38 / 42
37.
しおりを挟む
「なんだか弱くなりました?」
「……私は、喧嘩を売られているのでしょうか」
クレイヴ先生の研究室に入った直後、じろじろとこちらを観察してきたマーカスに唐突に貶された。
私達のやり取りに対して、クレイヴ先生は呆れたようにマーカスを窘めた。
「腕輪のせいだろう。『絶縁の腕輪』。珍しい魔道具だな。大方、スタチュエットの修練のためにつけられているといったところか」
流石にクレイヴ先生は一目見ただけで分かったのだろう。マーカスと違って。
しかし、この腕輪の効果が私の魔力にまで現れているとは思わなかった。ただたんに出力時に力を制御されているのかと思ったが、そうではなく、常に身体全体の魔力を制御されているのかもしれない。
「リーシャ……マーカスもだが、お前たちは魔法の出力制御が苦手だからな。分かっているとは思うが、魔力の制御というのは上手ければ、窮地を脱するほどの力を出せることがある」
「戦闘中に魔力だけで次の動きが読まれてしまうことですよね。マーカスが丸わかりでした」
「え……は??何の話ですか?」
「前に戦った時、私は貴方の魔法を簡単に相殺できました。それは何故でしょうか。学年も習熟度もあなたの方が上であるにも関わらず、です」
マーカスは分かっていないようだが、私は他の人よりも魔力の流れを追うことは得意なようで、魔力の流れで、次の動きや使う魔法が簡単に分かってしまうのだ。複合魔法と使っている場合は詠唱も配合率もオリジナルだが、その中身の配合率がその魔力で分かってしまう故に、打ち消すことも容易にできた。
頭に血が上っていたマーカスは気が付いていなかったようだが。
そこまで説明して、マーカスは顔を赤くして私に文句を言ってきた。
「貴女だけ強くなろうとしてるだなんて、ずるいです。その腕輪を僕にも寄こしてください」
「マーカス、わがままを言うな。魔道具を使わなくても、地道に制御していくことも出来るさ。まあ、魔力が強ければ強いほどに難しくはあるが」
しかしながら、マーカスに対して偉そうに言うほど私も魔力の制御ができているわけではない。
そもそも、私は、相手が避けられないくらいに強い魔法を使ってしまえばいいと考えているようなタイプだった。
しかし――。勝ったとはいえ、リューガスに対してこの手は通じなかった。私よりも強い相手だったからだ。
だからこそ、そういう相手により勝てるように少しでも別の手を講じておくべきだ。それも、スタチュエットの修練以外で今回私が魔力制御に真面目に取り組んでいる理由だ。
マーカスはブーブーと文句を言いながらも、魔力制御の基礎をクレイヴ先生からまずは口頭で伝えられていた。
その近くで、私は様々な魔法を使って身体に弱い魔法を使う感覚を染み込ませていく。
倒れそうなくらいに回数を重ねてから分かってきたことだが、込める魔力を小さくできればできるほどに、身体を襲う疲労感が明確に減っている。
きっとこれが、魔力を制限したうえで規模の小さい魔法を出すという感覚なのだろう。
あと少し、あと少しで何かがつかめそうな気がする。
目の前の掌の上に氷の蝶を出すことに集中する。あの舞台で観た美しい蝶。周囲に冷気が渦巻き、そこに出現する直前――。
「ストップ。そこまでだ」
遠くにいたはずのクレイヴ先生に手を掴まれ、止められる。それと同時に全身から力が抜け、抱きしめるように支えられた。
***
「目を離すとすーぐこれだ。リーシャ、お前本当に死んじまうぞ?今、身体に力が入らないだろ?」
「……そんなことはな――」
否定しようとすると、支えていた手から力が抜かれ、倒れそうになる。すぐに再度同じように支えられて、そのまま近くの椅子に座らせられた。
「そんなことは?」
「ありました」
「お前の母親にも頼まれているんだ。あまり心配かけないようにしてやれ。それに、もしお前に何かがあったら……」
「え?」
クレイヴ先生が無言になり、何かあったのかと顔を上げると、思ったよりも近くにその顔があった。
なんとなく彼の顔を観察する。先生だからと言っても、21歳と私と5つしか変わらない年齢ということもあって他の先生よりもかなり若かった。漆黒の短髪がオールバックという少し見た目の年齢があがるような髪型にされてはいるが、まだ他の教師に比べると若々しかった。しかし何故何も言わないのだろうか。いつも騒がしいマーカスが今は席を外しているようで、少し気まずい。
無言で見つめられて30秒ほど。普段気にしていなかったクレイヴ先生の顔をしっかりと観察できてしまうほどの時間。美しい紫をはめ込んだようなその瞳にジッと見つめられていたが、クレイヴ先生が溜息を吐く。
「お前って危機意識ってものがねえのな」
その急な言葉と共に、額に衝撃が走った。
「っ!!?」
「俺も時々忘れそうになるが、子供なんだから、もう無理はするなよ。じゃなきゃ、俺が監督責任でお前の母親に八つ裂きにされる」
『思ってたより子供だったんだよな』なんて呟きと共に、額を軽く小突かれたようだ。
まだ動けない身体になんてことをするんだと一瞬その理不尽さに憤ったが、母様という名称が出て、約束のことを思い出した。没頭しすぎない。自分の身体と命を最優先にして、父様みたいにはならないこと。忘れかけていたそれをクレイヴ先生が注意し、見守ってくれていたのだ。
あらためて。母様からの言葉を心に刻んで、今日は身体が動くようになり次第、部屋に戻って休もうと思った。
******
X(旧Twitter)におまけ載せています。読まなくても特に物語に支障はないです。クレイヴ視点です。
「……私は、喧嘩を売られているのでしょうか」
クレイヴ先生の研究室に入った直後、じろじろとこちらを観察してきたマーカスに唐突に貶された。
私達のやり取りに対して、クレイヴ先生は呆れたようにマーカスを窘めた。
「腕輪のせいだろう。『絶縁の腕輪』。珍しい魔道具だな。大方、スタチュエットの修練のためにつけられているといったところか」
流石にクレイヴ先生は一目見ただけで分かったのだろう。マーカスと違って。
しかし、この腕輪の効果が私の魔力にまで現れているとは思わなかった。ただたんに出力時に力を制御されているのかと思ったが、そうではなく、常に身体全体の魔力を制御されているのかもしれない。
「リーシャ……マーカスもだが、お前たちは魔法の出力制御が苦手だからな。分かっているとは思うが、魔力の制御というのは上手ければ、窮地を脱するほどの力を出せることがある」
「戦闘中に魔力だけで次の動きが読まれてしまうことですよね。マーカスが丸わかりでした」
「え……は??何の話ですか?」
「前に戦った時、私は貴方の魔法を簡単に相殺できました。それは何故でしょうか。学年も習熟度もあなたの方が上であるにも関わらず、です」
マーカスは分かっていないようだが、私は他の人よりも魔力の流れを追うことは得意なようで、魔力の流れで、次の動きや使う魔法が簡単に分かってしまうのだ。複合魔法と使っている場合は詠唱も配合率もオリジナルだが、その中身の配合率がその魔力で分かってしまう故に、打ち消すことも容易にできた。
頭に血が上っていたマーカスは気が付いていなかったようだが。
そこまで説明して、マーカスは顔を赤くして私に文句を言ってきた。
「貴女だけ強くなろうとしてるだなんて、ずるいです。その腕輪を僕にも寄こしてください」
「マーカス、わがままを言うな。魔道具を使わなくても、地道に制御していくことも出来るさ。まあ、魔力が強ければ強いほどに難しくはあるが」
しかしながら、マーカスに対して偉そうに言うほど私も魔力の制御ができているわけではない。
そもそも、私は、相手が避けられないくらいに強い魔法を使ってしまえばいいと考えているようなタイプだった。
しかし――。勝ったとはいえ、リューガスに対してこの手は通じなかった。私よりも強い相手だったからだ。
だからこそ、そういう相手により勝てるように少しでも別の手を講じておくべきだ。それも、スタチュエットの修練以外で今回私が魔力制御に真面目に取り組んでいる理由だ。
マーカスはブーブーと文句を言いながらも、魔力制御の基礎をクレイヴ先生からまずは口頭で伝えられていた。
その近くで、私は様々な魔法を使って身体に弱い魔法を使う感覚を染み込ませていく。
倒れそうなくらいに回数を重ねてから分かってきたことだが、込める魔力を小さくできればできるほどに、身体を襲う疲労感が明確に減っている。
きっとこれが、魔力を制限したうえで規模の小さい魔法を出すという感覚なのだろう。
あと少し、あと少しで何かがつかめそうな気がする。
目の前の掌の上に氷の蝶を出すことに集中する。あの舞台で観た美しい蝶。周囲に冷気が渦巻き、そこに出現する直前――。
「ストップ。そこまでだ」
遠くにいたはずのクレイヴ先生に手を掴まれ、止められる。それと同時に全身から力が抜け、抱きしめるように支えられた。
***
「目を離すとすーぐこれだ。リーシャ、お前本当に死んじまうぞ?今、身体に力が入らないだろ?」
「……そんなことはな――」
否定しようとすると、支えていた手から力が抜かれ、倒れそうになる。すぐに再度同じように支えられて、そのまま近くの椅子に座らせられた。
「そんなことは?」
「ありました」
「お前の母親にも頼まれているんだ。あまり心配かけないようにしてやれ。それに、もしお前に何かがあったら……」
「え?」
クレイヴ先生が無言になり、何かあったのかと顔を上げると、思ったよりも近くにその顔があった。
なんとなく彼の顔を観察する。先生だからと言っても、21歳と私と5つしか変わらない年齢ということもあって他の先生よりもかなり若かった。漆黒の短髪がオールバックという少し見た目の年齢があがるような髪型にされてはいるが、まだ他の教師に比べると若々しかった。しかし何故何も言わないのだろうか。いつも騒がしいマーカスが今は席を外しているようで、少し気まずい。
無言で見つめられて30秒ほど。普段気にしていなかったクレイヴ先生の顔をしっかりと観察できてしまうほどの時間。美しい紫をはめ込んだようなその瞳にジッと見つめられていたが、クレイヴ先生が溜息を吐く。
「お前って危機意識ってものがねえのな」
その急な言葉と共に、額に衝撃が走った。
「っ!!?」
「俺も時々忘れそうになるが、子供なんだから、もう無理はするなよ。じゃなきゃ、俺が監督責任でお前の母親に八つ裂きにされる」
『思ってたより子供だったんだよな』なんて呟きと共に、額を軽く小突かれたようだ。
まだ動けない身体になんてことをするんだと一瞬その理不尽さに憤ったが、母様という名称が出て、約束のことを思い出した。没頭しすぎない。自分の身体と命を最優先にして、父様みたいにはならないこと。忘れかけていたそれをクレイヴ先生が注意し、見守ってくれていたのだ。
あらためて。母様からの言葉を心に刻んで、今日は身体が動くようになり次第、部屋に戻って休もうと思った。
******
X(旧Twitter)におまけ載せています。読まなくても特に物語に支障はないです。クレイヴ視点です。
550
あなたにおすすめの小説
【完結】六歳下の幼馴染に溺れた夫。白い結婚を理由に離縁を申し立てたら、義弟(溺愛)に全力で求婚されました
恋せよ恋
恋愛
夫が愛でるのは、守ってあげたくなるような「可憐な少女」。
夫が疎むのは、正論で自分を追い詰める「完璧な妻」。
「シンシア、君はしっかりしているから、大丈夫だろう?」
六歳年下の幼馴染ジェニファー子爵令嬢を気遣う貴方。
私たちは、新婚初夜さえ済ませていないのよ?
完璧な家政、完璧な社交。私が支えてきたこの家から、
ニコラス、貴方って私がいなくなったらどうなるか……。
考えたこともないのかしら?
義弟シモンは、学生時代の先輩でもあるシンシアを慕い
兄ニコラスの態度と、幼馴染ジェニファーを嫌悪する。
泣いて縋るあざとい少女と、救世主気取りの愚かな夫。
そして、義姉であるシンシアを慕うシモン。
これは、誇り高き伯爵夫人、シンシアの物語である。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。
木山楽斗
恋愛
幼少期から魔法使いとしての才覚を見せていたラムーナは、王国における魔法使い最高峰の役職である聖女に就任するはずだった。
しかし、王国が聖女に選んだのは第一王女であるロメリアであった。彼女は父親である国王から溺愛されており、親の七光りで聖女に就任したのである。
ラムーナは、そんなロメリアを支える聖女補佐を任せられた。それは実質的に聖女としての役割を彼女が担うということだった。ロメリアには魔法使いの才能などまったくなかったのである。
色々と腑に落ちないラムーナだったが、それでも好待遇ではあったためその話を受け入れた。補佐として聖女を支えていこう。彼女はそのように考えていたのだ。
だが、彼女はその考えをすぐに改めることになった。なぜなら、聖女となったロメリアはとてもわがままな女性だったからである。
彼女は、才覚がまったくないにも関わらず上から目線でラムーナに命令してきた。ラムーナに支えられなければ何もできないはずなのに、ロメリアはとても偉そうだったのだ。
そんな彼女の態度に辟易としたラムーナは、聖女補佐の役目を下りることにした。王国側は特に彼女を止めることもなかった。ラムーナの代わりはいくらでもいると考えていたからである。
しかし彼女が去ったことによって、王国は未曽有の危機に晒されることになった。聖女補佐としてのラムーナは、とても有能な人間だったのだ。
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢ミリーシャは、自身が誰からも必要とされていないことを悟った。
故に彼女は、家から出て行くことを決めた。新天地にて、ミリーシャは改めて人生をやり直そうと考えたのである。
しかし彼女の周囲の人々が、それを許さなかった。ミリーシャは気付いていなかったのだ。自身の存在の大きさを。
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
【完】王妃の座を愛人に奪われたので娼婦になって出直します
112
恋愛
伯爵令嬢エレオノールは、皇太子ジョンと結婚した。
三年に及ぶ結婚生活では一度も床を共にせず、ジョンは愛人ココットにうつつを抜かす。
やがて王が亡くなり、ジョンに王冠が回ってくる。
するとエレオノールの王妃は剥奪され、ココットが王妃となる。
王宮からも伯爵家からも追い出されたエレオノールは、娼婦となる道を選ぶ。
一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」
結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。
彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。
身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。
こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。
マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。
「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」
一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。
それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。
それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。
夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる