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「あんなこと言ってよかったんですか?婚約者なのでしょう。そんな人が異性と二人きりで過ごしていれば、誰しも心配するのではないでしょうか」
「第一に貴方と私はそんな関係性ではない。考えるだけでゾッとします。そもそも私に対して先に不干渉を提示してきたのは彼ですから。それに向こうだって……なんでもないわ。話を再開しましょう」
今度は少し騒がしいカフェの端に移動して、マーカスとの話を再開する。
少し意味が分からないと言いたげで、説明しろという雰囲気を醸し出していたマーカスだが、私が何も話す気がないと察したところで彼も態度を切り替えた。
「今回の懲戒免職には妙な点がいくつかあるわ。まず1つ目が、教師陣に聞いた限り、土地を荒らした程度で即懲戒免職とされていること。正直、授業中に学院の一部を壊したり、休み期間中に魔法で森の一部を全焼させたりする生徒は数年に一度出ている。その生徒たちも特にお咎めなしで卒業している。そして2つ目、今回の件は私とマーカスが起こしたことだった。確かにあそこに置いていったのはクレイヴ先生だけど実際に犯行?を犯したのは私達。そして3つ目が処分が速すぎること。先生が報告したにしろ、誰かが密告したにしろ、2日も経たない内に処分がくだされるのはおかしい。まるで前々から準備されていたみたいで気持ちが悪いわ」
「……言われてみれば、なんだか元々シナリオが練られていたみたいですね。誰かが裏で糸を引いていると?」
マーカスは考えるように顎の前に手を置き、私の顔をじっと見つめる。特に反論などはないようで少し安心した。
「ええ。だからこそ、私たちがするべきことは3つある」
「言ってみてください」
マーカスも真剣な顔でこちらを見つめ返してくる。
「一つ目は、学院内でクレイヴ先生の免職を推し進めたのが誰なのかを突き止めること」
私が指を一本立てると、マーカスは「ふむ」と頷いた。それが出来ればほぼ今回クレイヴ先生を懲戒免職にした誰かを絞りきれたようなものだろう。校長は確実に関与しているとは思うが、そこに対して何かを唆した人間がいると睨んでいる。
「二つ目は、先生の免職に反対している人間を探し出し、協力を取り付けること。あの朝の教師陣の態度からして、納得していない人は何人かいたわ。その人たちに何かしらの協力をしてもらって犯人を追い詰める」
「これも賛成です。流石に生徒が助けを求めてかつ納得していないのであれば、直接でなくても、当時何があったのか教えてくれるくらいのことは期待しても良いでしょう」
そう。もし放っておけば、次には自分に矛先が向くかもしれない。ズルい言い方だが、いざとなればこれでゆすって情報を聞き出すしかないと考えていた。
「そして三つ目は――」
私は、指を三本立てた。
「あの日何が起こったのか、クレイヴ先生が首にされた本当の理由。きっと私達がしたこと以外にも裏側では何か嫌疑をかけられているはずだから、それらの情報を探し出すことよ」
「なるほど……」
マーカスは腕を組み、しばらく考え込んだ。
「……仕方ないですね。僕は貴女と手を組むのは気に食わないですが……クレイヴ先生がいなくなるのはもっと気に食わないので」
「私もよ」
そうして、私たちは――敵同士だったはずの二人は熱く握手を交わし、一時的な共闘を決めたのだった。
******
マーカスと共に行動を開始してから、私たちはまず最初の手がかりを探すことにした。
――クレイヴ先生の懲戒免職を推し進めたのは誰か。
学院の教師陣に聞き込みを行うと、意外にもすぐに一つの名前が浮上した。
リューガス=エルバート。
魔法理論学の教授であり、クレイヴ先生とは同僚だった人物。
しかし、二人が特別仲が悪かったわけではない。むしろ、表向きは普通の友人のような関係に見えた。お昼も何度か一緒に食べているところを見たことがある。
彼が最初に『クレイヴの余罪はまだある』と主張したらしい。学院長に進言したのもリューガスだと。
「……正直、私は納得していないよ。クレイヴはそんなことをするような人間じゃない……けれど、リューガスがあれだけ強く推せば、私たちにはどうしようもなかった。それにあの情報だって――いや、なんでもない。忘れてくれ」
そう最後に言った。ちなみに、この情報をくれたのは、魔法演習の担当教師だった。年配の温厚な人物で、クレイヴ先生のことを信頼していたようだった。それにクレイヴ先生に懐いていた私達のことをずっと熱心な生徒だと気にかけてくれていたらしい。
「しかし、それだけで決定的とは言えませんね」
マーカスが呟く。
「ええ。でも、クレイヴ先生に処分を下すほどの情報と権限を持っていたのが彼なら、次の疑問が生まれるわ」
――なぜ、リューガスはそんなにも早く動けたのか?
クレイヴ先生が私たちの懲戒免職のことを知ったのは、事件発生の2日前。
前日、遅くても朝までに既にクレイヴ先生の懲戒免職は決まっていたと考えられる。
速すぎる。まるで、最初からクレイヴ先生を排除するために、この情報を利用するつもりだったかのように。
「つまり、事前に準備していた可能性が高い……?」
マーカスが呟く。
私たちはさらに聞き込みを続けた。
すると、一人の教師が渋々ながらも口を開いた。
「クレイヴ先生が懲戒免職になった理由は、私達にあるかもしれないんです。お願いです、教えてください。先生の罪を晴らしたいんです」
「……全部は言えん。ただ、彼は『確かな証拠がある』と言っていた」
確かな証拠?
「それは、どんな証拠だったのか聞きましたか?」
「……彼が『クレイヴが生徒に危険な実験をさせていた』と主張していたのは覚えている」
「危険な実験……?」
マーカスが眉をひそめた。
「私たちがしたのは、ただの魔法演習の応用のようなものです。クレイヴ先生が『実験』なんて言うようなことをするはずが……」
「ああ。複合魔法のことだろう。それについては他の教師も認知している。しかし、リューガスがいう証拠とやらは校長にしか共有されていないから、実のところの理由は私達では誰も分からない。助けようがなかった、すまない」
私とマーカスは他の教師が言い淀んでいた情報まで全て話してくれたその教師に礼を言い、その場を後にした――。
「第一に貴方と私はそんな関係性ではない。考えるだけでゾッとします。そもそも私に対して先に不干渉を提示してきたのは彼ですから。それに向こうだって……なんでもないわ。話を再開しましょう」
今度は少し騒がしいカフェの端に移動して、マーカスとの話を再開する。
少し意味が分からないと言いたげで、説明しろという雰囲気を醸し出していたマーカスだが、私が何も話す気がないと察したところで彼も態度を切り替えた。
「今回の懲戒免職には妙な点がいくつかあるわ。まず1つ目が、教師陣に聞いた限り、土地を荒らした程度で即懲戒免職とされていること。正直、授業中に学院の一部を壊したり、休み期間中に魔法で森の一部を全焼させたりする生徒は数年に一度出ている。その生徒たちも特にお咎めなしで卒業している。そして2つ目、今回の件は私とマーカスが起こしたことだった。確かにあそこに置いていったのはクレイヴ先生だけど実際に犯行?を犯したのは私達。そして3つ目が処分が速すぎること。先生が報告したにしろ、誰かが密告したにしろ、2日も経たない内に処分がくだされるのはおかしい。まるで前々から準備されていたみたいで気持ちが悪いわ」
「……言われてみれば、なんだか元々シナリオが練られていたみたいですね。誰かが裏で糸を引いていると?」
マーカスは考えるように顎の前に手を置き、私の顔をじっと見つめる。特に反論などはないようで少し安心した。
「ええ。だからこそ、私たちがするべきことは3つある」
「言ってみてください」
マーカスも真剣な顔でこちらを見つめ返してくる。
「一つ目は、学院内でクレイヴ先生の免職を推し進めたのが誰なのかを突き止めること」
私が指を一本立てると、マーカスは「ふむ」と頷いた。それが出来ればほぼ今回クレイヴ先生を懲戒免職にした誰かを絞りきれたようなものだろう。校長は確実に関与しているとは思うが、そこに対して何かを唆した人間がいると睨んでいる。
「二つ目は、先生の免職に反対している人間を探し出し、協力を取り付けること。あの朝の教師陣の態度からして、納得していない人は何人かいたわ。その人たちに何かしらの協力をしてもらって犯人を追い詰める」
「これも賛成です。流石に生徒が助けを求めてかつ納得していないのであれば、直接でなくても、当時何があったのか教えてくれるくらいのことは期待しても良いでしょう」
そう。もし放っておけば、次には自分に矛先が向くかもしれない。ズルい言い方だが、いざとなればこれでゆすって情報を聞き出すしかないと考えていた。
「そして三つ目は――」
私は、指を三本立てた。
「あの日何が起こったのか、クレイヴ先生が首にされた本当の理由。きっと私達がしたこと以外にも裏側では何か嫌疑をかけられているはずだから、それらの情報を探し出すことよ」
「なるほど……」
マーカスは腕を組み、しばらく考え込んだ。
「……仕方ないですね。僕は貴女と手を組むのは気に食わないですが……クレイヴ先生がいなくなるのはもっと気に食わないので」
「私もよ」
そうして、私たちは――敵同士だったはずの二人は熱く握手を交わし、一時的な共闘を決めたのだった。
******
マーカスと共に行動を開始してから、私たちはまず最初の手がかりを探すことにした。
――クレイヴ先生の懲戒免職を推し進めたのは誰か。
学院の教師陣に聞き込みを行うと、意外にもすぐに一つの名前が浮上した。
リューガス=エルバート。
魔法理論学の教授であり、クレイヴ先生とは同僚だった人物。
しかし、二人が特別仲が悪かったわけではない。むしろ、表向きは普通の友人のような関係に見えた。お昼も何度か一緒に食べているところを見たことがある。
彼が最初に『クレイヴの余罪はまだある』と主張したらしい。学院長に進言したのもリューガスだと。
「……正直、私は納得していないよ。クレイヴはそんなことをするような人間じゃない……けれど、リューガスがあれだけ強く推せば、私たちにはどうしようもなかった。それにあの情報だって――いや、なんでもない。忘れてくれ」
そう最後に言った。ちなみに、この情報をくれたのは、魔法演習の担当教師だった。年配の温厚な人物で、クレイヴ先生のことを信頼していたようだった。それにクレイヴ先生に懐いていた私達のことをずっと熱心な生徒だと気にかけてくれていたらしい。
「しかし、それだけで決定的とは言えませんね」
マーカスが呟く。
「ええ。でも、クレイヴ先生に処分を下すほどの情報と権限を持っていたのが彼なら、次の疑問が生まれるわ」
――なぜ、リューガスはそんなにも早く動けたのか?
クレイヴ先生が私たちの懲戒免職のことを知ったのは、事件発生の2日前。
前日、遅くても朝までに既にクレイヴ先生の懲戒免職は決まっていたと考えられる。
速すぎる。まるで、最初からクレイヴ先生を排除するために、この情報を利用するつもりだったかのように。
「つまり、事前に準備していた可能性が高い……?」
マーカスが呟く。
私たちはさらに聞き込みを続けた。
すると、一人の教師が渋々ながらも口を開いた。
「クレイヴ先生が懲戒免職になった理由は、私達にあるかもしれないんです。お願いです、教えてください。先生の罪を晴らしたいんです」
「……全部は言えん。ただ、彼は『確かな証拠がある』と言っていた」
確かな証拠?
「それは、どんな証拠だったのか聞きましたか?」
「……彼が『クレイヴが生徒に危険な実験をさせていた』と主張していたのは覚えている」
「危険な実験……?」
マーカスが眉をひそめた。
「私たちがしたのは、ただの魔法演習の応用のようなものです。クレイヴ先生が『実験』なんて言うようなことをするはずが……」
「ああ。複合魔法のことだろう。それについては他の教師も認知している。しかし、リューガスがいう証拠とやらは校長にしか共有されていないから、実のところの理由は私達では誰も分からない。助けようがなかった、すまない」
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