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第一章
第一話 シュタイベルト
しおりを挟む陽が沈み空が暗くなった頃、「Taxi」と書かれた表示灯を頭に乗せた青のA4が中央区の道路脇に止まっている。
車の中で居眠りしていた若いドライバーは、後部座席の窓ガラスのノック音で目を覚まし、顔の上に載せていた雑誌を取った。座席を上げてノックされた方に視線を向けると、ネクタイの乱れた中年の男が額に汗を滲ませ、途切れ途切れの言葉を繋ぎ、焦った様子で急いでいることを告げる。
「急いで空港に向かってくれ!」
聞いてもいない訳をペラペラと話し出すのを横目に、ドライバーは叩きつけられた紙幣を手に取って片眉を上げ口を開いた。
「‥‥40ユーロ。夜間手数料と、急ぎ料金、全部で40ユーロ」
男は驚きと苛立ちで口を震わせ、倍じゃないかと言いたげな様子だが、腕時計の時刻を確認して急いで財布から4枚の10ユーロ紙幣を取り出しドライバーに叩きつけた。
追加分のお金を受け取ったドライバーは、「シートベルトを付けることと、口を閉じること」この2つを客に要求してエンジンをかけ、後ろからカチッというシートベルト閉めた音を確認してからアクセルを踏み込んだ。
まるで自分の手足のようにハンドルを動かし道を縫うように進んでいく、当たり前の様に行われる信号無視、予想を遥かに超えた運転に男は度肝を抜かれて目玉が飛び出そうなほど驚愕している。少しでも操作を間違えると接触事故が起こりそうなギリギリのライン、ドライバーは表情ひとつ変えずに淡々とした態度でハンドルを握っている。男は次々と変わる外の景色に恐怖し叫ばずに入られなかった。
到着予想時刻を大幅に短縮して空港に着くと、青白い顔をして目を回した男がタクシーから出て来る。それを見送りセオルド・ヴィンターは貰った40ユーロを上着のポッケに雑に入れると、車を再び走らせた。
ヴェスタルニアは分かりやすく5つの区画に分かれている。西区、北区、東区、南区、それと中央区。それぞれの区画にはマフィアの四大名家がいて、各区画を管理している。
例えば、投資会社や不動産会社のように法人化して国へ投資し経済を回すマフィアや、表立って動けない警察機関の代わりに、市民に武力行使を行い街の治安を維持するマフィア。‥‥同じマフィアでも立ち位置がかなり違ったりするので、一般的なマフィアのイメージとは異なるだろう。
セオルドの家は西区のオールドクォーターにある小さな整備工場、先月にリハビリ施設に入っている母の代わりに女でひとつで育ててくれた祖母が亡くなりつい最近になって埋葬を行った。工場の前で古臭い車をいじり、クランクの油まみれになった姿で手を振る祖母の姿はもうそこには無い。
祖母とふたりでガレージ2階に造った住居スペースに上がったセオルドは、手入れをされた古い革のソファに腰を下ろし上着から客から巻き上げた札を取り出す、それをテーブルの上に置いて足を投げ出し目を閉じた。薄暗いランプの下で油まみれの革手袋をはめて古い車をいじるのが好きだった祖母、いつもガレージで聞こえていた金属音が聞こえてこないことに、一月が経った今でも慣れることがない。俯いたセオルドは、ソファの上に体を包み込むように丸くなり横になる。そのとき尻ポケットに入れていた中古の携帯端末が震えた。
画面にはここ最近で見慣れた非通知の文字が表示されている。通話ボタンを押して電話に出ると、電話の向こうから活気あふれる音が雑音で流れる。
「よぉ、俺の子猫ちゃん!仕事が入った、ヴェルクシュタッドのナイトレースにある男が来るから、"チップス"を届けろってよ」
「‥‥分かった。受け取り場所は?」
「リードの店の"猫"」
その一文で何を指すのかを理解したセオルドは別れの挨拶をして通話を切った。
ソファから立ち上がった彼は、ガレージ下に降りて黒のパニガーレに跨る。上着のチャックを首元まで上げ、グローブをしっかりはめる、ヘルメットを被りキーを回す、慣れた手つきでクラッチレバーに手を掛けスタートボタンを押た。パニガーレV4の重厚なサウンドが周囲の空気を震わせながら、セオルドを乗せ発進した。
自由を感じる瞬間。何のしがらみも無く、余計なことを考えることさえ忘れることができる。セオルドは、バイクに跨り心の奥底から湧き上がる好奇心と興奮と共に、道を駆け抜けるのが好きだった。街の景色が流れ、淡く光るオレンジ色の光が横切っていく、まるで手足のようにハンドルを操り前を走る車を華麗に抜き去る。さっきまで悶々としていた頭の中は、嘘のように空っぽになった。
高速を走って到着したのは中央区ルクスシュタインにあるネオンストリップバーが立ち並ぶ繁華街。
この時間帯のこの区域は独特な雰囲気を醸し出していて、色とりどりの光の道に、人々の笑い声や音が混じり合う。それぞれの店は個性を持っていて、大きなウィンドウからは華やかな装いのパフォーマーたちが微笑みながら招き入れてくる。店内からはリズミカルな音楽が流れ、挑発的なパフォーマンスが繰り広げられる。
仲間とわいわい楽しむ客の姿があれば、ひとり静かにドリンクを楽しむ客もいる。バーテンダーが鮮やかなカクテルをつくり、目を引くようなグラスパフォーマンスも見られる。香り豊かなアルコールが、刺激的な雰囲気をさらに引き立ててるようだ。
すっかり深まった夜の繁華街に、まだ幼さの残るセオルド・ヴィンター は目立つ。そのため彼は黒マスクを着用し、特徴的な目元を隠すように上着のフードを深く被っている。街角にバイクを停め、ストリートパフォーマンスが行われている横を通り過ぎ路地に入ると、"リードの店"の扉を開けた。
ルクスシュタインの片隅にひっそりと佇む小さなバー。外観は目立たず、淡い色合いの外壁、店内は暖かみのある照明が心地よく、落ち着いた雰囲気が漂う。
こじんまりとした店内には、常連客がゆったりと酒を嗜む姿が見られ、心地よいジャズやアコースティックの音楽が静かに流れている。さっきまでの騒がしく魅力的なストリート通りとは違って、落ち着いてお酒を楽しんだり、本を読んだりするのにうってつけのバーだ。
カウンターの中にいる女性、ミランダ・リードが入ってきた青年に気がつくと、拭いていたグラスを置いて片眉を上げた。
「やぁ少年、"猫"をお探しかい?」
「迷子なんだ、飼い主が探してる」
彼女はタバコの煙を蒸し手招きをすると、店の裏手に出る。その後を追って裏口から外に出るとベルベットカラーのランボルギーニが一台用意されていた。今すぐに撫で回したいほどイカした外装に生唾を飲み込んだセオルドは、車のフロントシートを剥がしてチップスがあるかを確認すると、バーテンダーからキーを受け取った。
「‥‥なぁ、少年。キミの事はよく知ってるつもりだが、ここまでする必要あるのか?」
煙草の灰を落として淡々とした口調でそう聞いてくるバーテンダーに、セオルドは少し驚いたような顔なる。運転席の扉を開ける手を止めて目を伏せながら彼女ほうに少しだけ顔を向けた。
「‥‥心配してくれるのは嬉しいけど、婆ちゃんの工場の借金を返さないと。‥‥母さんの治療費も必要だから」
「ヴィンターの女は、キミに余計なものを残していったね。‥‥関係のない借金とクソな母親なんて捨てちまえば良いだろうに。本当に危なくなってからじゃ遅いんだよ?」
「分かってる‥‥つもり。大丈夫、迷惑はかけないようにするから。‥‥それじゃ、またねミランダ」
運転席に乗ったセオルドはエンジンをかける、窓の向こうにいるバーテンダーに軽く手を上げ車を発進させた。
薄暗い空に煙突から立ち昇る煙が、工業地帯の上空を覆い隠す。冷たいコンクリートの地面には、工場の廃材や錆びた機械が散乱し、まるで過去の栄光を語るかのように佇んでいる。夕暮れ時、オレンジ色の街灯が点灯し始めると、周囲の廃墟のような建物がさらに不気味な影を落とす。
耳をつんざくような機械音が響き渡り、時折、遠くで作業員たちの掛け声が交じる。古びた倉庫の壁には、落書きやグラフィティが施され、無法地帯の雰囲気を醸し出している。コンクリートの道はデコボコで、車のサスペンションが悲鳴を上げ、路地は狭く、視界を遮るように立ち並ぶ高いフェンスや、工場の建物が迫りくる。
ここでは光と影が交錯し、昼間の活動と夜の静けさが対照的に存在している。夜になると、明かりに照らされた工場の窓から漏れる光が、不規則に輝き、まるで生きているかのように感じられる。地面にはオイルの跡が残り、滑りやすい状態になっているため、ドライバーにとっては一層の緊張感が漂う。
この工業地帯は、ストリートレースの舞台として理想的だ。狭い道と急なカーブが多く、障害物が点在しているため、運転技術が試される。レースの興奮が高まる中、エンジン音やタイヤのスリップ音が響き渡り、観客の歓声が混じり合う。工業地帯の荒々しい雰囲気が、レーサーたちの心を燃え立たせるのだ。
フードを深く被り黒マスクを付けたセオルドは、ドラッグを使用してラリって絡んでくる奴らを無視し向かったのは沢山の車と人が集まる賭博場だった。ここでは非公式なストリート・レースが行われていて各々でカスタマイズした車を持ち寄ってレースし、賭け金を賞金とするまさに賭博だ。セオルドはここに賭博しに来たわけではなく、"飼い主"を探しにきたわけだが。
セオルドはある人物を探すために人混みの中に紛れる。通りすがりの露出の高いお姉様方に声をかけられたりしたが、やんわりと断りを入れ薄暗い工業地帯の片隅を目指していくと、そこにいたドレッドヘアの青年が目に入る。愛車の上で指を弾いて掛け金を数えていた彼は、暫く見なかった顔を見て驚いて青いセダンから飛び降りた。
「おい!そこのボーイ!もしかしてセオルド・ヴィンター じゃねぇか?!久しぶりだなぁ、元気にしてたかよ相棒!」
慣れたようにお互いに片手を掴んで引き寄せると、肩と肩をぶつけて挨拶を交わす。
「久しぶり、ホセ。この場所、暫く見ないうち活気づいたな」
「昔ほどじゃないけどな、お前の親父さんが仕切ってだ時が一番賑やかだったよなぁ。‥‥そうだ、せっかく来たんだしレースしていかないか?次のレースの参加者募ってるところなんだよ」
賞金欲しさに出たると言いたいところではあったが、なにぶん今は仕事中だ、答える代わりにやんわりと笑って見せると、彼は何も言わずに肩を叩いた。
「俺が言うのも何だけど、あんま危ない橋渡んなよ。‥‥そんじゃ!俺は賭けの集金に行ってくるわ!また顔見せろよ」
ホセと呼ばれた青年が、人懐っこい笑みを浮かべてその場を後にする後ろ姿を見送り、セオルドは再び歩みを進めた。
目印は、チップスのバッグに描かれたグリフィンの紋章が目印だ。実のところ、それを確認した時からセオルドの手汗が止まらなくなった。この街の市民であれば、その紋章の意味を知らない者はいない。
ダークブルーを基調にし、圧倒的な力と勇猛さを表すグリフィンのモチーフ獣、豊かな知恵と力を象徴する金のエンブレム。盾の形はこの街を守る象徴を現している。
‥‥そう、この街の統治者であり、支配者でもある"シュタイベルトの紋章"だったのだ。
入り組んだ路地の奥へと進む。各方面から聞こえていたエンジンを吹かす音が遠ざかり、人のいない静けさが広がった。そこに一台のハーレーと銀髪褐色肌の男が立っている、彼はこちらに気がついて一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに嘘くさい笑みを貼り付けた。
「‥‥"猫"を探してるだが、見かけてねーか?」
こんな夜更けに、こんな時間に猫を探す。夜の工業地帯はこうしてストリートレースが開催されるような場所に動物なんているわけがないだろう。
つまりこれは、共通に認識を確かめるためのフレーズだということ。
「それなら"見つけ"ましたよ」
「おぉ!そりゃ、助かった。さっそく引き取らせてもらっても?」
セオルドはポケットからランボルギーニのキーを取り出して彼に手渡すと、手短にその場を去ろうとした。しかし、意外にも銀髪の男が話しかけてきた。
「お前、まだ10代か?そんな若いのに金が入り用なんて可哀想にな、俺が雇ってやろうか?お前なら今の倍は稼げるぞ?」
男は撫で回すようにセオルドを品定めした後、目を細めて口角を上げる。何を言いたいのかを理解したセオルドは表情が崩れてしまう気がして隠すように踵を返した。
「‥‥それじゃあ、俺はこれで」
「おいおい、ウブなフリしたってお前の本心はバレてるぜ?金の匂いが嫌いなやつはいねえだろ」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる男に背後に立たれ、慌てて振り返ろうとしたところで腕を掴まれ動きを封じられてしまった。蛇のような鋭い瞳がセオルドを見下ろす、男の手がセオルドのマスクに触れたとき、拘束を逃れようと反射的に腕を上げてしまった。
肘のあたりに衝撃が走る、しまったと思った時には遅く、後ろで顎を押さえてよろめいている男の姿があり血の気が引いていく感覚がする。
逃げたそうとする青年を、男は力尽くで壁に押し付ける。押し付けられた肩の骨が音を鳴らしセオルドの顔が歪む。どうしてこうなったと考える余裕はなく、乱暴にマスクとフードを外され焦りで冷や汗が出てくる。
———「おっと、お邪魔だったかな?」
唐突に聞こえてきた澄んだ低い声。
男は苛立ちを隠そうともせずに舌打ちをし、声が聞こえた方に視線を移すと微かに目を見開いた。
漆黒の髪から覗く銀の瞳がセオルドを捉えると、黒ずくめの美男子は眉を跳ね上がらせ笑みを浮かべる。なぜ、そんな顔を自分に向けるのか分からずにいたセオルドだったが、何故かその形の良い口の動きを知っているような気がした。
「やぁ、お兄さん。こんな所で会うとはね、元気だった?」
その言葉でやはり、どこかで会ったことがあるのだと確信した。しかし、いくら考えても思い出せず頭を悩ませる、こんなに目立つ整った容姿の男を忘れるわけがないと悶々と考え込んでいると、押さえつけていた男が手を緩め両手を胸元に上げた。
「なんでアンタがこんな場所にいるんだ、フィルメロ・シュタイベルト。この時間は家族の集まりのはずだろ?‥‥あぁ、そうか。これは失礼、お前は"よそ者"だもんな」
シュタイベルトという名前を聞いてセオルドの心拍数が上がった。わかりやすく「マジかよ!」と言った顔をする彼に小さく笑ったフィルメロ・シュタイベルトは、表情ひとつ変えずに腕を交差し、酷く冷たい目に男に向ける。平然を取り繕っていた男の顔には焦りが見え始め、無意識にキーを握りしめていた。
「それはお前だろヴァル?‥‥シュタイベルトの名前を使って馬鹿やってる"マヌケな犬"がいるから、兄さんに連れて来いって言われたんだ。‥‥もちろん、言い訳のひとつやふたつは考えてるよね?」
冷たい目を向けたまま元々上がっている口角を更に上げた彼の顔は、異様なまでに美しく、そして畏怖を感じさせるものだった。男は素早い動きでハーレーに跨ると、脱兎の如くその場を逃げ出した。追いかけるわけでもなく、片眉を上げてその後ろ姿を見送った彼は誰かに電話を掛け始める。
何が何だか、余計なことに巻き込まれた気がする。これ以上の面倒はごめんだ、自分はただ頼まれたものを運んできただけ。セオルドはそっとその場を去ろうとすると大きな手に首根っこを掴まれその場で待つように指示されてしう。
「うん、もうすぐ戻る思うよ。‥‥自分の飼い犬の躾ぐらい、ちゃんとしたらどう兄さん。‥‥忠誠心があるのは認めるけどさ、あれじゃあ空回りも‥‥あ。」
けれど、彼はそれで大人しく従うタイプではなかったようだ。フィルメロの隙を見て走り出したセオルドはストリートに出ると知り合いのドレッドヘアを探す。掛け集金に忙しくこちらに気づいていない背中に飛びつくと、彼は驚いて素っ頓狂な声を上げた。旧友の青白い顔を見ておおよそ察した彼は、向こう側を指差し「貸しだかんな」とだけ言ってバイクキーを渡してくる。大きく頷いてキーを受け取ったセオルドは一目散にその場を離れ、数100メートル先の駐車場で見覚えのあるナインTを見つけると、すぐにエンジンを掛けた。
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