死にたくないので、推しの婚約者やめたいです

皇 翼

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立花樹のカウンセリングは傍から聞いていても見事なものだった。
カウンセリングの基本は受容、傾聴、共感的理解。それを上手く使って、私よりも多くの情報を鷹志君から聞き出していく。
ずっとパーティーでも学校でも外に出ればイジめられていたこと、『いじめ』という行為をされていることが恥ずかしくて申し訳なくて親にも姉にも相談できなかったこと、学校でのトラブルは教師に相談したがむしろ酷くなってしまったこと、自分の体形や性格が恥ずかしくて恥ずかしくて隣に居てくれる人に申し訳ないこと。
悲痛なまでの感情が吐き出される。
そうして最終的に鷹志君は言い切った。

「僕は……変わりたい。麗華さんに、友達にも家族の横に居ても恥ずかしくないような人間に――なりたいんです」

正直、立花樹に負けたと思った。
私ではこんなにも上手く、鷹志君を傷付けることなく悩みを聞き出して、これからどうしたいのかを引き出すことは出来なかっただろう。
変わりたいと言ってその瞳に強い意志を宿した彼は、既に今までの彼からは変わり始めているような気がした。

「よく言ってくれました。それを聞いたからには、僕が全力でバックアップするので安心してください」

ああ、こういう他人に対して手を差し伸べて助けられる、なんだかんだ善性を持ち合わせている彼だからこそ私は過去惹かれたんだった。そう思いだす。
自身の中で真っ黒な闇を飼いながらも、途轍もなく最低な真似をした麗華以外は彼はルート内で許していた。
だから……だからこそ、私は――。

「嫌われたくないなぁ」

感極まって泣き始める鷹志君とそれを慰める立花樹。その光景を見て、ポロリと出てしまったその言葉。
既に私が麗華という私自身である時点で嫌われていることは分かっている。それでも、嫌われたくないなんていう甘えた感情が出てしまった。別に私はヒロインじゃないのだから、立花樹と結ばれようだなんて考えていない。だけど嫌われているのは、今後何かしらの理由で作中の麗華のように敵意を向けられるのは辛いなと思った。ただそれだけだ。私のこれは恋心なんかではない。人間なら誰しも、他人に嫌われるのは辛いだろう。

「麗華さん?何か言いましたか?」
「いいえ。何でもないです。ただ、解決の糸口は見えたみたいで良かったです」
「麗華さん、立花さんを紹介してくれて有難うございました」

やはり立花樹の私に対する声は固い。
根本的に私は好かれることがないのだろう。今はただ、友人が良い方向に変われそうだということだけを喜んで、祝おうと思った。
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