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翌日から、私は学院で妙な扱いを受けるようになった。
廊下を歩けば、すれ違う生徒たちはひそひそと小声で話し、私と目が合うとすぐに逸らす。教室に入れば、以前は何気なく交わしていた挨拶さえなく、皆が遠巻きに私を見ていた。
当然だろう。昨日、母親付きで職員室に呼び出された生徒なんて、この善良な生徒ばかりの学院生活ではなかなかいない。しかも、私が関わったのは魔法の授業中に魔物を一方的に血まみれにするという事件だ。まるで、とんでもない不良生徒を見るような目を向けられるのも無理はない。
とはいえ、そこまで気にしていたわけではなかった。むしろ、余計な関わりが減るのは好都合でもある。
そんな中で、唯一、私に声を掛けてくる人物がいた。
「……ねえ、大丈夫なの?」
「コリアンナ=ルルーフ?」
ふわりとした波打つ亜麻色の髪をした少女、コリアンナが私の机の前に立っていた。彼女は特に親しいわけではなかったが、同じ魔法科の生徒で、これまで以前話しかけてきた……どちらかと言えば私と同じようにクラスから浮いているタイプの女生徒である。
「噂になってるけど……なんだか退学寸前の要注意生徒って聞こえてきているわよ?」
「あー、それ嘘ですね。注意されただけなので。噂が独り歩きしているのでしょう」
「ふーん、まあ、いいわ。……お昼、一緒に食べない?」
意外な申し出だったが、断る理由もなかった。むしろ、一人で食堂に行くとさらに目立つだろうし、適当に流してしまう方が楽だった。
「いいわよ」
そんなわけで、私はコリアンナと一緒に食堂へ向かった。
******
食堂では、やはり周囲の視線が痛いくらいに突き刺さった。けれど、コリアンナが特に気にした様子もなく、普通の友人に話すような調子で話してくれるおかげで、そこまで居心地は悪くなかった。
そんな時――。
「リーシャ」
突然、聞き慣れた声がした。
視線を向けると、そこにはオーランドが立っていた。
彼は少し難しい顔をして、私をじっと見つめていた。
「……問題を起こしたみたいだけど、大丈夫なのか?」
その問いに、私はほんの少しだけ目を細めた。
――なるほど、そういうことか。
オーランドは決して、問題を起こした私の精神や肉体を心配しているわけではない。
彼は私の婚約者だ。そんな私が問題を起こせば、当然、彼の評判にも影響が出る。そうなれば、彼の周囲の監視は厳しくなり、今までのように好き勝手遊ぶことも難しくなる。彼の遊びは両親にすらバレてしまうかもしれない。もしかしたら公然なのかもしれないが。
とにかく目立つのは得策ではないだろう。
要するに、私が余計なことをしないように釘を刺しにきたのだろう。
「安心して大丈夫ですよ、オーランド様」
私は静かに口を開く。
「これ以上、あなたに迷惑をかけることはないからので。だから、好きに遊んでいてください」
そう言うと、オーランドは僅かに眉をひそめた。
「遊ぶ? 何のことだ?」
とぼけるつもりらしい。
きっと、周囲の生徒が聞いているからだろう。彼のような立場の人間が「遊んでいる」などと噂になれば、それこそ大ごとになる。
私は半ば呆れながら、彼を見つめた。
「そう……なら、それでいいです。とにかく、貴方が心配する必要はありません」
それ以上何かを言うつもりもなかったので、私は視線を戻し、再び食事を続けた。
オーランドは少しだけこちらを見ていたが、やがて、ムッとしたような顔で踵を返して食堂を後にする。
私は何事もなかったかのように、食事を続けた。
コリアンナはそんな私の様子をちらりと見て、眉をひそめて言った。
「なんだか、いろいろ大変そうね」
「……まあ、ね」
私は苦笑しながら、手元の食事に再度視線を落とした。
廊下を歩けば、すれ違う生徒たちはひそひそと小声で話し、私と目が合うとすぐに逸らす。教室に入れば、以前は何気なく交わしていた挨拶さえなく、皆が遠巻きに私を見ていた。
当然だろう。昨日、母親付きで職員室に呼び出された生徒なんて、この善良な生徒ばかりの学院生活ではなかなかいない。しかも、私が関わったのは魔法の授業中に魔物を一方的に血まみれにするという事件だ。まるで、とんでもない不良生徒を見るような目を向けられるのも無理はない。
とはいえ、そこまで気にしていたわけではなかった。むしろ、余計な関わりが減るのは好都合でもある。
そんな中で、唯一、私に声を掛けてくる人物がいた。
「……ねえ、大丈夫なの?」
「コリアンナ=ルルーフ?」
ふわりとした波打つ亜麻色の髪をした少女、コリアンナが私の机の前に立っていた。彼女は特に親しいわけではなかったが、同じ魔法科の生徒で、これまで以前話しかけてきた……どちらかと言えば私と同じようにクラスから浮いているタイプの女生徒である。
「噂になってるけど……なんだか退学寸前の要注意生徒って聞こえてきているわよ?」
「あー、それ嘘ですね。注意されただけなので。噂が独り歩きしているのでしょう」
「ふーん、まあ、いいわ。……お昼、一緒に食べない?」
意外な申し出だったが、断る理由もなかった。むしろ、一人で食堂に行くとさらに目立つだろうし、適当に流してしまう方が楽だった。
「いいわよ」
そんなわけで、私はコリアンナと一緒に食堂へ向かった。
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食堂では、やはり周囲の視線が痛いくらいに突き刺さった。けれど、コリアンナが特に気にした様子もなく、普通の友人に話すような調子で話してくれるおかげで、そこまで居心地は悪くなかった。
そんな時――。
「リーシャ」
突然、聞き慣れた声がした。
視線を向けると、そこにはオーランドが立っていた。
彼は少し難しい顔をして、私をじっと見つめていた。
「……問題を起こしたみたいだけど、大丈夫なのか?」
その問いに、私はほんの少しだけ目を細めた。
――なるほど、そういうことか。
オーランドは決して、問題を起こした私の精神や肉体を心配しているわけではない。
彼は私の婚約者だ。そんな私が問題を起こせば、当然、彼の評判にも影響が出る。そうなれば、彼の周囲の監視は厳しくなり、今までのように好き勝手遊ぶことも難しくなる。彼の遊びは両親にすらバレてしまうかもしれない。もしかしたら公然なのかもしれないが。
とにかく目立つのは得策ではないだろう。
要するに、私が余計なことをしないように釘を刺しにきたのだろう。
「安心して大丈夫ですよ、オーランド様」
私は静かに口を開く。
「これ以上、あなたに迷惑をかけることはないからので。だから、好きに遊んでいてください」
そう言うと、オーランドは僅かに眉をひそめた。
「遊ぶ? 何のことだ?」
とぼけるつもりらしい。
きっと、周囲の生徒が聞いているからだろう。彼のような立場の人間が「遊んでいる」などと噂になれば、それこそ大ごとになる。
私は半ば呆れながら、彼を見つめた。
「そう……なら、それでいいです。とにかく、貴方が心配する必要はありません」
それ以上何かを言うつもりもなかったので、私は視線を戻し、再び食事を続けた。
オーランドは少しだけこちらを見ていたが、やがて、ムッとしたような顔で踵を返して食堂を後にする。
私は何事もなかったかのように、食事を続けた。
コリアンナはそんな私の様子をちらりと見て、眉をひそめて言った。
「なんだか、いろいろ大変そうね」
「……まあ、ね」
私は苦笑しながら、手元の食事に再度視線を落とした。
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