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大筋しか覚えていないが、その物語ではこの国出身の男の子が主人公であり、婚約者が死ぬという運命に逆らい続ける話だ。
何度も何度も婚約者が死んでしまう度に、彼の身体は過去に戻る。そしてその話でその男の子が運命を変える度に、必ず不思議な力で運命を変えた『代償』とでもいうようにペナルティが与えられた。
物語上では、男の子の両親が魔物に襲われて命を落としたり、男の子自体が急に目の前に現れた魔物に襲われて生死の境目を彷徨ったり、左腕や片目をあり得ない事象で起こった事故で失ったりなどしていた。最終的に運命を変え、婚約者の命を守ることが出来た男の子だが、彼女が死ぬ可能性を極限まで排除し続けた結果、彼女は既に男の子の婚約者ではなかった。男の子と婚約しない未来が一番死ぬ確率が低かったからだ。
あまりにも救いがないラストに、お兄さんの嫌がらせか?私は初対面のはずなのにそんなに嫌われているのか??とまで思ったが、お兄さんは『人間、全てを手に入れるなんてこと出来ないんだよ』と言って、悲しそうに微笑んでいた。
立場は違うが、婚約者が死ぬ度に、何度も戻り続けるという主人公の状況に今の自分が重なる。何故今まで思い出せなかったのだろう、というレベルだ。そしてそのペナルティの部分にもなんとなく心当たりがあった。
昨日の夜会の時。本来であれば、私が紆余曲折というか私が一方的に迫りに迫ったという事実があったと言えど、私とカインが初めてダンスのパートナーになって踊ったという思い出深い日だった。
そして周囲からもファーストダンスのパートナーを組むような仲であると認識された日。ここは正確には事実と異なっていたが。後は――。
私、あの夜会の後、カインに『結婚してください!』って結婚の申し込みをしたような気がする……。
そう。ファーストダンスのパートナーになり、カインに張り付き続けて他の女の子との社交を邪魔しまくった挙句、私は彼に部屋に送ってと駄々をこねたのだ。そして送ってもらった部屋の前で、愛の告白――既にその段階で2桁回はしていたが――をした。この時は結婚という約束を付けて。
このことを思い出した瞬間、恥ずかしさで転げまわりそうになった。
けれどこの場でそんな行動を取ったら、更なる恥をかくのは私だ。前回の生から培われた精神力を全力投入して、なんとかそれを堪えた。
一瞬、恥ずかしさで冷静さを失いはしたが、よくよく考えてみればペナルティが起こるのは運命を大きく変えた時だと仮定するとして、何故昨日だけだったのだろう。だって今回一番運命が大きく変わったとしたら、私がカインとの婚約時に気絶し、その後兄様が婚約の話をなかったことにした時であろう。
私の今の予想が正しいのであれば、その日にはなにも起こっていないわけがない。
正直当たって欲しくない予想だったが、口に出さずにはいられなかった。
「父様、この魔物の侵入は初めてではないですよね?私が倒れた日、その日にも同様のことが起こったのではないですか?」
魔物の侵入についての仮定は全て私の予想でしかなく、代償も存在しない。
そんな妄想を抱いたが、それに意味はなく、父の言葉がむしろ私の現実逃避を不可能にした。
「アナスタシア、お前は相変わらず妙なところで勘が良いな。これはユーリだけに話そうと思っていた事だが、その日、私とベアトが魔物に襲われた。急に目の前に現れたんだ。だから兵達が言ったこともすぐに信じられた」
「っそう、だったのですね。父様も母様も無事でよかったです」
この城の警備システム上、厄災レベルのことが起こらなければ、王族に危害が加わるなんてことはあり得ない。そう知っていても、やはり無事であることに安堵するし、襲われたと聞けば心配もする。
それになにより、私の予想がほぼ確定となってしまったのだ。
私は今後どうやってカインを避ければ良いのだろう。
兄様とラウルが父様にその時の詳細を聞いているのを少し遠くから見つめながら、この後の事を考えて胃が重くなったような気がした。
何度も何度も婚約者が死んでしまう度に、彼の身体は過去に戻る。そしてその話でその男の子が運命を変える度に、必ず不思議な力で運命を変えた『代償』とでもいうようにペナルティが与えられた。
物語上では、男の子の両親が魔物に襲われて命を落としたり、男の子自体が急に目の前に現れた魔物に襲われて生死の境目を彷徨ったり、左腕や片目をあり得ない事象で起こった事故で失ったりなどしていた。最終的に運命を変え、婚約者の命を守ることが出来た男の子だが、彼女が死ぬ可能性を極限まで排除し続けた結果、彼女は既に男の子の婚約者ではなかった。男の子と婚約しない未来が一番死ぬ確率が低かったからだ。
あまりにも救いがないラストに、お兄さんの嫌がらせか?私は初対面のはずなのにそんなに嫌われているのか??とまで思ったが、お兄さんは『人間、全てを手に入れるなんてこと出来ないんだよ』と言って、悲しそうに微笑んでいた。
立場は違うが、婚約者が死ぬ度に、何度も戻り続けるという主人公の状況に今の自分が重なる。何故今まで思い出せなかったのだろう、というレベルだ。そしてそのペナルティの部分にもなんとなく心当たりがあった。
昨日の夜会の時。本来であれば、私が紆余曲折というか私が一方的に迫りに迫ったという事実があったと言えど、私とカインが初めてダンスのパートナーになって踊ったという思い出深い日だった。
そして周囲からもファーストダンスのパートナーを組むような仲であると認識された日。ここは正確には事実と異なっていたが。後は――。
私、あの夜会の後、カインに『結婚してください!』って結婚の申し込みをしたような気がする……。
そう。ファーストダンスのパートナーになり、カインに張り付き続けて他の女の子との社交を邪魔しまくった挙句、私は彼に部屋に送ってと駄々をこねたのだ。そして送ってもらった部屋の前で、愛の告白――既にその段階で2桁回はしていたが――をした。この時は結婚という約束を付けて。
このことを思い出した瞬間、恥ずかしさで転げまわりそうになった。
けれどこの場でそんな行動を取ったら、更なる恥をかくのは私だ。前回の生から培われた精神力を全力投入して、なんとかそれを堪えた。
一瞬、恥ずかしさで冷静さを失いはしたが、よくよく考えてみればペナルティが起こるのは運命を大きく変えた時だと仮定するとして、何故昨日だけだったのだろう。だって今回一番運命が大きく変わったとしたら、私がカインとの婚約時に気絶し、その後兄様が婚約の話をなかったことにした時であろう。
私の今の予想が正しいのであれば、その日にはなにも起こっていないわけがない。
正直当たって欲しくない予想だったが、口に出さずにはいられなかった。
「父様、この魔物の侵入は初めてではないですよね?私が倒れた日、その日にも同様のことが起こったのではないですか?」
魔物の侵入についての仮定は全て私の予想でしかなく、代償も存在しない。
そんな妄想を抱いたが、それに意味はなく、父の言葉がむしろ私の現実逃避を不可能にした。
「アナスタシア、お前は相変わらず妙なところで勘が良いな。これはユーリだけに話そうと思っていた事だが、その日、私とベアトが魔物に襲われた。急に目の前に現れたんだ。だから兵達が言ったこともすぐに信じられた」
「っそう、だったのですね。父様も母様も無事でよかったです」
この城の警備システム上、厄災レベルのことが起こらなければ、王族に危害が加わるなんてことはあり得ない。そう知っていても、やはり無事であることに安堵するし、襲われたと聞けば心配もする。
それになにより、私の予想がほぼ確定となってしまったのだ。
私は今後どうやってカインを避ければ良いのだろう。
兄様とラウルが父様にその時の詳細を聞いているのを少し遠くから見つめながら、この後の事を考えて胃が重くなったような気がした。
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