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12.エピローグ
元々短編の予定で書いていたので、これで最終話です!
***
それからは色んな事が一気に変化した。
まずオリヴィエには先読みの能力が戻った。彼女の能力に対するコンプレックスは薄くなっていたので、そこまでの感慨はなく、あるべきものが戻った程度の認識だったが。
なにせもうオリヴィエにとっては先読みの力は重要ではなかったのだ。あの後……キアナが連行され、テオフィルスの前にオリヴィエが姿を現した後、二人で想いを伝えあったから。
それに加え、オリヴィエが冤罪で指名手配されていた件も解決した。
アドールが作り出した超小型の”魔導録音機”によってキアナの白状した事実やその罪が白日の下に晒され、オリヴィエの冤罪が証明されたのだ。
こうして、キアナと彼女を手駒にしていた貴族達が芋づる式に牢に入れられることになる。彼らは元々テオフィルスが怪しいと睨んでいたが、これといった証拠がなく罪を問えなかった者達だったそうだ。
『更に大きな商売をするには、先読みの姫巫女が邪魔だった』
そう言い、裏でコソコソと人身売買や強力故に希少な魔獣の売り買いなど、言い出したらキリがないほどの犯罪行為を行っていたのだという。
そして一番変わった事が、姫巫女という職業がなくなったことだ。
オリヴィエは後から聞いたことだが、これはテオフィルスの長年の夢だった。
テオフィルスはグレイスヴィッツ神従王国と名乗り、国内の事も姫巫女に頼り切っておいて、何か責任問題が起きたら全て姫巫女の所為となるこの国の在り方に疑問を持っていた。だから元々、次の姫巫女が現れる前に自身の代でこの姫巫女という制度をなくそうと思っていたのだ。そのためにずっとこの制度をなくすために計画を進めてきた。
彼は解放したかったのだ。姫巫女という籠の中の鳥を。
しかし予想外だったのは夜会で舞を披露するオリヴィエに一目惚れし、素性を調べると姫巫女であるという事が判明したこと――。
オリヴィエと出会ったことにより、彼の計画は崩れた。
以前の姫巫女はとある事件から失踪していた。だから国王にも『姫巫女がいない国づくりを』と促せたのに、オリヴィエの存在によってその”理由”が使えなくなってしまった。
人間は弱い。何か縋れるものがあると、誰しも縋ってしまう。それはこの国も同じだ。他国に比べてこれといった突出するものがなかった故、弱かった。王も、国も……。
テオフィルスの進言に説得されかかっていた国王だったが、姫巫女が見つかるとソレは翻され、白紙に戻ってしまった。
そしてテオフィルスを黙らせるためとでも言うようにオリヴィエをテオフィルスの婚約者に据えた。あくまで婚約者だ。きっとこのままではオリヴィエとテオフィルスは結婚することは叶わないだろう。この国は歪んでいる。何時の時代も姫巫女は先読みの能力を搾れるだけ搾り取られ、大きすぎる問題が起きた時は体の良い生贄のように打ち捨てられる。
この国の腐敗度合いから父王もオリヴィエが長くないと思っているようだった。
テオフィルスには自身が王になった時に、姫巫女の制度を失くすという選択肢もあった。けれどそれでは遅いのだ。今まで未来を予知しきれずに国中から責められ、心を病んでいった姫巫女の人生が記された歴史書を何度も読んで来た。だからテオフィルスはオリヴィエのためにも今、変えなければならなかったのだ。けれど父王は姫巫女に頼り切り、骨の髄まで利用しようとしている。
このままでは今までの姫巫女の二の舞いだ。
だからテオフィルスは必死に味方を増やしながら、少しづつ地盤を固めていったのだ。それ故、今回の事件を引き金にして姫巫女という立場を失くすことが出来たのだった。
今日、この国は完全に変わる。変わることが出来る。テオフィルスが最後まで諦めなかったから。オリヴィエが向き合ったから。色んな人の気持ちが積み重なったからこそ。
グレイスヴィッツ神属王国の名を捨て、姫巫女という存在も捨てて――。
新たな王国――ウィステリア王国として生まれ変わるのだ。
ウィステリアの花を冠したその国名。
王族に近い血族は瞳や髪の毛――体のどこかしらに紫色が入るという事も由来になっているが、なによりもこの花はこの国に伝わる神話で人間が女神の保護下から離れて、初めて産み出された生命ということになっている。
今までこの国ではあまり縁起が良いとされていなかった花。だが、女神や姫巫女といった存在に頼り切っている今の国を変えるには良いと思った。だからテオフィルスはこの花を国名にすることを選んだのだった。
後々の子孫たちが、必要以上に女神や先読みの力に頼らずに生きていくという未来を願って。
***
ウィステリア王国の初代国王・テオフィルスとその妃・オリヴィエはいつまでも語り継がれることになる。素晴らしき建国者として。理想の夫婦像として。
彼らの歴史は魔法という概念が薄れた後も語り継がれた。
Fin
******
あとがき:
実はこの作品、私のアルファポリスで一番最初に投稿した作品『今日、大好きな婚約者の心を奪われます』の前の時代の話を描いた作品なのです!『今日、大好きな婚約者の心を奪われます』での未来視の力=姫巫女の先読みの力という感じです。元々、構想にあったのですが中々形にする時間がなかったのです。けれどやっと連載→完結という運びになりました!読んでくれた方々、ありがとうございました!!
エタラないためにも重要な部分しか書いていないので、キャラ同士の絡みや恋愛的要素は希望があれば、番外編で追加したいと思います。(需要がありかは分かりませんがw)
なにはともあれ、完結できてよかったです。
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それからは色んな事が一気に変化した。
まずオリヴィエには先読みの能力が戻った。彼女の能力に対するコンプレックスは薄くなっていたので、そこまでの感慨はなく、あるべきものが戻った程度の認識だったが。
なにせもうオリヴィエにとっては先読みの力は重要ではなかったのだ。あの後……キアナが連行され、テオフィルスの前にオリヴィエが姿を現した後、二人で想いを伝えあったから。
それに加え、オリヴィエが冤罪で指名手配されていた件も解決した。
アドールが作り出した超小型の”魔導録音機”によってキアナの白状した事実やその罪が白日の下に晒され、オリヴィエの冤罪が証明されたのだ。
こうして、キアナと彼女を手駒にしていた貴族達が芋づる式に牢に入れられることになる。彼らは元々テオフィルスが怪しいと睨んでいたが、これといった証拠がなく罪を問えなかった者達だったそうだ。
『更に大きな商売をするには、先読みの姫巫女が邪魔だった』
そう言い、裏でコソコソと人身売買や強力故に希少な魔獣の売り買いなど、言い出したらキリがないほどの犯罪行為を行っていたのだという。
そして一番変わった事が、姫巫女という職業がなくなったことだ。
オリヴィエは後から聞いたことだが、これはテオフィルスの長年の夢だった。
テオフィルスはグレイスヴィッツ神従王国と名乗り、国内の事も姫巫女に頼り切っておいて、何か責任問題が起きたら全て姫巫女の所為となるこの国の在り方に疑問を持っていた。だから元々、次の姫巫女が現れる前に自身の代でこの姫巫女という制度をなくそうと思っていたのだ。そのためにずっとこの制度をなくすために計画を進めてきた。
彼は解放したかったのだ。姫巫女という籠の中の鳥を。
しかし予想外だったのは夜会で舞を披露するオリヴィエに一目惚れし、素性を調べると姫巫女であるという事が判明したこと――。
オリヴィエと出会ったことにより、彼の計画は崩れた。
以前の姫巫女はとある事件から失踪していた。だから国王にも『姫巫女がいない国づくりを』と促せたのに、オリヴィエの存在によってその”理由”が使えなくなってしまった。
人間は弱い。何か縋れるものがあると、誰しも縋ってしまう。それはこの国も同じだ。他国に比べてこれといった突出するものがなかった故、弱かった。王も、国も……。
テオフィルスの進言に説得されかかっていた国王だったが、姫巫女が見つかるとソレは翻され、白紙に戻ってしまった。
そしてテオフィルスを黙らせるためとでも言うようにオリヴィエをテオフィルスの婚約者に据えた。あくまで婚約者だ。きっとこのままではオリヴィエとテオフィルスは結婚することは叶わないだろう。この国は歪んでいる。何時の時代も姫巫女は先読みの能力を搾れるだけ搾り取られ、大きすぎる問題が起きた時は体の良い生贄のように打ち捨てられる。
この国の腐敗度合いから父王もオリヴィエが長くないと思っているようだった。
テオフィルスには自身が王になった時に、姫巫女の制度を失くすという選択肢もあった。けれどそれでは遅いのだ。今まで未来を予知しきれずに国中から責められ、心を病んでいった姫巫女の人生が記された歴史書を何度も読んで来た。だからテオフィルスはオリヴィエのためにも今、変えなければならなかったのだ。けれど父王は姫巫女に頼り切り、骨の髄まで利用しようとしている。
このままでは今までの姫巫女の二の舞いだ。
だからテオフィルスは必死に味方を増やしながら、少しづつ地盤を固めていったのだ。それ故、今回の事件を引き金にして姫巫女という立場を失くすことが出来たのだった。
今日、この国は完全に変わる。変わることが出来る。テオフィルスが最後まで諦めなかったから。オリヴィエが向き合ったから。色んな人の気持ちが積み重なったからこそ。
グレイスヴィッツ神属王国の名を捨て、姫巫女という存在も捨てて――。
新たな王国――ウィステリア王国として生まれ変わるのだ。
ウィステリアの花を冠したその国名。
王族に近い血族は瞳や髪の毛――体のどこかしらに紫色が入るという事も由来になっているが、なによりもこの花はこの国に伝わる神話で人間が女神の保護下から離れて、初めて産み出された生命ということになっている。
今までこの国ではあまり縁起が良いとされていなかった花。だが、女神や姫巫女といった存在に頼り切っている今の国を変えるには良いと思った。だからテオフィルスはこの花を国名にすることを選んだのだった。
後々の子孫たちが、必要以上に女神や先読みの力に頼らずに生きていくという未来を願って。
***
ウィステリア王国の初代国王・テオフィルスとその妃・オリヴィエはいつまでも語り継がれることになる。素晴らしき建国者として。理想の夫婦像として。
彼らの歴史は魔法という概念が薄れた後も語り継がれた。
Fin
******
あとがき:
実はこの作品、私のアルファポリスで一番最初に投稿した作品『今日、大好きな婚約者の心を奪われます』の前の時代の話を描いた作品なのです!『今日、大好きな婚約者の心を奪われます』での未来視の力=姫巫女の先読みの力という感じです。元々、構想にあったのですが中々形にする時間がなかったのです。けれどやっと連載→完結という運びになりました!読んでくれた方々、ありがとうございました!!
エタラないためにも重要な部分しか書いていないので、キャラ同士の絡みや恋愛的要素は希望があれば、番外編で追加したいと思います。(需要がありかは分かりませんがw)
なにはともあれ、完結できてよかったです。
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