雅美という人妻 - 夫のせいじゃない -

じろう

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第八章

第八章(最終章))

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薬が効いていたのかはわからないが、雅美は熟睡していた。
木下は機材運びで汗ばんだTシャツを脱ぎ、彼女が包まっている布団を一気に捲った。
バスローブの乱れもなく、綺麗な寝姿。左横を向き、両脚は揃えてくの字に折り、両腕は胸元で交差していた。
エアコンの冷気に触れた彼女は無意識に布団を手探りした。

「奥さん…起きませんか?…お昼になりますよ…」
反応はなかったが、閉じた口元が微笑んだようにも見えた。
木下はサイドテーブルの彼女のスマホを見た。
『安心したよ…ほんとありがとうな…お疲れさま…』
恭史のメッセージに彼は鼻で笑い、正午にセットされたアラームを寸前で解除した。
「ふふ…良く眠ってる…まだ…起きないでいいから…」
小型三脚に小さなカメラ。録画を始めた彼はサイドテーブルの上にそれを置いた。
「さてと…奥さん…、ヌードモデルはいつも裸でなきゃだめだよ…」
バスローブは開けられ、うつ伏せ加減に傾けた身体から斜め下に剥ぎ取られた。
仰向けにされた雅美。
彼はゆっくりとその肢体を眺め、股間に当てた手を小握りした。
「もう五十になるような女の身体じゃねぇな…」
彼女の脚を曲げ、股を広げて立てた。
陰唇は肉薄で目立たなく、色も薄い。包皮に隠れるクリも小さいと彼には見えた。
「マンコ使ってんのかよ…その辺の若い女よりも綺麗かもな…旦那はインポかよ…お宝発見…」
彼は後ろ手にした彼女の親指に指錠を嵌め、身体を被せ、舐め上げるように彼女の唇を奪った、
異変は当然のように、彼女の目を覚ました。
「うううううぅ…うわぁぁぁん…い…ぃやっぁぁぁ…」
「ふふっ…起こしてあげようと思ったから…目覚めのエッチは好きかぁ?…」
「もぉ…なんで…こんなことばかりするの…指…何…痛いなぁ…」
「縄よりはましさ…じっとしててよ…」
「もぉ~…そういうのは困るのぉ~…やだぁ~…離してぇ~…手、痛いんだって~…もぉ…こんなことするためにここに来たんじゃないんだから~…」
「そんなことないだろぉ?…旦那はそのつもりで奥さんを一人残したんだし…」
「なんでよぉ…そんな訳ないじゃない…」
「じゃあ…聞いてみな…俺がそう言ってるけど、本当か?ってさ…」
「聞けるわけないから…もぉお…やめてよぉ~…」

彼女は録画された。真剣に怒り、凌辱され、悔しさに震える、その顛末を。
見るに堪えない光景。彼の非情の理由が雅美にあるはずもなかった。
主張も意思もすべて無視された彼女。抵抗も彼には無意味だった。
なし崩しで逆らい慣れた彼の巧みな動き。苦悩の彼女は無力を痛感させられた。
征服感に満ちた彼は、味わい、甚振り、弄んだ。敗北感に苛まれる彼女。
そして、何も覆わない彼の自己満足の象徴は、彼女の中に二度とも強く放たれた。
その時の彼の奇声は雅美の耳に響いた。指錠は最後の最後まで外されることはなく、彼女はただ彼が萎えるのを待っているしかなかった。

木下雅樹という人物。
彼のことを雅美も恭史も知らなさ過ぎた。
里見の友人。そして撮影場の持ち主。ただそれだけだった。
実は、彼もまた、以前は里見同様にあのサイトにカメラマンとして登録し、モデルを募集していたのだ。
それが、ある時から、彼の名前がなくなった。
その理由は会員登録の強制解除。不良会員としての処置を受けたのだった。
モデルの強姦容疑。結局は示談。廻りに変化は起こらなかった。
しかし、サイトへの彼の苦情は続き、処分は下された。
常習者。そんな噂もあったらしい。時期を合わせるように彼は離婚した。
雅美が何人目なのか、彼にとってはどうでも良かったに違いない。

里見もそんな木下の悪い噂は知っていたが、趣味仲間としては気が合い、付き合いは続けていた。
恭史の依頼を受けて撮影場所を考えてた彼は、木下に聞いていた空き民家を思い出し、連絡を取って事情を説明した。
雅美の存在を知った木下は、里見の話に乗り気になった。
二人の交換条件はすぐに成立した。
そして木下は、家主、撮影助手として雅美に接することになったのだ。

雅美も恭史もこの真実は知らない。

『遅くなったけど…今から送ってもらいます…』
それは、彼女がやっとの思いで恭史に送ったメッセージ。疼く親指は使えなかった。
ずたずたになった心、そして、虚しさに満ちた脱力感。
それは、彼女が車に乗ること、家に帰ることを拒ませた。
日が暮れ始め。意を決した彼女。帰るまで、恭史に会うまでに心の修復を自分に誓い、帰り支度を始めた。

木下も恭史にメールを送っていた。
『野暮用で出発遅くなり申し訳ありません…奥様、責任を持ってお送りします…ご安心ください…』
「野暮用…か、俺もよく言うよな…」
無言の車内。彼女は一旦は拒んだ助手席に座っていた。
高速に上がる前に外は暗くなり、雨が降り始めた。
木下は運転しながら、雅美とのことを考えていた。
雅美は彼の想像とは違っていた。裏の顔などひとつもない、絵に描いたような貞淑な人妻だった。
彼は彼女を凌辱したことでそれを知り、それまでとは異なる感情を抱くようになった。
それは強欲の後悔、そして略奪欲。彼女への未練を募らせていった。

恭史は雅美にメッセージを返してきた。
『木下君も疲れてるだろうに…急がなくていいからと伝えてくれ…良かったら、一晩、家に止まって貰ってもいいね…どう思う?…』
雅美は返事に迷った。
『そうね…』
いつもの返事を思い浮かべ、彼女は返し。直後に憂いだ。
明日の朝、恭史が仕事に出た後のことを。
彼女は願うように続けた。
『明日休めない?…一緒にいたいの…恭くんもそう言ってたでしょ?…』
彼女はじっと画面を見て待った。
『俺も一緒にいたいよ…心底そう思ってる…けど…無理…』
彼女は目を潤ませた。
『うん…わかった…ごめんね…恭くんのせいじゃないから…』
一旦打ち込んだメッセージ。送る直前、彼女は最後の十二文字を消していた。
雅美はその時、木下が言った言葉を思い出した。
『旦那はそのつもりで奥さんを一人残したんだ…』
潤んだ目には涙が溢れ、今にも零れそうになった。
彼女は指先でそれを拭い、無言で首を振って否定した。
木下が急に話しかけた。彼は彼女のことを敢えて名前で呼んだ。
「ところでさ…雅美…昔、勤めてた頃にさ…会社の若い同僚といい関係だったんだってな…」
「え?…(なんでこの人がそれを知ってるの…)」
彼女は木下が何故それを知っているのか、全く理由が分からなかった。
「あ…、(恭くん…でも…恭くんが知ってるはずない…え?…(もしかしたら…)」
降り出した雨は強くなり、木下はワイパーの動きを速めた。
雅美はぎらつくフロントに目まいを感じた。


私が誰なのか…、そんなことは気にしないで頂きたい。
なんの役にも立たない、誰のためにもならない話を、ただ、書き残しただけだから…。
そして…、書き尽くせてはいないと思ったら、ただ、書き続けるだけだから…。


雅美という人妻 - 夫のせいじゃない - (おわり)

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感想 2

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みんなの感想(2件)

戸影絵麻
2017.05.02 戸影絵麻

あの、すみません。
第6章と第7章の中身はどこへいったのでしょうか…?

2017.05.10 じろう

返信遅くなりました。
中途放置失礼しました。
8章まで書き終え、締めましたので…。

解除
佳洸
2017.05.02 佳洸

やっぱり只の寝取られ小説だった…。

2017.05.10 じろう

寝取られ要素だけでは物足りないと自分も感じていましたので、
少し、他のエッセンスも加えた結末にしてみました

解除

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