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「こんにちは、麗華さん」
「立花……さん、こんにちは。……何故ここにいらっしゃったのですか?金槌と以前聞いた気がしたのですが」
「麗華さんと同じ様に僕も泳げるようになろうと思ったので、来ちゃいました」
来ちゃいました……じゃねえよ!!!なんか妙にこの間聞いて来たと思ったら、こんなことを企んでいたのか!なんてやつなんだ!!
もう会った瞬間から内心荒れてしまったが、まさか石ケ森学園のプールでいきなりバッタリ会うだなんて思うわけがないだろう。しかも悪戯成功とでも言いたいのか、立花樹はニコニコしているし。そんなに私をいじめて楽しいのか!!?
くっ!ラッシュガードの水着から薄く見える筋肉の影が、無駄に眩しい。元々好みの容姿をしているのだ。そんな男が水着姿で現れると正気じゃいられなくなる。
実は立花樹はキャラクター設定上でも肌を晒さない男だったりする。昔のトラウマから肌を露出したくないという闇が深い設定を思い出して、その尊さに跪きそうになってしまった。しかし!私はなんとか言葉を交わして耐え切った。我ながら偉いと思う。
心の中で、自分(の欲望)との闘いをしていた私の思考を遮るように、蓮音兄様が声を掛けて来た。
「麗華ー!今日のトレーニングコースについてだけど――って、樹君?」
「蓮音さんも、こんにちは」
「こんにちは!樹君もトレーニングかな!?水泳の良さを分かっているだなんて、流石麗華の婚約者だね!」
この二人、一応会えば話す程度の仲なのか、と少し感心する。正直なところ、この二人が話しているのなんて見たことがなかったということもあり、会話を交わすとは思っていなかったのだ。よくてお互いに頭を下げる程度の挨拶だと勝手に思い込んでいた。
蓮音兄様は現在中学1年生で、立花樹と同い年だ。しかしクラスは別らしく、どちらからもあまり話題を聞かなかった。だからこそあまり仲はよろしくないのかと思っていた。だがこの会話ぶりから、仲は特に悪くもなかったようだ。
「それにしても麗華、彼もスポーツをするのなら、もっと早く誘えばよかっ――」
「あっれ~。誰かと思えば、スポーツの天才・桜小路蓮音先輩じゃないっすか~」
うわ、やっば。
それがこの兄様の発言を遮って、話しかけて来た男を見た時の感想だった。上半身を見れば、兄様より細身だが、整った身体。そしてオレンジ系の元気そうな髪色に意志が強そうな紅い瞳というイケメンなのだが、下半身がよろしくない。派手なビキニパンツだったのだ。だから私の彼に対する第一印象は、『うわ、やっば。何このビキニパンツの露出男』である。
「君は……誰だい?麗華か樹君の知り合いとか?」
「っ覚えてねえのかよ。俺はっ――」
「彼は僕の幼馴染の城山 椿です。何度か蓮音さんと同じ大会にも出たことがあるそうですよ」
兄様に掴みかかろうとしたブーメランパンツ男の腕を掴み、立花樹が紹介してくれる。
城山椿。中々可愛い名前だ。容姿が割とマッチョ系なのが残念だが。
「……申し訳ないんだけど、その、覚えていないかな」
「ってめぇ!!」
「椿、僕の依頼を忘れたのですか?」
「ちっ!覚えてるよ、うるせーな」
うわー、このブーメランパンツ男、ガラが悪い。
会話の内容からして、きっとこの城山椿という男は蓮音兄様をライバル視している立花樹の友人――そこまで考えたところで、とある記憶が掘り起こされた。
『俺は絶対に全国で1位になって見せるから、隣で見ていて欲しい』
これはゲームのOP映像にあったセリフ。そうだ、彼は攻略対象のうちの一人。その中でも、熱血担当の男だった筈だ。担当カラーは容姿から見ても分かるように、赤。ルートもただただ青春。暑苦しいの一言に尽きる。立花樹が担当カラーが青の物凄く暗いルートだったので、真逆のポジションのキャラとも言える。
ルート内容としては、万年2位と称されている城山椿が、お優しいヒロインの応援によって同学校所属の長年のライバルを打ち破り、最終的に全国大会で1位を取るという話だった筈だ。人間、切っ掛けがあれば案外思いだすものだと感心した。
なるほど。ということは、ルートで出てくるライバルポジションは蓮音兄様か。
意味が分からないタイミングで、まさかの攻略対象2人目発見という快挙(?)を果たした私。
しかし、ここでボケっとしている場合ではなかったのだ。攻略対象だと分かった時点で、全力で関わらないように逃げておくべきだった。まさかあんな面倒なことに巻き込まれるだなんて、この時の私は考えてもみなかった。
「立花……さん、こんにちは。……何故ここにいらっしゃったのですか?金槌と以前聞いた気がしたのですが」
「麗華さんと同じ様に僕も泳げるようになろうと思ったので、来ちゃいました」
来ちゃいました……じゃねえよ!!!なんか妙にこの間聞いて来たと思ったら、こんなことを企んでいたのか!なんてやつなんだ!!
もう会った瞬間から内心荒れてしまったが、まさか石ケ森学園のプールでいきなりバッタリ会うだなんて思うわけがないだろう。しかも悪戯成功とでも言いたいのか、立花樹はニコニコしているし。そんなに私をいじめて楽しいのか!!?
くっ!ラッシュガードの水着から薄く見える筋肉の影が、無駄に眩しい。元々好みの容姿をしているのだ。そんな男が水着姿で現れると正気じゃいられなくなる。
実は立花樹はキャラクター設定上でも肌を晒さない男だったりする。昔のトラウマから肌を露出したくないという闇が深い設定を思い出して、その尊さに跪きそうになってしまった。しかし!私はなんとか言葉を交わして耐え切った。我ながら偉いと思う。
心の中で、自分(の欲望)との闘いをしていた私の思考を遮るように、蓮音兄様が声を掛けて来た。
「麗華ー!今日のトレーニングコースについてだけど――って、樹君?」
「蓮音さんも、こんにちは」
「こんにちは!樹君もトレーニングかな!?水泳の良さを分かっているだなんて、流石麗華の婚約者だね!」
この二人、一応会えば話す程度の仲なのか、と少し感心する。正直なところ、この二人が話しているのなんて見たことがなかったということもあり、会話を交わすとは思っていなかったのだ。よくてお互いに頭を下げる程度の挨拶だと勝手に思い込んでいた。
蓮音兄様は現在中学1年生で、立花樹と同い年だ。しかしクラスは別らしく、どちらからもあまり話題を聞かなかった。だからこそあまり仲はよろしくないのかと思っていた。だがこの会話ぶりから、仲は特に悪くもなかったようだ。
「それにしても麗華、彼もスポーツをするのなら、もっと早く誘えばよかっ――」
「あっれ~。誰かと思えば、スポーツの天才・桜小路蓮音先輩じゃないっすか~」
うわ、やっば。
それがこの兄様の発言を遮って、話しかけて来た男を見た時の感想だった。上半身を見れば、兄様より細身だが、整った身体。そしてオレンジ系の元気そうな髪色に意志が強そうな紅い瞳というイケメンなのだが、下半身がよろしくない。派手なビキニパンツだったのだ。だから私の彼に対する第一印象は、『うわ、やっば。何このビキニパンツの露出男』である。
「君は……誰だい?麗華か樹君の知り合いとか?」
「っ覚えてねえのかよ。俺はっ――」
「彼は僕の幼馴染の城山 椿です。何度か蓮音さんと同じ大会にも出たことがあるそうですよ」
兄様に掴みかかろうとしたブーメランパンツ男の腕を掴み、立花樹が紹介してくれる。
城山椿。中々可愛い名前だ。容姿が割とマッチョ系なのが残念だが。
「……申し訳ないんだけど、その、覚えていないかな」
「ってめぇ!!」
「椿、僕の依頼を忘れたのですか?」
「ちっ!覚えてるよ、うるせーな」
うわー、このブーメランパンツ男、ガラが悪い。
会話の内容からして、きっとこの城山椿という男は蓮音兄様をライバル視している立花樹の友人――そこまで考えたところで、とある記憶が掘り起こされた。
『俺は絶対に全国で1位になって見せるから、隣で見ていて欲しい』
これはゲームのOP映像にあったセリフ。そうだ、彼は攻略対象のうちの一人。その中でも、熱血担当の男だった筈だ。担当カラーは容姿から見ても分かるように、赤。ルートもただただ青春。暑苦しいの一言に尽きる。立花樹が担当カラーが青の物凄く暗いルートだったので、真逆のポジションのキャラとも言える。
ルート内容としては、万年2位と称されている城山椿が、お優しいヒロインの応援によって同学校所属の長年のライバルを打ち破り、最終的に全国大会で1位を取るという話だった筈だ。人間、切っ掛けがあれば案外思いだすものだと感心した。
なるほど。ということは、ルートで出てくるライバルポジションは蓮音兄様か。
意味が分からないタイミングで、まさかの攻略対象2人目発見という快挙(?)を果たした私。
しかし、ここでボケっとしている場合ではなかったのだ。攻略対象だと分かった時点で、全力で関わらないように逃げておくべきだった。まさかあんな面倒なことに巻き込まれるだなんて、この時の私は考えてもみなかった。
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