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時代
第一寄稿文:hajimari著
しおりを挟む2020年の文書を発掘してきたので、精神時代文書が紛失する前にここに記す
精神病院の病棟生活の一年を通して、彼に会えたのは、一つの緊張からの解放であった。
裏若き彼の話をするまで、病棟での1日の流れというものを書かなければならない。
そして、彼を起点として、記憶を頼りに過去に遡っていく試みをしたい。
私個人の発症した話をもすれば、もはやどこの病院の誰の話か分かるだろうから、それは避けたい。私も自分の落ち度でバカをやった身であるし、そんな統合失調症患者を受け入れてくれた病院に、変に勘違いした人の悪い噂で評判を落としたくはないからである。
ある程度は、事実として赤裸々に書くつもりではあるが、致し方ない不備については書かないつもりである。
私の記憶違いだと思われる点はそのように注意書きをするし、誇張した表現はできるだけ排除しようと思う。それに関しては、不安や偏見を助長してしまうだろうから最新の注意はするつもりである。
一年入院記。そのほぼ毎日をしめる1日について。
今日も、朝早くからナースの巡回の後に音楽が流れ始める。
ほぼ寝ている脳のまま眠い目をこすりつつ、突っ張ったアキレス腱をほぐし始めると、子気味の良い聞き飽きた音楽が流れ始める。
それは、憂鬱な一日の始まりを告げる。
看護室周り、防火扉のところにラジカセが置いてある。そこからカセットテープでラジオ体操のメロディが流れている。
私は、気分とアキレス腱と相談しては参加するか否かを決めていた。そして、ラジオ体操第二まで来ると、聴き慣れないと言って参加はしなかった。
その後に、水を入れたコップを持って、看護室への長蛇の列に並ぶのが日課である。私は性格上、通り道に所狭しと並ぶのは嫌うので、自室に帰りたい人の通せんぼになってやしないかと通路を横断する列順になった時は間を開けていたものだ。だが、私の努力は後列の者によって潰えていた。後続の人たちは、自室に帰りたい人のためを思って間を開けるよりも、横入りする輩の方が心配なのかとその度に辟易していたのをよく覚えている。
というのも、毎日病棟で毎日同じような顔ぶれを見ているのに、極たまに横入りする輩がいる。
いつからか、初めから長蛇の列に並ぶよりも、自室でのんべんだらりと頃合いを見計らって並んだ方が精神衛生上いいことにきづいてそうするようになった。
しかし、のんべんだらりとしていて、後からナースに「お薬忘れてませんか?」なんて言われることも、入院生活後半に行くにつれて度々起こるようになった。なんていうのも、その病棟にはゆうに三十人は入院しており、各々厳密に薬が割り振られており、それを確認して、飲んだことも確認して……のんべんだらりと寝てるか読書に夢中になっていたりしていると、忘れていますよと怒られたものだった。
さて、記憶が曖昧なもので、その後に朝ごはんか、朝ごはんの前に薬かは忘れてしまった。普通であれば、ご飯の後に薬だが、あんましそのような印象は持っていない。前後していたら、ご容赦いただきたい。
とりあえず、朝の体操から幾ばくかすると朝ごはんの時間になる。
テーブルに自分の名前が貼ってあるので、そこに座り、自分の名前が呼ばれれば、コロコロ付きのでかい配膳台のところへ行って、自分の決められた量のご飯を受け取る。そして、全員揃ったらいただきますの合図で食べ始めるのだが、私はすこぶる朝ごはんが嫌いだった。
もともと、朝ごはんを食べない習慣の持ち主だったが、なんというか、冷め切って箸も通せないお米に、冷め切って味が飛んでいる味噌汁をどうしても、完食する人のように食べれなかったのである。
お腹が空いていれば、行儀が悪いが、その冷め切った味噌汁をご飯の中に入れて、お米を柔らかくして食べていた。味のりがついている時は、味のりだけを食べるなんて事もしていた。何故なら、味のりでお米を包んで食べてね的なものなんだろうが、肝心のご飯が固くて巻けやしないのだ。
現代っ子とは言わないが、冷えて味がしけているお米にせっかくのしっかりとした「味のり」を食べる気がせず、味のりだけを食べて味わっていたのだ。ああ、これこそが味のりの味わい方だとさえ思った。
さて、私が密かに心の中で毎朝嘆いて名付けていた「残飯」だが、後からもしや?と思ったことがある。退院して、病院付属のデイケアにお世話になっていた頃、デイケアに持ち運ばれて来たご飯に驚いた。
なんと……温かいのだ。
持ち運ぶ人の手数として、多少配膳する時間帯がズレるにしても、おかしいくらいに病棟用のご飯は冷め切っていた。そう。そこでもしや……と思うのだが、粗探しはここらでやめておこうと思う。もしかしたら、今は改善されているかもしれないから。(しっかし、作り置きにしても、なんであんなに冷めたご飯なんだろ…w)
朝のラジオ体操、食事、薬。これらが済んだらとなると、お昼の時間まで軽作業が待っている。私は、大体は二度寝を決め込んでいた。詳しくは後述するが、20過ぎた若い男が持て余して夜寝れるわけがないのだ。
たまに軽作業に参加しては、今日はどれだけ紐を結べたか、お菓子を詰めたかで純粋に満足していた。月だったか半年だったかに、その駄賃が貰える仕組みになっていたが、私はそれを受け取ってからというものの加速度的に参加しなくなった。
後に作業所に行くことになるが、国の支援の有無でこんなにも違うのか、そして健常者は一体なんのために働いてそんなに稼ぎを得られるのか、ますますわからなくなった。
これは、入院の一年記であるので、国の支援金の話は別途誰かが書くだろうから、私は書かないでおく。しかし、いつ気が狂って、自分の中の鬼に狂って人様に迷惑をかけるかわからない。色々と文句は言いたいが、大の大人が国がだの制度だのと仕組みの全体を分かっていないで騒ぎ立てるのはよろしくないし、この心の中の葛藤だのズレは1番身近な家族に牙を向けると私自身わかっているので、鎮めておく。
さて、第一回の奇行文はこのへんで切り上げて、第二稿へ場を移そうと思う。
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