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ななわ

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「しっ失礼します!」

名前を聞いて、思わず逃げる。

ウソ、関わらないと決めたのになんで攻略対象者に会うの?それも、二人!

そう思いながら廊下を走っていると、曲がり角で誰かにぶつかりこける。

「すっすいません!」

ぶつかった本人を見る。

二度あるこは、三度あるって言葉を思い出した。
「大丈夫、怪我してない?」そう言いながら、手を伸ばしてくれるその人は、轟陸だった。

「だっ大丈夫です。ありがとうございます。」

そう言って自力で立ち上がる。
轟陸は、差し出した右手を見ながら困ったように笑う。

わぁー、そんな顔もかっこいいなんてイケメン恐るべし。
って、関わりたくないんだった。

ぺこりと頭を下げて、その場から立ち去る。


攻略対象者達三人に、会うなんてもう泣きそう。

てか、ゲームよりも現物の方がかっこいいな。
でも、イケメンとか無理。

前世でも、恋とか好きな人なんていなかった。幼い頃に両親を失ったこともあり、なにかと忙しくてそんな余裕なんてない。
ましてや、こんなイケメン達なんて周りにいなかった。

そんなこと思いながら、1年間お世話になる教室を見つけ、自分の席へとつく。

まだ、学校初日もあってかクラスは静かだった。

「伊月さん、だよね!1年間よろしくね!」

前の席の子が、話しかけてくる。
わっ、かわいい子。
ショートカットの髪に、小さい顔。茶色い大きな目に吸い込まれそうになる。
それに加え、人懐っこい笑顔に好印象を覚える。

「うん、よろしくね!」
「かっ、かわいい~!私、立花香織っていうの!友達になってくれない?」
「うん!よろしくね、香織ちゃん!」

そのまま、香織ちゃんと喋り続けていたら先生が教室に入って来る。

本当に、江口大輔が担任なんだ。

ガタッと音がした隣を見る。

うっ嘘だ。
隣の席は、宇佐波優だった。




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