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じゅうきゅうわ

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「じゃあ、ここに座って。」
「うん、ありがとう。」

轟くんは、保健室にある椅子に私を座らせ救急箱を持ってくる。

先生は、保健室におらず轟くんと二人っきりだ。


「足、見せて。」
「あっ、自分でするよ!」
「ううん、俺にさせて?」

そう言って私の足を轟くんの膝の上で支え、手当てをしてくれる。

足、臭くないかな…?
いや、臭いよね。汗かいたし。
てか、膝の上って。私の足重くないよね…?


「はい、治療完了。大丈夫?」
「うん、ありがとう。轟くん。」

ほんとごめん、私の臭くて重い足の手当て。


「伊月さん、俺、」

そう轟くんが話しかけて来たと同時に、轟くんのスマホが鳴る。

申し訳なさそうに、轟くんはスマホにでる。


「ごめん、伊月さん。呼び出されちゃった。伊月さんは、まだここで休んでてね?」

「うっうん。ほんとにありがとうね、轟くん。」

そう言うと、轟くんは微笑んでから保健室から出ていく。


いや、反則でしょ。その笑顔…。


1人っきりになり、急に静かになる保健室。
グランドの方からは、応援する声と体育祭でありがちの曲が聞こえてくる。

その音と、寝るにはちょうどいい疲れが私を眠りに誘う。

ダメだ、サボりになっちゃう。

なんて、思いつつもベットに横になる。

ちょっとだけ、ちょっとだけなら大丈夫だよね…。


そのまま意識が遠くなった…。


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