どうやら婚約者の隣は私のものではなくなってしまったようなので、その場所、全てお譲りします。

皇 翼

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12.

ジョルカ共和国横断の旅は、想像以上に金がかかった。

移動馬車の使用料。関所ごとの通行税。そして自国以外の人間に対しては異様に高くなる部屋代。
所作などから分かってはいたが、きっと元々それなりの身分であろう彼らはそれなりの蓄えを持っていたが、無尽蔵ではないようだった。

「このままでは国境に着く前に資金が全て尽きますね。思っていたよりも、ぼったくられています」

宿の一室で帳簿をつけていたセルジュが淡々と言った。

「仕方がない。依頼を受けるか。すまない、ミアータ。少し国境までの到着が遅れそうだ」
「私も今後のために資金を貯めておきたいので、問題ありません」

実はなのだが、レオンハルトと契約した後は、移動時など後退しながら周囲を警戒し、会敵したら各自で戦闘というように守り合っていたこともあり、レオンハルトたちから私に対して『報酬』と称して、金銭を渡されていた。きっと彼らの路銀が少なくなっているのはそのせいもあるだろうが、貰えるものは貰っておく主義だ。なにせ、ここに着くまでの魔物は、ラミアーと比べ物にならないくらいには強かった。
ぬくぬくと暮らせる立場を捨てた今、恥や弱みは切り捨てなければ生きていけない。
こうして、レオンハルトの一言で、方針は決まった。

共和国は身分証明に厳しいが、国外の人間でも傭兵登録をすれば、任務を受注して仕事はできる。むしろ、国内の人間よりも無駄に税金やら理不尽な水増し料金を払わされている旅行者の方が、危険な仕事を引き受ける人数は多いようで、その辺は上手く整備されていた。自国民には優しく、外国人には厳しく、搾取するようにというのを体現している国のようだ。ちなみに、この国の国籍を外国人が得ることはほぼほぼできないらしい。ここの国民に生まれた人間はQOLが高いかもしれない。
幸い、傭兵登録については代表者のうちの一人が身分証を提示すれば、他のメンバーは何も提示なしででも登録できるらしかった。

私はレオンハルトの部下として登録された。
最初の依頼は、街道沿いに出没する大型魔狼フェンリルの討伐だった。魔狼が街道の一部を塞いでいて、流通に大きな影響が出ているらしい。魔狼という危険度レベルBに属する魔物だ。並大抵の冒険者や傭兵では、討伐出来なかったのだろう。かなりの額の報奨金が掛けられていた。


今まで各自で行っていた戦闘は、3人で一緒に行うと、予想よりもうまく連携が取れていた。
私が地面に小型の魔道具を突き刺し、魔物の探知を最初に行う。
魔物を検知すると同時に、声に出して伝える。

「三時方向、二体!」

セルジュの拘束魔法が狼の足を止め、レオンハルトの大剣が迷いなく急所を断つ。
私は私で、別の方向から来ていた一体の魔狼を、広範囲の雷の魔法によって貫いていた。

戦闘時間は、約五分。
遠くから見ていた案内人兼以来見届け人は目を丸くしていた。フェンリルの魔力が特に強く籠っている部分――瞳や爪は魔道具に使えるので、討伐後に貰っておいた。
最近気付いたことだが、魔物の一部というのは、より強い魔道具を作り出すときに良い素材になる。やはり強靭で、高い魔力を元々兼ね備えた生き物だからだろうか。
強い魔物であれば、強い魔物であるほどに、より効力の高い強力な魔道具を作れる。
なんなら以前使用していた高い宝飾品や魔力のこもった魔法石なんかよりも強いものを作り出せることがあるのだ。こういうことも含めて、勉強になった。

「……それ、何に使うんだ?」
「えっと、コレクションです」

私は現状特に、彼に魔道具を自作していることは言っていない。
特に言うタイミングもなかったといのもあるが、あまり言いふらしたいことではなかったからだ。今回一緒に魔物を倒したのが初めてということもあり、いつもやっていた動作なのに、咄嗟ににコレクションだなんて変な言い訳が出てしまった。
魔物の一部をコレクションにしている変態趣味な女みたいになってしまったが、あまり気にしていない。
セルジュの方は、コレクションと聞いてドン引きしていたように見えたが、別にいいかと思う。魔道具作成については、私の生まれにも関わることなので、そこまで気楽に言えることではない。
こうして私は路銀を手に入れられるだけでなく、魔道具のための素材も一緒に手に入るというお得な環境で、着々と国境までの距離を縮めていった。

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