どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ

文字の大きさ
34 / 68
1章-3

第34話

しおりを挟む
 集会の間にガンフーの鋭い声が響く。 

「どうしてこんなことをした? いい加減答えたらどうだ!」

「ヘッ。あんたらに話す義理なんかないで!」

 一方のドワタンはというと椅子にロープで縛られつつもさっきからずっとこんな調子だ。
 残りのふたりは黙り込んだままだったりする。

「主さま。こやつらまるで反省の色がありません」

「うーん」

 俺はそんなやり取りを見ながらこれまでの経緯を振り返っていた。



 ◇◇◇



 晩餐会の前。
 俺は霧丸からある相談を受けていた。

「少しよろしいでしょうかティムさま」

「どうした?」

「あのドワーフ族の行商人長についてなのですが」

「ドワタンのこと?」

「はい。ひょっとすると彼は……ドワーフキングのご子息かもしれません」

「え」

 そこで霧丸は一段階声をひそめた。

「数年前にいちどドワーフ族が暮らす小山を訪ねたことがあったのですが、そのときドワーフキングからご子息の名前を聞いていたのです。それがたしかドワタンという名前でした」

「でも息子ならふつうキングの後を継ぐんじゃないか? なんで行商人長なんかやってるんだ?」

「某の読みではそれはウソなのではないかと思いまして」

「ウソ?」

 どうやらその際に霧丸はドワーフキングから息子についての話を聞いたようだ。
 息子は不真面目でろくでもない怠け者らしく、それがキングの悩みの種という話だったようだ。

「彼らがここまでやって来たのはなにか良からぬ理由があるように思えます。宿屋ではなく高台にある領主館バロンコートに泊まろうとしたのも、ひょっとするとオーブを狙ってのことかもしれません」

「そんな感じにはぜんぜん見えないけどなぁ」

 俺の目にはドワタンたちの姿は友好的なドワーフ族にしか見えなかったから霧丸の言葉は本当に意外だった。

「キングがそうするように命じたってことか?」

「それはないと思います。ドワーフキングはとても信頼できる方です。そのようなことを命じるとは思えません」

「てことはドワタンが自分の判断でここまでやって来たってことか」

「その可能性が高いかと」
 
 ぶっちゃけかなり飛躍した話のように思えた。

 でも霧丸は頭の切れる男だ。
 族長としての経験もある。

 だからひとまずその話を信じることにした。
 

 盗みを働こうとしたドワタンたちが2階の大広間に来たときのためにオーブが奉られている祭壇に仕掛けをしておいてほしい。
 それが霧丸にされた提案だった。

 だから食事の席では酒を飲むふりをして、《蛇軌道マスティンギミック》を言われるがままに仕掛けておいたわけだけど。

(まさか本当に言われたとおりになるなんてな)



 ◇◇◇



「なんとも食えない連中だ」

「ええ。このままでは埒が明かないかと」

 ガンフーと霧丸が神妙に目を細める。

「ティムさま。やはりここは強引に口を割らせるしかないのではないでしょうか?」  

 ルーク軍曹のその言葉にまわりの蒼狼王族サファイアウルフズとオーガ族は賛同の声を上げる。
 実は幹部のみんなも最初からドワタンたちのことを怪しんでいたようだ。

 食事の席では俺と同じようにエールを飲むふりしてやり過ごして、領主館の近くで待機してくれてたらしい。
 それで実際ドンパチと聞えてきたから急いで駆けつけて来てくれたってのが事の真相のようだな。


 大事なオーブが盗まれる寸前だったってこともあってみんなの気はかなり立っていた。

(このままだとマズいな)

 危機感を抱いた俺は場をいちど落ち着かせることにした。


「みんなちょっと待ってくれ」

 俺が声を上げると集会の間は一瞬にして静まる。
 
「みんなの気持ちはよく分かるよ。でも少し冷静になってほしいんだ。もし暴力で相手を支配しようなんてことをすれば魔族とやってることが同じになってしまうんじゃないか?」

「そ、それは……」

 ルーク軍曹を筆頭に仲間たちは皆どこかバツを悪そうにする。

 力で相手を従わせようとしてもダメなんだ。
 そんなことしてもなんの解決にもならない。

 でも。
 なにもしなければドワタンはこのまま口を閉ざし続けたままだ。

 それは俺たちの望むことじゃない。
  
(俺からもなにか言ってみよう)

 そう考えたら三人に自然と声をかけていた。

「あのさ。悪いんだけどオーブを渡すことはできないんだ。オーブは蒼狼王族とオーガ族にとってなくてはならないものだし。あんたたちドワーフ族にもオーブはあるはずだろ? それが無くなったらどうなるか想像するのは簡単なんじゃないか?」

「それがあんたの本性やな! 人族はいつもこれや! 勝手に物事を決めようとする! だから嫌いなんや!」

 もう猫をかぶる気はないみたいだ。
 ドワタンの言ってることはよく分からなかったけど人族に対して相当恨みを持ってるってのは理解できた。

「俺がここで盟主やってるのが気に食わなくてこんなことしたのか?」

「そのとおりや! あんたみたいな人族のクズにオーブ奪われるくらいやったらワイが取り返したろ思ったんや!」

 それを聞いたガンフーと霧丸がすぐに間に入ってくる。

「ドワーフ族の小男よ。勘違いするな。我らオーガ族は主さまの配下についたのだ。オーブを奪われるなどと世迷言を口にするのも大概にしろ」

「ですな。適当な言いわけでごまかせると思わないことです」

「くっ……」

 そこでようやく残りのふたりが声を上げた。

「アニキぃ~。やっぱり盟主さんを出し抜くのは無理ゲーですよぉ……」

「ここは素直に事情話した方がよくないッスか?」

「お前らもう少し黙っとれんのかい!」

「「す、すみませんっ~~!?」」

 ドワタン以外はなんか脈がありそうだな。

 ここはもうひと押しかもしれない。
 俺はさらに言葉を続けた。


「オーブを渡すことはできないけどさ。べつの形でなら力になれるかもしれない」

「……なんやて?」

「だからどうしてこんなことしたのか正直に話してくれないか? 俺たちはただ理由が知りたいだけなんだ」

「主さま。協力するなどとこのような悪人に情けをかけるのはおやめください」

「そうですよ。明らかに道から外れた行為に及ぼうとしてたわけですし」

 ガンフーとルーク軍曹が口を揃えるも俺は首を横に振る。

「でもこんなことしたのはなにか切迫した理由があるからだと思うんだ」

 なにも好き好んでこんな危険な賭けに出たわけじゃないって。
 ドワタンたちの顔を見ればすぐにそれは分かった。


 俺の気持ちが伝わったのか。
 三人の中でなにか変化があったようだ。

「アニキっ! 正直に話しましょうよっ!」

「盟主さんなら助けになってくれるかもしれないッス~!」

「だから少し黙っとれや」

 口ではそう言いつつもドワタンは暫しの間考える素振りを見せる。
 
 やがて。

 小さく頷くと再確認するようにこんなことを言ってきた。
 
「……正直に話せば力になってくれるかもしれへんのやな?」

「約束するよ。だからどうしてこんなことしたのか教えてくれ」

「フン……分かったで。交渉成立や。いちから話したるわ」

 こうして俺たちはドワーフ族三人から事情を聞くことになった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...