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5.
起きた時に最初に感じた感覚は、疲労が取れきってない身体の辛さと自分の汗の臭い、それと少しの孤独感だった。
臭いが気になったので、風呂場に向かう。そして、併設された壊れ欠けそうな風呂場の魔道具に魔力を込めた。なんだか、コロコロと変な音はするが、頭上からお湯は出てきた。かなりぬるいが。
髪の毛を洗うとなんだかキシキシするし、走り続けたせいで足は傷だらけ、何度か転んだせいで露出していた腕にも血が出て止まったような傷が付いている最悪の状態。
しかし、身体を清めたら身体も頭も、気分もスッキリしたような感じがする。
そうして私は、物心ついて初めての『予定のない一日』を迎えた。
宿を引き払って、一旦街の中を歩く。早朝に近い夜の段階ではどんな街なのか分からなかったが、朝になると賑やかで人が多い街だった事がわかる。
ちょうど目についた露店を見て回ると、色んなものが売られてた。生活用品、魔道具、見たことのない食べ物、宝飾品、そして地図――。
そういえば自分はどこまで移動したのだろうと地図を買って、そのまま露店の店主にこの街はどのあたりに位置しているのか聞いた。そのまま情報収集をしたかったからだ。
店主曰く、ここは王都から50キロほど離れた街らしい。まだまだフレストベルクの中というわけだ。フレストベルクは広大だ。最終的な目標はこの国から出ることだが、歩きでは到底不可能かもしれない。
「嬢ちゃん、観光客かい?」
「え、はい。色んな国を旅して回っています」
「そうかい。若い頃に旅はたくさんしておいたほうがいい。とは言っても、一人旅ではこのご時世、魔物だけじゃなくて人間も危ないのだがな。気をつけろよ」
「ここって治安が悪いのでしょうか。あまり知らずに旅をしているもので……」
立場故に、あまり外に出してもらえていなかったということもあり、国内の治安などについては明るくない。だからこそ、王都を出てからはずっと周囲を警戒していた。もう、私は守られる存在ではなくなってしまったから。
「いや、この街含めて、フレストブルクは安全さ。ここはまだ王都に近いしな。フレストブルクを出ると……って話さ。嬢ちゃんがどこから来たのかは知らないが、最近は全世界的に魔物が活発化しているらしい」
「そう、らしいですね」
国外から来たという設定で話しているので、知らなかった事実だが、同調しておく。どうやら、私が思っている以上に国外は危険な状態らしい。
この街はすぐにでも発つつもりだったが、出る前に武器を作るための道具を買っておいた方が良いかもしれない。店主に礼を言い、露店を離れた。
そして別の露店や店で、あまり質が良くはないが魔法石が埋め込まれている『剣』や『指輪』、『耳飾り』や『時計』など、使えそうなものを昼までに全て揃えた。
これでここをすぐにでも発つことができる。
きっと差し向けられるであろう追っ手を想定し、痕跡を残す前に、すぐにでもここを離れたかった。
流石、王都が近い街と言ったところか、私の願いを叶えるのに適した荷運び用の馬車に同乗させてもらえることになった。他の公共の乗り物と違って、身分証明を求められないことがポイントだ。
かつて、城を抜け出した時にカイデンに教えてもらった知識が役に立ったのは、皮肉と言えるだろう。
こうして私は、再度逃走の道に戻った――。
******
恋愛大賞にエントリーしています。応援いただけたら、嬉しいです。連載を続けるモチベにもつながります。
臭いが気になったので、風呂場に向かう。そして、併設された壊れ欠けそうな風呂場の魔道具に魔力を込めた。なんだか、コロコロと変な音はするが、頭上からお湯は出てきた。かなりぬるいが。
髪の毛を洗うとなんだかキシキシするし、走り続けたせいで足は傷だらけ、何度か転んだせいで露出していた腕にも血が出て止まったような傷が付いている最悪の状態。
しかし、身体を清めたら身体も頭も、気分もスッキリしたような感じがする。
そうして私は、物心ついて初めての『予定のない一日』を迎えた。
宿を引き払って、一旦街の中を歩く。早朝に近い夜の段階ではどんな街なのか分からなかったが、朝になると賑やかで人が多い街だった事がわかる。
ちょうど目についた露店を見て回ると、色んなものが売られてた。生活用品、魔道具、見たことのない食べ物、宝飾品、そして地図――。
そういえば自分はどこまで移動したのだろうと地図を買って、そのまま露店の店主にこの街はどのあたりに位置しているのか聞いた。そのまま情報収集をしたかったからだ。
店主曰く、ここは王都から50キロほど離れた街らしい。まだまだフレストベルクの中というわけだ。フレストベルクは広大だ。最終的な目標はこの国から出ることだが、歩きでは到底不可能かもしれない。
「嬢ちゃん、観光客かい?」
「え、はい。色んな国を旅して回っています」
「そうかい。若い頃に旅はたくさんしておいたほうがいい。とは言っても、一人旅ではこのご時世、魔物だけじゃなくて人間も危ないのだがな。気をつけろよ」
「ここって治安が悪いのでしょうか。あまり知らずに旅をしているもので……」
立場故に、あまり外に出してもらえていなかったということもあり、国内の治安などについては明るくない。だからこそ、王都を出てからはずっと周囲を警戒していた。もう、私は守られる存在ではなくなってしまったから。
「いや、この街含めて、フレストブルクは安全さ。ここはまだ王都に近いしな。フレストブルクを出ると……って話さ。嬢ちゃんがどこから来たのかは知らないが、最近は全世界的に魔物が活発化しているらしい」
「そう、らしいですね」
国外から来たという設定で話しているので、知らなかった事実だが、同調しておく。どうやら、私が思っている以上に国外は危険な状態らしい。
この街はすぐにでも発つつもりだったが、出る前に武器を作るための道具を買っておいた方が良いかもしれない。店主に礼を言い、露店を離れた。
そして別の露店や店で、あまり質が良くはないが魔法石が埋め込まれている『剣』や『指輪』、『耳飾り』や『時計』など、使えそうなものを昼までに全て揃えた。
これでここをすぐにでも発つことができる。
きっと差し向けられるであろう追っ手を想定し、痕跡を残す前に、すぐにでもここを離れたかった。
流石、王都が近い街と言ったところか、私の願いを叶えるのに適した荷運び用の馬車に同乗させてもらえることになった。他の公共の乗り物と違って、身分証明を求められないことがポイントだ。
かつて、城を抜け出した時にカイデンに教えてもらった知識が役に立ったのは、皮肉と言えるだろう。
こうして私は、再度逃走の道に戻った――。
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