黒柴犬召喚

長田弐円

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第二章 セカンドシーズン

46話 セカンドシーズン

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 まあ、起きてしまったものは仕方ない。
 切り替えていこう。

 現在黒柴犬が請けている仕事は、封印ダンジョンの監視と安全確認。
 そして業界人の護衛依頼だ。

 封印ダンジョン周辺で戦える存在は黒柴犬くらいだし、責任持って全力で人命救助とゴブリン駆除を行う。
 ゴブリンの出現は、少し勢いが落ちたが、まだ続いている。すぐ止まるかもしれないが、ずっと続くかもしれない。止まった後に、再開されるかもしれない。
 不明である以上、ゴブリンの出現範囲に人を保護するのはリスクがある。避難所作ってその中に出現したら大惨事だ。となると外に逃がすしか無い。
 効率を考えて、バスや乗用車、トラックを拝借しよう。
 子供やお年寄りを優先でいっちょ頼む。
 黒柴犬から了承の以心伝心。

 あと、人命救助全般では、【闇の衣】は使用しないでね。堂々と黒柴犬お前たちの姿を見せつけよう。MPも節約したいし。
 こうなった・・・・・以上、人助けの善行は誇示した方がいい。
 この騒動が落ち着いた後、誰が悪かったかの擦り付けあいが絶対に始まる。

 ぶっちゃけダンジョン隠蔽していてバレちゃった俺も、悪者ランキング上位に名を連ねかねない状況だ。
 封印ダンジョンの専有もアウトに限りなく近いグレーだし。
 誰からも責められないのは不可能だが、しかしシンプルに人死を減らすことで、ヘイトの軽減は出来る。

 クリスマスの今現在、大規模利用ダンジョンは8箇所。
 政府の小中規模利用は、3箇所増えて139箇所。
 俺の専有の封印ダンジョンは、3箇所減って128箇所。

 他と比較して、平均より死者が少なければ、ヘイトは高まらない。
 平均より大幅に死者が少なければ、感謝も増える。
 平均より死者が派手に多ければ、袋叩きになる。

 これは災害や事故時のお約束だ。
 国内だけでなく、世界で比較されるだろう。

 だから1人でも多くを救う。
 政府管理の139箇所と比べて、大幅に死者を減らしたい。
 今の黒柴犬ならそれが可能だ。
 ポーションも黒柴犬が持っている分は使っちまってOK。
 勿体ないけど何処の病院もパンクするだろうしなぁ。

 まあ、封印ダンジョンの対応はこんな感じで良いか。

 で、業界人の護衛だが、これはかなり困った状況にある。
 護衛対象が大勢いる東京は、ダンジョンが一番密集してるんで、ガチの地獄になっとるんよな。
 10キロ園が重なってる範囲はゴブリン密度がエグいし、交通機関は完全に麻痺して正直どこに逃がしていいか分からん状態。

 それにこの災害で新しく祝福を授かる人が増えまくるはずだ。
 そいつらがどう動くか予想できないし、混乱時には不埒ものも現れる。

 とりあえず個々の状況に合わせて最善の安全を目指す。
 ってくらいの方針しか今は出せない。

 小町ちゃん桜子さん、いずなさん、弟子の人や爺、他にも黒柴犬と仲の良かった人には、【闇の衣】で姿を隠した黒柴犬を貼り付けて安全を守る。
 先行きが不透明だからこそ、仲間は大切に、だ。

 政府からは要人の警護や救出の依頼がすでに複数来ているが、これは断る。
 黒柴犬には「むり たりない むしろ へるぷみー」と返事させる。

 とりあえずは応急的な方針としてはこんな感じか。

 後はダンジョン内でゴブリンの発生数がどうなっているのか、ボスは居るのか。
 何より重用なのは女神像の間は、安全地帯のままなのか。
 多くは割けないが数匹の黒柴犬を調査に派遣する。

 …………1階層の構造も、出現するゴブリンも特に変化ない感じか?

 じゃあ女神像でアプデの詳細、確認しに行くか。

\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\

 女神像に祈ってみたら、めちゃくそ変更が多かった。

 悲報。
 予想通り大幅ナーフされた件について。

 覚悟はしていた。
 セカンドシーズンで調整があると知った時点で。
 バランスおかしかったからね。
 大幅なナーフだけど、許容できる範囲内で、正直胸をなでおろしている。

 俺を直撃した大きなナーフは2つ。
 1つ目は、オーブドロップが大幅に制限された。
 オーブを拾う毎に、その日のドロップ率が減少して行って、10個以降は落ちなくなる。

 俺のオーブ獲得数は、最大まで拾えても今までの50分の1以下になるわけだ。

 今日、召喚系の強みが1つ盛大に死にました。

 だけどすでに獲得したスキルの没収はなかった。
 今現在、遠征先で黒柴犬がアイテムボックスに所持したままのオーブが2741個あるが、これも没収されてない。
 ゲームで言えば増殖バグで荒稼ぎした後に対策取られて出来なくなったが、その資産は許されたような状況だ。
 俺は獲得したスキルにも調整が入る覚悟をしていた。
 でも許された。
 出る杭は叩かれなかった。
 だから全然余裕。
 リスク背負って封印ダンジョンに遠征させといて良かったわ。
 リスク嫌って引きこもり続けていたら、絶大な機会を逃すところだったよ。

 もう一つの大きなナーフは、召喚獣にオーブスキルを取得させる時のコストの方式変更。
 今まではオーブスキルを重ねると、取得させるコストも下がっていたんだが、それが無くなった。
 シンプルに覚えさせるスキルの総レベル数×0.5に変更された。
 つまり【体術100】【闇の衣100】【闇の刃100】【アイテムボックス20】【MP+30×200】だと、召喚コストが270になる。
 こっちもとんでもなく痛いナーフだ。
 召喚系能力者、殺しに来てね? と思うけれどオーブスキルを重ねてない人にはナーフじゃなくてアッパー調整なんだよなぁ。

 まあこの方向の修正も覚悟していた。
 圧倒的優位は削られたが今までが可笑しすぎただけ。

 いま召喚している黒柴犬は、そのまま残されてるわけで。
 コスト10のスキル盛り盛り黒芝犬を、そいつが死ぬまで継続運用できるわけで。
 色々と温情を感じるというか、むしろ甘い調整だなって思うくらいだ。

 ただ、召喚中の黒柴犬は結構スキル差があるんだよな。
 家に戻すのは身バレの危険につながると思って、控えめにしていた。
 過剰な強さはオーブ集めに不要だし。
 黒柴犬の数が増えて強くなるほど、拾えるオーブは増えるわけで。
 最近は安定して日に600個を拾ってたからな。

 一ヶ月前と昨日喚んだ黒柴犬では、総合力が倍以上に違っている。
 結果論で言えばこまめに喚び直してればってところだけど、まあたらればだ。
 昨日までは再召喚でこまめに強化するより、身バレを防ぐ方が重用だった。
 その配慮は地上にゴブリンばら撒かれたせいで完全に無意味になっちまったけど。
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