白の魔法少女―届いたのは「白い封筒(不合格)」。それでも私は、血塗られた戦場に立つ―

流瑠々

文字の大きさ
99 / 109

第99話 逆襲のとき

しおりを挟む


「もうあなただけよ……! セラフィナ!!」

しずくの声が、玉座の間に凛と響き渡る。

 姉を見送った涙はもう乾いていた。

今、彼女の瞳にあるのは、悲劇の元凶を断つという揺るぎない決意だけ。


「……チッ」


セラフィナが不快そうに舌打ちをする。

 その美しい顔が、初めて苛立ちで歪んでいた。


「なぜ……。なぜなのよ」


彼女の周囲に漂う闇のオーラが、不安定に揺らめいている。


「エリスも、セレスも瑠璃も……私が手塩にかけて作り上げた最高傑作たちだったのに。 なぜ、こんな虫けらごときに後れを取るの!?」


セラフィナが苛立ちまぎれに手を振るう。

 漆黒の衝撃波が放たれるが、その軌道はどこか雑で、精彩を欠いていた。


「おらよっと!」


リサが大剣を無造作に振り回し、衝撃波を打ち消す。


「どうした神さんよぉ! 
さっきまでの威勢はどうした?なんだか動きが鈍いんじゃねぇのか!?」


「……なめるな、下等生物がッ!!」


リサの挑発に、セラフィナが激昂する。
 彼女が両手を掲げると、天井の空間が歪み、巨大な重力球が生成された。


「消えなさい! 塵一つ残さず!!」


ドゴォォォォォォォォォン!!!!!


重力球が炸裂する。 玉座の間全体が押し潰されるような圧力。

 床が抜け、柱がへし折れる。


「くっ……!」


しずくは盾を構え、耐える。 腐っても神を名乗るだけのことはある。

その出力は依然として桁違いだ。


「バカ! あまり煽るなリサ!」


クラウディアが氷の障壁を展開し、余波を防ぎながら怒鳴る。


「怒りで冷静さを欠かせるのは定石だが……コイツの場合、
単純に出力が馬鹿高いんだ! 藪蛇になりかねんぞ!」


「へへっ、わりぃわりぃ! でもよぉクラウディア、お前も気づいてんだろ?」


リサが口元の血を拭い、ニヤリと笑う。

「コイツの攻撃……軽いぜ」

「……なに?」


セラフィナの手が止まる。



 軽いだと? この私が?



 神の力を手に入れた、この私の攻撃が?


「ありえない……。私の力は無限のはず……」



セラフィナが自分の手を見つめる。



 違和感。



 先ほどからずっと感じていた、体の芯が冷えるような感覚。

 魔力が思うように練り上げられない。

 それどころか、体内の魔力が、
どこか別の場所へ向かって吸い出されているような……。


「……まさか」


セラフィナの顔色が蒼白になる。
 彼女は慌てて、魔力の接続先――「生命の間」へと意識を向けた。


そこにあるはずの「空っぽの器」。

 彼女がエネルギーを搾り取った後の、抜け殻のコア

だが今、その核は赤く脈打ち、猛烈な勢いで回転していた。

 逆回転リバースで。


「魔素が……吸われている……!?」


セラフィナが愕然とする。

 核が再起動し、システムの主導権を奪い返しているのだ。 

そして、未だ核とリンクしていたセラフィナの体から、

奪った魔力を回収し始めている。


「ようやく効いてきたか!」


リサが得意げに大剣を肩に担ぎ直す。


「リサさん……いったい何を……?」


しずくが驚いて問う。 リサは鼻の下を擦り、親指で床下を指差した。


「核の再起動だよ!アヤメたちに手伝ってもらってな。
 空っぽの核を無理やり叩き起こしてやったんだ!」


「叩き起こしたって……」


「お前と核のリンクが切れてないのは誤算だっただろうがな、セラフィナ! 
お前がユナイトアークを食い物にしたように、
今度はユナイトアークがお前を食ってるんだよ!」


「……ふざけるな」


セラフィナの全身がわななく。 プライドが、計画が、音を立てて崩れていく。


「ふざけるなぁぁぁぁぁッ!!!」


ドオォォォォォォォン!!


セラフィナの絶叫と共に、周囲の瓦礫が弾け飛ぶ。 

それは神の威厳などかなぐり捨てた、ただの癇癪だった。


セラフィナが髪を振り乱し、血走った目で三人を睨みつける。


「神の邪魔をするな! 私が……私がこの世界のルールになるのよ!
 誰にも私の輝きは止めさせない!!」


セラフィナの背中から、どす黒い翼のような闇が噴出する。

 魔力の流出を止めるため、彼女はなりふり構わず、

自身の生命力すら魔力に変換し始めたのだ。


「貴様らを殺し……もう一度生命の間に向かう! 
そして核を破壊し、全ての魔力を私が喰らい尽くしてやるわ!!」


セラフィナが地を蹴る。 標的は、道を塞ぐ三人。


「来るぞ!!」


クラウディアが氷剣を構え、冷気を纏う。

 その瞳は、絶対零度の冷徹さで敵を見据えている。


「やれるもんならやってみろ!! テメェの野望は、ここで終わりだ!!」


リサが炎を燃え上がらせ、一歩前に出る。

 その背中は、頼れる先輩の背中だ。

そして、中央。 しずくが、姉から託された力と共に、盾を構える。

「絶対……ここは通さないッ!!」

三人の魔力が重なり合い、巨大な防壁となって立ちはだかる。


最終決戦。 神を騙る怪物と、人の意志を継ぐ魔法少女たち。

 ユナイトアークの頂上で、最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです

天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。 その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。 元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。 代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

吸血鬼嫌いの吸血鬼、ヴィルヘルミナ

takahiro
ファンタジー
首を落とされても心臓を突かれても一瞬にして再生する、絶対の不死性を持つ吸血鬼、ヴィルヘルミナ。 遥か古代より存在し続ける彼女は、ある時は国を動かし歴史を変え、ある時は死にかけの人間を拾い、ある時は人間の野望に巻き込まれ、気の向くままに世界を放浪していた。 人間を見境なく喰らう連中が大嫌いなヴィルヘルミナは、ことある事に吸血鬼と対立し、各地で闘争を繰り広げる。 人間と関わることを好む異端の吸血鬼は、数え切れない人間と接し、そして数多の人間の死に様を目の当たりにする。 吸血鬼ヴィルヘルミナの目が映す、数知れない人々の紡ぐ大河ファンタジーが今、幕を開ける。 ======【第一部 13世紀編】ヴィルヘルミナは吸血鬼を戦争に使っているバカがいると耳にし、400年前に魔王を倒した勇者の末裔、ポメレニア辺境伯アドルフを訪ねる。どうやら吸血鬼を投入しているのは辺境伯ではなく彼の敵、諸種族連合軍の方らしい。吸血鬼が現れた場合のみの協力を約束しつつ、ヴィルヘルミナは辺境伯アドルフと行動を共にすることにした。吸血鬼との戦いの行く末、そして辺境伯が望む未来とは…… ======お気に入りや感想など、励みになるのでどうぞよろしくお願いします。毎日一話投稿します。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや
ファンタジー
クラスメートからのイジメが元で死んでしまった主人公は、その報われぬ魂を見かねた女神によって掬い上げられ異世界で転生する。 女神から授けられた不思議な剣を持つことで、彼はあらゆる敵に打ち勝ちあらゆる難問を解き明かし、あらゆる女性を虜にする力を手に入れる。 無敵の力を手に入れた男が次に望む物は果たして…? 不定期連載(7〜10日間隔で出していく予定)

処理中です...