中でそう呟き、小さく溜息をついた。

 未来も沙織の過剰なスキンシップに眉をひそめた。
 沙織ちゃんの行動、あざとすぎるわ。
 私も負けてはいられない……
 けど、どうしたらいいの……
 未来は言いようのない焦りを感じ、唇を噛んだ。

 真夏の夜空を彩った華麗な光のショーもあっという間に終わり、フィナーレを飾る大輪の花火が打ち上げられた。
 終了のアナウンスが流れると観客から拍手が送られた。

「綺麗だったけど、なんかちょっと物足りないね」
 里緒奈が不満を口にした。

「ふふ、そう言うと思ったわ……
 祐希くん、あれお願いね」
 明日奈が祐希に合図した。

「はい、了解です。あれですね!」
 祐希は、近くに置いてあった段ボール箱から、数種類の花火セットを取り出した。
 着火用のグラス・キャンドルと消火用の水が入ったバケツも用意して準備は万全だ。

「みんな~、手持ち花火あるよ~。
 やりたい人、取りに来て~」

「えっ、花火買ってきてたんだ!
 さすがは幹事、気が利くじゃん……」
 里緒奈が珍しく祐希を褒めた。

「里緒奈さん、幹事の大変さ……分かってくれました?」

「うんうん、よくやった。褒めてつかわす」
 里緒奈が偉そうに言った。

「も~、里緒奈さんはいつも上から目線なんだから……」

「ふふ、じゃあ惚れ直したって言えばいいのかな?」
 里緒奈は冗談ぽく、笑いながら言った。

「はいはい、どうせ口先だけでしょ。
 お世辞はいいですから、ほら、花火持っていってください」
 祐希は予期せぬ言葉に動揺しながら、段ボール箱の花火を里緒奈へ渡した。

 祐希が買い込んだ大量の花火セットをメンバーに配り、花火大会第2部が始まった。
 火花で文字を描いてはしゃぐ未来や琴葉、それを笑いながら動画に撮る朱音たち。

 少し離れた所で、さくらがしゃがみ込んで静かに線香花火を見つめていた。
 パチパチと弾けるはかない光が、長い睫毛まつげに陰影を落とし、彼女の白磁のような肌を橙色に染め上げている。
 周囲の音が遠のくほどの美しさに、祐希はつい見惚れてしまった。
 祐希が隣に並ぶと、さくらは顔を上げて微笑んだ。

「線香花火って、なんだかドキドキしますね」

「……そうだね。落ちないように、つい息を止めちゃうよね」

「ふふ、私もです……」

 絡み合う視線と甘く痺れるような緊張感が、2人の鼓動を速めた。
 夏の長い夜は、まだ始まったばかりだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 花火大会が終了すると、住人たちは一度それぞれの部屋へと引き上げた。
 そして午後8時半、全員が再び祐希の部屋へと集まった。
 これから2次会が始まるのだ。

 リビングのテーブルには、好みのドリンクとおつまみが並び、雑談に花が咲いていた。
 場が盛り上がってきたところで、里緒奈がパンパンと手を叩き、声を上げた。

「みんな~、ゲームやるよ~」
 その顔はほんのり赤く、久しぶりのアルコールに上機嫌の様子だ。

「せっかくの夜だし、ただ飲んでるだけじゃつまんないでしょ?
 だから……みんなで王様ゲームやろ~!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。

水鳥川倫理
青春
主人公、目黒碧(めぐろあお)は、学校では始業時間になっても現れない遅刻常習犯でありながら、テストでは常に学年トップの高得点を叩き出す「何とも言えないクズ」として教師たちから扱いにくい存在とされている。しかし、彼には誰にも明かせない二つの大きな秘密があった。 一つ目の秘密は、碧が顔を隠し、声を変えて活動する登録者数158万人を誇るカリスマゲーム実況者「椎崎(しいざき)」であること。配信中の彼は、圧倒的なゲームスキルと軽妙なトークでファンを熱狂させ、学校での「クズ」な自分とは真逆の「カリスマ」として存在していた。 二つ目の秘密は、彼が三人の超絶可愛い幼馴染に囲まれて育ったこと。彼らは全員が同じ誕生日で、血の繋がりにも似た特別な絆で結ばれている。 習志野七瀬(ならしのななせ): 陽光のような明るい笑顔が魅力のツンデレ少女。碧には強い独占欲を見せる。 幕張椎名(まくはりしいな): 誰もが息をのむ美貌を持つ生徒会副会長で、完璧な優等生。碧への愛情は深く、重いメンヘラ気質を秘めている。 検見川浜美波(けみがわはまみなみ): クールな外見ながら、碧の前では甘えん坊になるヤンデレ気質の少女。 だが、碧が知らない三重目の秘密として、この三人の幼馴染たちもまた、それぞれが人気VTuberとして活動していたのだ。 七瀬は元気いっぱいのVTuber「神志名鈴香」。 椎名は知的な毒舌VTuber「神楽坂遥」。 美波はクールで真摯なVTuber「雲雀川美桜」。 学校では周囲の視線を気にしながらも、家では遠慮なく甘え、碧の作った料理を囲む四人。彼らは、互いがカリスマ実況者、あるいは人気VTuberという四重の秘密を知らないまま、最も親密で甘い日常を謳歌している。 幼馴染たちは碧の「椎崎」としての姿を尊敬し、美波に至っては碧の声が「椎崎」の声に似ていると感づき始める。この甘くも危険な関係は、一つの些細なきっかけで秘密が交錯した時、一体どのような結末を迎えるのだろうか。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

処理中です...