全て僕の勘違い

ピピ

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 ああ、、ずっと勘違いだったのか……


 ほんの数分前まで浮かれていた自分を呪いたくなってくる。


 周りに人がいて五月蝿いはずなのに、彼から貰った懐中時計の針の小刻みな音だけしか聞こえなかった。





 ◇◇◇◇


「おはようございます。アル!」

アルベルト・ギフォード。
凛々しい横顔の婚約者は今日もかっこいい。
世界一かっこいい。
その横の、アルより頭1個分小さめな僕は世界一可愛いんだ。何故かって?アルに見合うように毎日美容に気を使っているからね!!


「おはよう、ルーク。今日も元気そうだな。」


少し微笑みながら挨拶を返してくれた婚約者の漆黒の髪が風に揺れている。
あーかっこいい。もしかして神様はアルを作る時に魔法の粉でも入れちゃってた?!


僕はルーク・テイラー。
伯爵家の三男でアルの婚約者だ。
こんなかっこいい人と結婚できるなんて、僕は幸せ者だな!アルも僕と結婚出来るって喜んでくれてたら嬉しいな!!


「アル!今度、僕の誕生日あるでしょ?その日空けといてくれない?デートしたいなって!」


僕たちは誕生日が終わればすぐ結婚することになっている。だからその前に婚約者としての思い出を作っておきたいのだ。結婚しちゃったらなかなか外に出れなくなるだろうしね。
顔を赤くさせながらアルとの妄想が膨らむ。


「そうだな。行きたいところを考えといてくれ。その日は一緒に過ごそう。」


「どこにしよっかなー。アルと一緒ならどこでも楽しそうだけどね!」


なんだかんだと話をしながら歩いていると、僕たちの教室が見えてきた。僕とアルは同じクラスでAクラスだ。この学校では学業と魔法の両方の評価の合計が高いものから順にクラスが割り振られていく。
アルは学業、魔法共に優秀で入学式代表の挨拶も任されていた。反対に僕は魔法がダメダメだ。勉強を必死にやったおかげでなんとかAクラスに属することが出来た。


でもいいもんね!努力する子が1番美しいんだから!!アルも自分の今に満足せず毎日努力しているんだ!!だからアルはめっちゃめっちゃにかっこいいんだ!


教室に入るとまだ誰もいなかった。それもそのはず僕達は朝早く来て2人っきりで勉強しているんだ。アルが僕の苦手な魔法を主に教えてくれるからなんとか授業についていけている。


僕はこの2人っきりの時間が大好きだ。アルは1年の時から生徒会に所属していて放課後はいつも忙しい。僕とアルが2人っきりになれる時間はこの時間とたまに空いている週末ぐらいだ。だからこそ逃したくない大切な時間だ。


「アル。ここの魔法陣の意味がどうしてもわからなくて…」

「ああ、ここはこれがこうなっているから┈┈┈┈」




キンコンカンコンと終わりを知らせるチャイムの音がする。この楽しい時間をまだ終わりにしたくないなと思ってしまうが、切り替えて自分の席に着く。僕とアルはクラスこそ同じだが席は近くは無い。ちょうど対角線上になっていてクラスの中では1番遠い。


「おはよう、ルーク。なんか楽しそうだな。俺に会えてそんなに嬉しいか?」

「おはよう、ゼイン。違うよ!アルとの勉強が楽しかったんだよ!あー、今日のアルもかっこよかった。」

「ははっ、ルークの婚約者愛はものすごいな。羨ましいくらいだ。」


ゼイン・マーティー
入学式の時から僕に絡んでくるやつだ。僕は1年でクラスが代わりお別れだと思っていたがなんと3年になる今日まで僕にちょっかいを出してくる。悪くない顔をしているが僕は好みじゃない。なんだって僕はアルの婚約者だからな!アル以外を好きになるはずがない!


ゼインとなんでもないようなことを話していると、教室が妙に騒がしくなっていた。いつもならこんなことあるはずないのにどうしたんだろうと視線を前に向けると、先生の隣にスラッとした男の子がいた。
転校生が来るなんて昨日一言も言っていなかった先生に苦笑する。


どうやらバタバタしていて伝え忘れていたらしい。なんでも孤児だった子を伯爵家が迎え入れたため急な転校なんだそうだ。


「うっわ、めちゃくちゃ綺麗な子。これはすぐモテるな。」


ゼインが小さな声を漏らしたのがわかった。
ノア・エディ、確かに元が孤児だったと考えられないくらい綺麗な子だ。銀色の髪は陽の光でキラキラしていて、伏し目がちの目は他のどれよりも美しい。


ま!僕の方が可愛いからいいもんね!!男の人は守ってあげたくなるような可愛い子が好きだっていうのは知ってるからね!!


そんなことを考えているうちにノアの席が決まった。な、な、な、なんとアルの隣になってしまった……!!
僕だって今まで隣の席になった事ないのに!羨ましいな……!


「あらー、愛しの婚約者くんの隣盗られちゃったね。」

「うるさい!僕とアルとの絆はこれでも切れないからいいもんね!」


あー、ゼインがうるさい。
まぁ、アルは僕のことが好きだからノアになびくようなことはないだろうから心配はしてないけどね!!





――――――




授業が終わり昼休憩が始まる。いつもはそのまま食堂で食べるんだけど、今日は先生に、ノアを学園案内させてやってくれって頼まれている。


「ノアくん、僕はルーク・テイラー。ノアくんと同じ伯爵家だよ。先生に頼まれてるからこれから学園案内するよ!」

「ありがとう。まだわからない事ばっかだけど仲良くしてくれると嬉しいな。」

ノアがフッと微笑みながら返事をする。気を抜くとノアの世界に呑み込まれそうになりそうなくらい美しかった。でも!僕の方が可愛い!!だからなんの問題もないのだ!


順調に案内は進んでいき、食堂へ辿り着いた。案内するうちに話すような仲にはなった僕たちは時間も時間だし、ノアと一緒に昼食を食べることになったのだ。


「今日はびっくりしたよ。転校生が来るなんて知らなかったからさ。でも、ノアってすごいんだね!転校早々Aクラスなんて!」

「急なことだったからね。僕は元々魔法が得意みたいなんだ。孤児だった頃から魔法は使えてたんだけど、どうにも僕の魔力量が人より何倍も多いらしくて、、だからAクラスなんだよね。」

「それでも凄いよ。僕なんか魔法はダメダメだから羨ましいなー。まだ初日だけど、学園生活はどう?楽しい?」

「うん。楽しいかな。孤児だった頃には体験出来ないようなことまで体験できるから。みんな僕が困ってたら教えてくれるし優しいしね。」

「でもいいなぁー、アルの隣になれて……!」
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