7 / 26
6.
荷運び用の馬車は、ありえないくらいに臭くて、ありえないくらいにお尻が痛くなる場所だった。そのうえ、私の他に五人ほど乗客がいるので、座ったまま眠るしかない。女が一人、子供と男連れできっと家族なのだろう。そして残り二人はフードを深くかぶった男。人間的な警戒心は家族連れがいるので多少は和らぐが、気は抜けない。常に、いつでも戦えるように準備しておく。
このフレストブルグから出るまで三日程この旅は続く。そのくらいの間であれば、警戒する体力はなんとか持つだろう。
家族連れが騒がしいだけで、私も二人組の男たちも身動ぎすらしない。
ただ、国境を越えて、別の国――ジョルカ共和国に到着することを待っていた。
そんな時間が1日と少し経った頃だろうか。馬車が急停車する。
そしてそれと同時に馬車全体に衝撃が走った。完全なミスだ。馬車の中ばかりに警戒して、外への警戒を怠っていた。
「あぁ、あ゛あ、た、助けてくれ!!!」
御者がこちらの貨物が乗っている方向に逃げてくる。
彼の身体は右腕が吹き飛び、重症だった。外に、『何か』がいる。それが明確に分かるほどの傷。
私は、自分の身を守るために外に出た。
同時に、周囲全方向に防御結界の魔道具を発動させる。周囲の木ガ倒れ、砂煙が舞う中で敵の姿をとらえた。
ラミアーだ。下半身は蛇、上半身は人間の女のような姿の魔物。しかし上半身にも明確に人間の女と違うところがある。それは、三対の腕。合計六本のその腕が、異形さを引き立てていた。
危険度レベルC。熟練の冒険者が一人で狩るレベル。一般人からすると、手のうちようがないだろう。
しかもその手には剣が握られており、そのままこちらに突っ込んできた。一撃、二撃と防御結界で自動的に弾き返される。しかしながら、流石は魔物と言ったところか。馬車から数十メートル程奥に弾かれた。
危なかった。何の訓練も積んでいない、騎士見習いとどっこいくらいの戦闘慣れレベルの元貴族の女には、前準備なしには防げなかっただろう。
だが、剣戟が弾き返されたのがラミアーは気に食わなかったようで、蛇の威嚇のような音を出してこちらを睨みつけていた。
正直とてつもなく怖い。死ぬのではないかと心から思っているし、少しでもミスをしたら私はすぐにでも魔物にミンチにされるだろう。
でもーー。
「私は、こんなところで死ぬわけにはいかないの!!!」
心の底からの叫び声だった。
せっかくあの場所から抜け出してきたのに、こんなくだらないC級レベルの魔物にやられるわけにはいかない。
魔道具はそのままに、自身の周囲に炎の魔法陣を展開させる。自分ごと燃やし尽くすくらいに、この場所から何もかもを消してしまうくらいに。
「炎の禍嵐」
防御結界が壊れそうなくらいに激しく、強く、その炎は燃え上がった。今まで修練含めて出した中で一番強いものが出てきた。
1分ほど燃やしていただろうか。防御結界にもピシピシとヒビが入り、滝のような汗をかくくらいに周囲が熱い。この全てに於いて高い防御力を誇る結界の中にいる状態でも、だ。
流石に温度的にも限界を迎えたので、魔法を解いた。
「消し炭になってる……」
目の前には、中心まで炭になったラミアー。
こうして私は命を繋いだのだった。
このフレストブルグから出るまで三日程この旅は続く。そのくらいの間であれば、警戒する体力はなんとか持つだろう。
家族連れが騒がしいだけで、私も二人組の男たちも身動ぎすらしない。
ただ、国境を越えて、別の国――ジョルカ共和国に到着することを待っていた。
そんな時間が1日と少し経った頃だろうか。馬車が急停車する。
そしてそれと同時に馬車全体に衝撃が走った。完全なミスだ。馬車の中ばかりに警戒して、外への警戒を怠っていた。
「あぁ、あ゛あ、た、助けてくれ!!!」
御者がこちらの貨物が乗っている方向に逃げてくる。
彼の身体は右腕が吹き飛び、重症だった。外に、『何か』がいる。それが明確に分かるほどの傷。
私は、自分の身を守るために外に出た。
同時に、周囲全方向に防御結界の魔道具を発動させる。周囲の木ガ倒れ、砂煙が舞う中で敵の姿をとらえた。
ラミアーだ。下半身は蛇、上半身は人間の女のような姿の魔物。しかし上半身にも明確に人間の女と違うところがある。それは、三対の腕。合計六本のその腕が、異形さを引き立てていた。
危険度レベルC。熟練の冒険者が一人で狩るレベル。一般人からすると、手のうちようがないだろう。
しかもその手には剣が握られており、そのままこちらに突っ込んできた。一撃、二撃と防御結界で自動的に弾き返される。しかしながら、流石は魔物と言ったところか。馬車から数十メートル程奥に弾かれた。
危なかった。何の訓練も積んでいない、騎士見習いとどっこいくらいの戦闘慣れレベルの元貴族の女には、前準備なしには防げなかっただろう。
だが、剣戟が弾き返されたのがラミアーは気に食わなかったようで、蛇の威嚇のような音を出してこちらを睨みつけていた。
正直とてつもなく怖い。死ぬのではないかと心から思っているし、少しでもミスをしたら私はすぐにでも魔物にミンチにされるだろう。
でもーー。
「私は、こんなところで死ぬわけにはいかないの!!!」
心の底からの叫び声だった。
せっかくあの場所から抜け出してきたのに、こんなくだらないC級レベルの魔物にやられるわけにはいかない。
魔道具はそのままに、自身の周囲に炎の魔法陣を展開させる。自分ごと燃やし尽くすくらいに、この場所から何もかもを消してしまうくらいに。
「炎の禍嵐」
防御結界が壊れそうなくらいに激しく、強く、その炎は燃え上がった。今まで修練含めて出した中で一番強いものが出てきた。
1分ほど燃やしていただろうか。防御結界にもピシピシとヒビが入り、滝のような汗をかくくらいに周囲が熱い。この全てに於いて高い防御力を誇る結界の中にいる状態でも、だ。
流石に温度的にも限界を迎えたので、魔法を解いた。
「消し炭になってる……」
目の前には、中心まで炭になったラミアー。
こうして私は命を繋いだのだった。
あなたにおすすめの小説
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~
黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。
婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。
待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。
そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?
【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!? 今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!
黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。
そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢ミリーシャは、自身が誰からも必要とされていないことを悟った。
故に彼女は、家から出て行くことを決めた。新天地にて、ミリーシャは改めて人生をやり直そうと考えたのである。
しかし彼女の周囲の人々が、それを許さなかった。ミリーシャは気付いていなかったのだ。自身の存在の大きさを。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。