生贄にされた王女、最強の軍神に一目惚れされて伴侶認定されました

皇 翼

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4.

「っつ!!」

軍神が魔法陣の上で顎を抑えて間抜けにも転げまわっているのを見て、冷静な思考が帰って来る。
なんてまずいことをしてしまったんだ。いくらしつこくキスをされたからと言っても、このとんでも殺戮兵器を殴り飛ばしてしまった。
しかも思い切りアッパーを急所にいれてしまったせいか、物凄く痛がっている。

私はこれから殺されるのだろう。一人、恐怖に震えて、その場で立ち尽くす。しかし一定時間転げまわって、急にスクリと立ち上がった軍神の反応は全く違うものだった。

「流石は僕の伴侶!良い打撃でした」

一言、言わせてほしい。なんだこいつ。
ブレラに相対していた時のような威厳など全くない姿で犬のように尻尾を振る彼を見ていると、なんだか調子が狂う。
あまりに情けない軍神の姿に、先ほどまで感じていた身も竦むような恐怖心は既になくなっていた。諦めもあったかもしれないが、ここまでくると気にしてもしょうがないという気持ちになってくる。

本気でこの軍神どうしよう、そして義妹があんな惨状になってしまったからこれからどうなるのだろう、どうやってグレンを守ろう、そう考えを巡らせていると、覚えのある魔力の波動を感じると同時に突然城全体が文字通り大きく揺れた。

「え……?ばく、はつ??」
「この魔力は、僕以外の軍神?ここにいるのですか??僕以外にも召喚していたんですか!!?浮気ですよ?」
「浮気ってそもそも付き合ってすらいなーーいえ、なんでもないです」

本当になんなんだ、この軍神。考えが飛躍しすぎなのと、他の軍神がいるだけで浮気と言ってくるのは頭がおかしすぎる。私と彼はなんの関係もない他人のはずなのだから、そもそも浮気などではない。彼の被害妄想だ。軍神用の病院はあるのだろうか。あったらすぐに入ってもらいたい。
そう思って一瞬反論し掛けたが、付き合ってすらいないと言おうとしたら、般若の顔に変わり掛けたのもあって、すぐに押し黙った。真顔、こわっ!

しかし、彼の察知した『僕以外の軍神』という言葉から予測するに、きっともう一人の軍神というのはリアムのことだろう。この国にいる軍神など、私は彼しか知らないし、なによりこの魔力は彼のものだ。
今回の件から完全に手を引かせたはずのリアムが何故こんな爆発騒ぎを起こしているのかは分からないが、一応は私はまだ生きているし、軍神といえど知り合いが犯罪を犯そうとしているのだ。最低限の人間としての良心に従うのであれば、止めるべきだろう。

上の方にいる両親や貴族がさっきよりももっと騒ぎ始めている。
きっと魔法が殆ど使うことができない彼らにとっては、この目の前の軍神が国を崩壊させてやろうと魔法を使っている様に見えるのかもしれない。こちらに注ぐ視線が恐怖に染まりきっていた。あまりにも愚かである。

この人たち、助ける価値ある?もう城と国が崩壊してから外に出てしまえば、国王らがグレンに危害を加える余裕なんてなくなるのでは?少なくとも王都にグレンがいないのは確認しているのだし……なんて考えながら、改めてボケっとしていると、身体が宙に浮く。

「舌、噛まない様にしてくださいね」

なんの声も発することができないまま、私は軍神の力強い魔力に包まれ、次に目を開けた時には周囲の風景は一変していた。本当にこの軍神はなにもかもが唐突すぎるし、行動も突飛である。迷惑極まりない。

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