『婚約者を大好きな自分』を演じてきた侯爵令嬢、自立しろと言われたので、好き勝手に生きていくことにしました

皇 翼

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「ちょっと、アンタ!え、ちょっと待ちなさいよ!!アンタよ、リーシャ=スプライント!!何無視してんのよ!!?」

『複合魔法』に出会ってから、3日後。
私はあれからほとんど眠らずにこの魔法について学んでいた。あの日サボったことを怒られることなく、むしろ多大な心配を受けてしまったので申し訳なさが勝って授業は辛うじて出席してはいるが、正直休みたいくらいだ。相変わらず複合魔法以外には興味を持てないし。
しかし、授業を休んで研究なんかしていたら退学だとクレイヴ先生に脅されて、仕方なく出席しながらも唯一削れる睡眠時間を削って日々を過ごしていた。
今までここまで何かに熱中したことなどない。だからこそ毎日が新鮮だった。人生に色が付いたように見えるとはまさしくこのことなのだろう。楽しみがあるというだけで、生きているのが楽しくて仕方がなかった。

「なんで無言なのよ。失礼じゃない」
「ああ。気が逸れていました。何か御用でしょうか……ゴンザレスさん」
「コリアンナよ!!アンタ、クラスメイトの名前も覚えていないわけ!!?」

私の名前は知っているようで、知り合いっぽかったので、当てずっぽうで名前を呼んだが違ったようだ。『コ』の字は当たっていたのだから及第点だろう。
しかし彼女はなんだか最初よりも怒っている。私とは違って、感情の起伏が激しいパワフルな人だと思った。

「で。アンタ、オーランド=レッドグルールに近付くなって言われたんですって?」
「はあ。その話ですか」

あの日から、私に対してこそこそと陰口をたたいている人間がいるのは分かっている。かなり大きい声で言っている人間が多いので、興味がなかろうと聞こえてくるのだ。もしかしたら聞かせて私の反応をうかがっているのかもしれないとすら思う。何故他人にそこまで興味津々なのだろう。以前の私にその欠片でも良いから、その感情を分けて欲しいくらいだ。

どうやら学校の人間にとっては今回のことは格好のスキャンダルのようだった。娯楽に勝手にされていることはめんどうだなとは思うが、それ以外の感情は沸かない。
こんな親元や賑やかな都会から離された閉鎖空間では誰しもが娯楽を求めるのだろう。犯罪まがいのことを表立って行わないだけまだ善良な人間が多い気がする。

「アンタ、自分のことなのに興味なさそうにするのね。全く、噂されていて元気がなさそうに見えたから声かけてみたけど、労力の無駄遣いね」
「え、心配して声をかけてきているんですか?馬鹿にしにきているのではなく??」
「……私と同じようにアンタもクラスで浮いてるから、心配してやったんじゃない」
「貴女も浮いているんですね。でも確かに口調がやたら強くて気性も荒そうだし、関わると――なんでもないです」
「アンタねえ…………まあ、いいわ。それじゃ」

忙しない人だと思った。
でも少し意外だった。クレイヴ先生は教師だからともかく、学生の中にも一応私を心配して声を掛けてくれるような人がいるのは知らなかった。新たな発見である。
夢中になれることを見つけた余裕からだろうか。今までであれば話しかけられても、時間の無駄だと思って無視していた。しかし今回はある程度会話を続ける気になれた。
なんだか以前よりも視野が広がったような気がした。きっと母も喜んでくれるだろう。直接報告する日――実家に帰れる長期休暇がより楽しみになった。
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