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3.
「はあ……厄介なゴミに絡まれて、すごく嫌な気分です。慰めてくれませんか? 僕のお嫁さん」
「ひっ……!」
まさか、こちらに戻ってくるなんて――
そのうえ、声をかけられ、まるで恋人を抱くような柔らかさで抱きしめられて、私は思わず情けない声をあげてしまった。
さっきまで、ひとりの人間を、まるで虫のように「処理」しておきながら……今は純粋無垢な笑顔を浮かべて、甘えるように「慰めて」と求めてくる。
なにこれ、どうすればいいの。拒否したら、私もブレラのように、容赦なく――?
惨状を目の当たりにしたせいだろう。誰も彼女には近づこうとしない。
王と王妃が壇上から騎士たちに助けに行けと叫んでいるが、誰一人として動かない。
いや、動けないのだ。誰だって分かっている。
この場で、魔法陣の中に足を踏み入れたら、次は自分が『潰される』のだと。
軍神がいるのは、私とブレラがいるこの魔法陣の中心。
誰もが、その事実だけで膝を震わせていた。
「はあ……貴女、いい匂いがしますね。……よく頑張ったって、僕の頭、撫でてくれませんか?」
彼はそう言いながら、抱きしめたままの状態で私の髪に顔を寄せ、ふわりと匂いを吸い込むような仕草をした。
怖い。怖い怖い怖い。
逃げたい。逃げたい逃げたい逃げたい。
けれど、魔力が足りなくて、身体が動かない。指一本、瞬き一つさえ、まともにできない。
「……ああ、魔力切れで動けないんですね」
――心を、読まれている?
逃げたいと思った瞬間、もう彼に伝わっていたのだろうか。
混乱しすぎて何も考えられなくなった私は、彼の動きに気を配る余裕すら失っていた。
「ふふ……僕の愛、たっぷり受け取ってくださいね」
「っん……!う、え……?」
息ができない、と思った瞬間にはもう、うなじと腰を押さえられ、唇を塞がれていた。
突然の口づけ。
拒絶したくても、身体は魔力切れのせいで石のように硬直して動かない。
すると、それに気づいたのか、彼はますます図に乗って――
ただ触れるだけだったはずの唇は、やがて深く、熱を帯びたものに変わっていった。
舌が絡みつく。吸われ、軽く、牙が立つ。
「ん、ん゛ん~~っ!!」
絞り出すように唸り声をあげて、ようやく戻ってきた力で彼の胸を叩いた。
けれど、それすら戯れにすぎなかったのだろう。彼は私の唇を離そうとしない。
瀕死の義妹が横たわる傍で、深く、長く口づけられる。
正気を疑いたくなるような光景の中、彼の背中に回された手が、いつの間にか背中をなぞるように滑っていく。
ゾクリと、背筋を冷たいものが這い、次の瞬間には一気に全身が熱くなる。
これは――恐怖だ。
私の中に今までにない量の魔力が、一気に溢れ出した。
「拒否してるのに気付け!この変態軍神が!!!!!」
気付いたときには、怒りのままに彼の胸を押し飛ばし、その顎に渾身のアッパーを叩き込んでいた。
「ひっ……!」
まさか、こちらに戻ってくるなんて――
そのうえ、声をかけられ、まるで恋人を抱くような柔らかさで抱きしめられて、私は思わず情けない声をあげてしまった。
さっきまで、ひとりの人間を、まるで虫のように「処理」しておきながら……今は純粋無垢な笑顔を浮かべて、甘えるように「慰めて」と求めてくる。
なにこれ、どうすればいいの。拒否したら、私もブレラのように、容赦なく――?
惨状を目の当たりにしたせいだろう。誰も彼女には近づこうとしない。
王と王妃が壇上から騎士たちに助けに行けと叫んでいるが、誰一人として動かない。
いや、動けないのだ。誰だって分かっている。
この場で、魔法陣の中に足を踏み入れたら、次は自分が『潰される』のだと。
軍神がいるのは、私とブレラがいるこの魔法陣の中心。
誰もが、その事実だけで膝を震わせていた。
「はあ……貴女、いい匂いがしますね。……よく頑張ったって、僕の頭、撫でてくれませんか?」
彼はそう言いながら、抱きしめたままの状態で私の髪に顔を寄せ、ふわりと匂いを吸い込むような仕草をした。
怖い。怖い怖い怖い。
逃げたい。逃げたい逃げたい逃げたい。
けれど、魔力が足りなくて、身体が動かない。指一本、瞬き一つさえ、まともにできない。
「……ああ、魔力切れで動けないんですね」
――心を、読まれている?
逃げたいと思った瞬間、もう彼に伝わっていたのだろうか。
混乱しすぎて何も考えられなくなった私は、彼の動きに気を配る余裕すら失っていた。
「ふふ……僕の愛、たっぷり受け取ってくださいね」
「っん……!う、え……?」
息ができない、と思った瞬間にはもう、うなじと腰を押さえられ、唇を塞がれていた。
突然の口づけ。
拒絶したくても、身体は魔力切れのせいで石のように硬直して動かない。
すると、それに気づいたのか、彼はますます図に乗って――
ただ触れるだけだったはずの唇は、やがて深く、熱を帯びたものに変わっていった。
舌が絡みつく。吸われ、軽く、牙が立つ。
「ん、ん゛ん~~っ!!」
絞り出すように唸り声をあげて、ようやく戻ってきた力で彼の胸を叩いた。
けれど、それすら戯れにすぎなかったのだろう。彼は私の唇を離そうとしない。
瀕死の義妹が横たわる傍で、深く、長く口づけられる。
正気を疑いたくなるような光景の中、彼の背中に回された手が、いつの間にか背中をなぞるように滑っていく。
ゾクリと、背筋を冷たいものが這い、次の瞬間には一気に全身が熱くなる。
これは――恐怖だ。
私の中に今までにない量の魔力が、一気に溢れ出した。
「拒否してるのに気付け!この変態軍神が!!!!!」
気付いたときには、怒りのままに彼の胸を押し飛ばし、その顎に渾身のアッパーを叩き込んでいた。
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