『婚約者を大好きな自分』を演じてきた侯爵令嬢、自立しろと言われたので、好き勝手に生きていくことにしました

皇 翼

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16.

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「……しょうがないわ」

私は腕を組んで、目の前のマーカスを睨みつけた。本当に不本意なことが起こっているからだ。

「僕だって別に貴女とつるみたくなんてありません。だからこれは仕方がなく、です」

マーカスも同じく渋い顔をしている。
でも、どちらも同じことを考えていた。
クレイヴ先生の罪を晴らして戻ってきてもらう。そのためなら、一時的にでもこの嫌な相手と手を組まなければならない。

「……まずは、先生が本当に懲戒免職になった理由を突き止めるべきだと思うの。別に人死が出たわけでもあるまいし、土地が一部削れた程度……それも普段全く使用していない人家もないような場所が削れた程度では懲戒免職なんて厳罰を食らうはずがない。そもそもやったの私達ですし」

私の言葉に、マーカスは腕を組んで頷いた。
あの後。懲戒免職になった理由はといろんな教師に聞いた結果、学院内での器物損壊だと言われたのだ。

「まあ、僕たちが学院の敷地を破壊したのが原因なのは分かりますが……どう考えても、クレイヴ先生に全責任を押し付けるのはおかしい。本来であれば、僕たちが咎を負うべきですよ」

私もその意見には同意だった。

「確かに、あの時の戦いは派手だったけど、それでも先生がすべての責任を負うようなことではないはず。先生は喧嘩し続ける私達を学院の外に置いてきたんだから、むしろ学院が破壊されず、特をしたのは学院側では?」
「そうですね。むしろ先生のお陰で被害があの程度で済んだのですから、むしろ表彰されるべきです。だから今回の件は、あまりにも唐突で妙だとしか言いようがない。魔力痕が残っているはずの僕らに事情聴取がなかったのも怪しい」

マーカスは顎に手を当て、思案する。
聞けば聞くほど、彼は私と全く同じ考えのようだ。別に贔屓しているわけではない。客観的に見て、そう、なのだ。

「それに……昨日の朝会、教員間のあの異様な静けさが気になりました。校長先生も、妙に歯切れが悪かったですし」

私もそれは気になっていた。
なんだか教員の中には悔しさそうな顔をしている者や、逆にニヤニヤしていた者。一人の教師が懲戒免職になったという深刻な雰囲気に似つかわしくない反応であった。

「学院の中で、先生の免職に反対している人もいるかもしれないってこと?」
「可能性はありますね」

マーカスは頭頂部をトントンと押しながら私の瞳を見つめて議論を交わす。

「つまり、僕たちはまず、この学院内でクレイヴ先生の免職を本気で望んでいる人間が誰なのか、そして、逆に反対している人間が誰なのかを探って情報収集する必要がありますね。それがクレイヴ先生復帰への最短ルートになるかと」
「そうね……」

私は頷いた。
確かに、その情報が分かれば、今後の動き方が変わってくるかもしれない。

「それから、次に考えなきゃいけないのは――」
「図書館のこんな隅で何をしているんだ?」

そうマーカスが話をまとめようとしたところで、遮る声があった。
とても聞き馴染みがある声。そして最近は近くで聞く機会がほぼなくなった声だった。

「……オーランド、様」
「ん?誰でしょうか、貴方は。僕たちの話を邪魔しないでいただきたいのですが」
「俺は彼女――リーシャの婚約者だ。それで、君は俺の婚約者とこんなところで何をしていたんだ?」

意味が分からなかった。
私のことを切り捨てたのに、こんな風に急にまた声を掛けてくることが。
彼の望みで離れたというのに、わざわざこうして追いかけてくる。些か、勝手すぎやしないか。
そして今は私はやっと自分のしたい、好きなことを見つけられて、現在それを阻害しようとしているものをどうにかしようと少しでも時間が惜しい時だ。
本当に彼は勝手な人だ。彼の態度に少し苛立った。だからこそ、今まで彼に対して口に出したことがないような冷たい声が出たのだろう。

「オーランド様には関係ありません」
「え……リーシャ?」
「婚約者として貴方に迷惑は掛けないつもりです。迷惑を掛けてしまうと判断すれば、婚約を破談にしていただいても結構ですから、邪魔しないでください」

なんだか一瞬呆けたような顔をした彼をさっさと振り払いたくて、言いたいことを全て言ってしまった。
酷いことを言った罪悪感から、彼がどんな顔をしているかは見ずに、マーカスにさっさと別の場所に行きましょうと目で合図した。
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