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プロローグ
しおりを挟む黒いスーツに黒い傘、その下にいる青年は目の前に新しく建てられた祖母の墓石を見下ろしていた。
雨よけの傘と白い花を握る手は酷く冷え切っている。心はざわつき、目元が赤く染まりはするが、涙は出てこない。彼は傘を放り投げると空を見上げ、雨粒を顔で受け止める。荒みきって流せない涙を、代わりに雨が流してくれるように。
その日の夜は酷く寒かった様に思える。
埋葬後、彼は夜の街へと繰り出し小さなバーのカウンターに座っていた。若い男が酷い顔色でカウターに座る様子にバーテンダーは無言でボトルを差し出す。注いだグラスを一気に煽り喉へ流し込むと、焼ける様な喉の刺激に目を細め、酒は音もなく胃の中へと沈んでいった。
そうして1時間後くらい経ち、ショット五杯目を流し込んだところで、視界が霞み頭もふわふわとしてくる。頬杖をついてボーッとしながらテキーラが注がれたショットグラスを突き、飲もうかどうかと悩んでいると、急に視界に入って来た白い手にそれを奪われた。
視線を横に移すと、そこには奪ったショットを仰ぐサングラスを付けた長身の男が立っていた。片眉を上げて目を細めると、彼はカウターに手をついて彼の顔を覗き込むと、わざとらしく口角を上げ貼り付けた様な笑顔を向けて来る。
「‥‥何がそんなに悲しいの?」
悲しい。その通り、彼は悲しんでいる。それなのに涙ひとつでないこの身体に‥‥酷く腹を立てていたのだ。
身体に巡るアルコールで赤く目元を、青年は長く白い指でそっと撫でると、彼の耳元に形の良い唇を近づけて鳩尾に響く様な低音で囁いた。
「僕が、泣かせてあげようか?」
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