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ダンスを回避しても、地獄は続いていた。
私は何故か右をカイン、左を兄様という両サイドを固められる形で食事を摂っている。
本音としては、あの後すぐにでも壁の花になりたかったのだが、二人がそれを許してくれなかったのだ。
今回は歓迎会的なこともあって、ダンスではなく会話などがメインの夜会のため、軽食も量が多めで一つ一つ質が高いものが多い。それを誘い文句にして、あれよあれよとここまで連れてこられてしまった。
一つ回避しても、また別のところで問題が発生する。しかしダンスするよりはマシなので、耐えるしかないというのも事実だった。
「あれ?ナーシャ、君、食事の好みが変わったのかい?毎回出ていれば、食器をも食い尽くす勢いで食べていたオイスターに全く手を付けてないじゃないか」
「へ?ああ、オイスター……ですね。お腹をくだしーーいえ、くだすことがあるというのを少し前に本で読んだので、今日は控えているだけです。折角のカイン様の大切な歓迎会に体調を崩したくないので、我慢しているんです」
「……そうか」
大嘘だ。またカインが顔を少し赤らめてそっぽを向いたような気がするが、見なかったことにしておく。
最近、着々と嘘を吐くスキルが上がっているような気がする。前回の生で、ある程度社交の経験を積んでいたこともあり、明らかに実際のこの頃の年齢の人間よりは口が上手くなっていた。
ペラペラと特に思ってもないことが口から自然と出てしまい、特に上げたくもない好感度が上がっているが、とりあえず誤魔化せているから良しとしたい。
とにかく私はこの歳ではまだオイスターの事を愛していたが、彼(?)とは既に決別している。
あれは、忘れもしない16歳の誕生日に開かれた誕生日パーティー。
あのパーティーで私の私だけのために用意された100近いオイスター達をバカ食いした結果、オイスターにあたったようで、腹を下して一ヶ月寝込むという結果に陥った。しかもその間ずっと死地を彷徨ったのだ。そりゃ、いくら大好きだったとしても嫌いになるだろう。
でもこうやって、ちょいちょい何かの不得手やら、食の好みやらが変わってしまっているのは中々に厄介だ。しかもこの兄は私のことを細かく観察していることもあり、何か不審な点があればすぐに質問してくる。
今回はテキトーにカインの事をダシにして逃げたが、またあの災厄を食べさせられるかもしれないということを考えたら、寒気がする。
死に戻りして、カインの次くらいに大きな壁かもしれない。大袈裟かもしれないが。
「そういえば。カイン様は、お好きな料理や食べ物などはありますか?」
「俺、か?俺は……肉料理が好きだな」
ちらりとスイートポテトやブルーベリーのスコーンなどが置かれているコーナーに一瞬目を向けたあとにカインがそう答える。
それを見て、思い出した。カインは絶対に口には出すことがないが、甘いものが大好きであったことを。
きっと男が甘いものを好きなのはダサいだの男らしくないだのと思っているのだろう。しかし私は彼がこっそりと甘い物を注文して食べていたことを知っている!そしてその顔が肉料理を食べている時など比べ物にならないくらいに綻び、甘い笑みを浮かべていたことも!
だって、彼と出会ってから殆どの時間をストーキングに費やしていたんだもの!!我ながら、人生を無駄にしていたと思う。
……と言っても、私が彼の好みをここで知っているのもおかしな話なので、どうせなら軽く嫌われて婚約を諦めてもらうためと嫌がらせついでに目の前で彼の好物――甘味を片っ端から食べ尽くしてやろうと、国産のさつまいもで作られたスイートポテトを手にした時のことだ。
地響きのような大きさの警報音が周囲に鳴り響き、会場の天井付近に設置された赤い魔導ランプが点滅する。
「モンスターの襲撃だ!!」
その言葉が会場に響き渡った瞬間、私達の周囲は結界に包まれた。
私は何故か右をカイン、左を兄様という両サイドを固められる形で食事を摂っている。
本音としては、あの後すぐにでも壁の花になりたかったのだが、二人がそれを許してくれなかったのだ。
今回は歓迎会的なこともあって、ダンスではなく会話などがメインの夜会のため、軽食も量が多めで一つ一つ質が高いものが多い。それを誘い文句にして、あれよあれよとここまで連れてこられてしまった。
一つ回避しても、また別のところで問題が発生する。しかしダンスするよりはマシなので、耐えるしかないというのも事実だった。
「あれ?ナーシャ、君、食事の好みが変わったのかい?毎回出ていれば、食器をも食い尽くす勢いで食べていたオイスターに全く手を付けてないじゃないか」
「へ?ああ、オイスター……ですね。お腹をくだしーーいえ、くだすことがあるというのを少し前に本で読んだので、今日は控えているだけです。折角のカイン様の大切な歓迎会に体調を崩したくないので、我慢しているんです」
「……そうか」
大嘘だ。またカインが顔を少し赤らめてそっぽを向いたような気がするが、見なかったことにしておく。
最近、着々と嘘を吐くスキルが上がっているような気がする。前回の生で、ある程度社交の経験を積んでいたこともあり、明らかに実際のこの頃の年齢の人間よりは口が上手くなっていた。
ペラペラと特に思ってもないことが口から自然と出てしまい、特に上げたくもない好感度が上がっているが、とりあえず誤魔化せているから良しとしたい。
とにかく私はこの歳ではまだオイスターの事を愛していたが、彼(?)とは既に決別している。
あれは、忘れもしない16歳の誕生日に開かれた誕生日パーティー。
あのパーティーで私の私だけのために用意された100近いオイスター達をバカ食いした結果、オイスターにあたったようで、腹を下して一ヶ月寝込むという結果に陥った。しかもその間ずっと死地を彷徨ったのだ。そりゃ、いくら大好きだったとしても嫌いになるだろう。
でもこうやって、ちょいちょい何かの不得手やら、食の好みやらが変わってしまっているのは中々に厄介だ。しかもこの兄は私のことを細かく観察していることもあり、何か不審な点があればすぐに質問してくる。
今回はテキトーにカインの事をダシにして逃げたが、またあの災厄を食べさせられるかもしれないということを考えたら、寒気がする。
死に戻りして、カインの次くらいに大きな壁かもしれない。大袈裟かもしれないが。
「そういえば。カイン様は、お好きな料理や食べ物などはありますか?」
「俺、か?俺は……肉料理が好きだな」
ちらりとスイートポテトやブルーベリーのスコーンなどが置かれているコーナーに一瞬目を向けたあとにカインがそう答える。
それを見て、思い出した。カインは絶対に口には出すことがないが、甘いものが大好きであったことを。
きっと男が甘いものを好きなのはダサいだの男らしくないだのと思っているのだろう。しかし私は彼がこっそりと甘い物を注文して食べていたことを知っている!そしてその顔が肉料理を食べている時など比べ物にならないくらいに綻び、甘い笑みを浮かべていたことも!
だって、彼と出会ってから殆どの時間をストーキングに費やしていたんだもの!!我ながら、人生を無駄にしていたと思う。
……と言っても、私が彼の好みをここで知っているのもおかしな話なので、どうせなら軽く嫌われて婚約を諦めてもらうためと嫌がらせついでに目の前で彼の好物――甘味を片っ端から食べ尽くしてやろうと、国産のさつまいもで作られたスイートポテトを手にした時のことだ。
地響きのような大きさの警報音が周囲に鳴り響き、会場の天井付近に設置された赤い魔導ランプが点滅する。
「モンスターの襲撃だ!!」
その言葉が会場に響き渡った瞬間、私達の周囲は結界に包まれた。
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