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第3章〜カイン学園編〜
第33話。入学試験-発表-
しおりを挟むカイン学園、職員会議室。そこに集まった教師達は、合格者選びに勤しんでいた。
「学園長、こちらが今年の受験生約1000人から振るいにかけて残った、100人の点数表です」
「今回も有望そうな子供達が集まっておるのぅ。テスト満点が2人もおるわぃ。して、実技の点数も……ほう! これは凄い。満点が2人にそれを超えた者も2人とは、良き種が揃っておる」
長く白い顎髭が年齢を感じさせる老人が、声を綻ばせて嬉しそうに話す。そこに、教師の1人か進み出て発言する。
「学園長。そのエミルって受験者、種族がハーフエルフだったんだ。試験中に怪我したんで保健室まで連れていったら、もう治っていやがった」
「なっ? リカルド、それは本当ですか!」
「本当よ、びっくりしちゃったにゃあ~」
「ほほぅ。思い当たる節がないわけではいないが、それを探るのはこの学園の主義に反するのぅ」
「あらあら……楽しい1年になりそうねぇ」
教師達による合格者選びは続く……。
天気は快晴。午前9時のカイン学園昇降口前。100人くらいの子供達が集まっている。
「なんか人数多くない? 本試験受けたのって50人とかじゃなかったっけ?」
「確かにそうね。一体どういうことかしら?」
「気になるけど……そういえば、アリスが居ないね」
「見当たらないわね。まだ来てないんじゃない?」
アリスが来る前に、事務員らしき人が、大きなボードを2人がかりで持って来てしまった。
「きっきんっ、きんちょうするわ!」
「ルーシィなら大丈夫だよ。だってあんなに頑張ってたんだし、俺が保証する。だから、ね?」
「……うん」
あんまりにも不安そうにしているので手を握ってあげたら、感電したみたいに飛び跳ねたのでちょっと心配してしまった。しかし、すぐに握り返してきたので一安心だ。
「名前のある者が合格者です。筆記と実技の合計点数順に、左上から縦に並んでいます」
事務員はそれだけ言って、俺達に見えるように昇降口の上部に設置されたフックにボードを引っ掛けた。
「俺は……あった」
「あたしは、あたしは……あれ、ない? あっ! あった、あったわよ!」
「やったね! 良かった!」
ハイタッチして、お互いの合格を喜びあった。30名中、俺の名前は予測していたというかなんというか、一番左上に。ルーシィのは真ん中辺りにあった。そして、少し気になる名前を見つけた。
「サラシャ……」
「え? 何か言った?」
もしあの彼女の名前なら、きっと物凄く目立ってるはずだ。けれど、そんな女の子は居ない。多分名前が同じだけだろう。
「ううん、なんでもないよ。それよりあっちで入学手続きやってるみたいだし、早く済ませよう」
昇降口の右側に、多分合格者であろう子供が並んでいた。すぐに俺達の順番が来て書類を渡され、手早く記入していく。メインは入学書と入寮書。今から寮に入っても大丈夫なようだ。宿屋の女将さんとリアには別れを済ませているし、そのまま寮に行ってしまおう。
書き終わった書類を提出すると、大きく膨らんだ手提げ袋、地図、予定表を渡された。
「えっと、男子寮は……」
「これじゃない? 女子寮もすぐ隣にあるわ。分かってはいたけどちゃんと男女別々の寮なのね」
「ホントだ。まぁ、この学園は身分が関係ないとはいえ、貴族の子女もいるからそうなってるんだと思うよ」
そういえば、先程集まっていた100人の半数近く……特に試験中に見かけなかった顔が立派な服を来ていたような気がする。もしかしたら、貴族は試験会場が別なのかもしれない。
「エミル、ここじゃない?」
「そうみたいだね。はいコレ、ルーシィの荷物」
宿屋から無限収納袋に入れて持ってきていたルーシィの所持品をまとめて渡す。それほど多くはないので彼女1人でも十分持てた。
「この予定表だと……明日は午前10時から入学式だって。一緒に行く?」
「もちろんよ! 20分前に寮の前で待ってるわ!」
「わかった、迎えに行くね」
ルーシィと別れ、男子寮の中へ。玄関から入ってすぐに受付らしき場所に行くと、恰幅のいい40代の女性が居た。
「初めまして、新入生のエミルです」
「初めまして、あたしは寮母のジェンナさ。困ったことがあったらなんでも聞きな。ここは1階に初等部、2階に中等部、3階に高等部の生徒が暮らしてる。エミルの部屋は1階の108号室だ。もう同室の子が居るけど仲良くやるんだよ」
「はい、ありがとうございます」
早速108号室へ。男子同士ではあるが、ノックしてから入室する。鍵はかかっていない……というか、鍵穴自体がなかった。
「初めまして! 僕はミシェルって言うんだ、よろしくね。君は?」
天使が、居た。天族とかって意味じゃなくて、可愛らしいって意味でだ。俺自身も相当綺麗な顔をしている自覚はあるが、目の前の彼は系統が違う。試験では居なかったから別会場で受けた貴族? だろうか。
「俺はエミル。3年間よろしくね。机とベッドはどうする?」
ドアから入って左側に2段ベッドがあり、右側に机が2つ並んでいた。ミシェルも来たばかりのようで、どちらにも荷物は置かれておらず、手に持ったままだった。
「うーん、ベッドは上がいいな! 僕がベッド選んだから机はエミル君が選んで!」
「エミルでいいよ。俺が下のベッドだね。机は……窓際使ってもいいかな?」
「いいよ! 僕もミシェルって呼んで! ねぇねぇ、ちょっと探検しにいかない?」
探検か。ちょっと子供っぽい気がするが、ミシェルは中身も子供なのだから当然だ。俺も一応子供だし、行ってみてもいい気がする。
「行ってみようかな。でも寮の外に出てもいいの?」
「外には行かないよ、寮の中だけ。3階まであるみたいだから、行ってみたくなっちゃって」
ちょっと安心した。部屋から出るなとは言われてないし、問題ないだろう。
早速108号室を出てまずは1階を回ってみる。奥には広い食堂やお風呂場、洗濯室など色々あった。
2階には食堂などがない代わりソファやテーブルがセッティングされた場所が沢山あり、中等部の人達が集まって勉強していた。
3階は2階とほぼ同じ造りだったのだが、一つ違う部屋を見つけた。
「ここ、なんだろうね。なんとなく開けちゃいけないような気がするのは俺だけかな」
「なんだろねぇ。でも気になるし開けちゃおうよ!」
子供の好奇心とは恐ろしい。まさかいきなり開けるとは思わなかったので止めるのが間に合わなかった。
「誰だ? って、新入生?」
「おや、可愛らしいお客様だね。いらっしゃい、お茶でも飲んでいくかい?」
部屋の中にはどことなく高貴さ漂う15、6歳の少年と、その彼と同い年に見える騎士の雰囲気を纏った少年がおり、少し驚いた顔で俺達を見ていた。
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