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3章

第6話

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 そんな風に俺の学院生活は過ぎていき、あっという間に卒業式となる。
 
 ザナルスピラでも15歳で成人となった者は『加護の儀』を迎えるようだ。

 卒業式に行う『加護の儀』では神官から祝福を受けることになる。
 神官からクラスを言い渡された者はその場で自身のステータスとスキルが明らかになる。

 この辺の仕来りについてもミズガコレルの『加護の儀』と一緒だ。

 逆にクラスを言い渡されなかった者は一般の仕事に就かなければならない。
 もちろんステータスやスキルも受け取れないから魔物を倒すこともできなくなる。

 勇者を手助けするっていうならせめてクラスは受け取らないとだ。

 そんな思いで順番を待っていると俺の番が回ってくる。

「汝の前にクラスを啓示せよ――適性判定ジャッジメント

 いにしえの巨大石板に神官が手をかざすとそこに俺のステータスが表示される。
 どうやらクラスはちゃんと言い渡されたみたいだな。

 だがその時。
 会場からドッと笑い声が起きる。

「?」

 皆、石板に映し出された俺のステータスを見ているようだが。
 俺も巨大石板に目を向けてみた。

------------------------------
【エルハルト・ラングハイム】
クラス:錬金鍛冶師
Lv:1
HP:10/10
MP:1/1
攻撃力:1
防御力:1
魔法力:1
素早さ:1
幸運:1

【固有スキル】
《マナ分解》
《強化付与》

【特殊スキル】
なし

【武器】
なし

【防具】
なし
------------------------------

 そこには最底辺のステータスが表示されていた。
 パラメーターはHP以外はオール1。
 
(こんな低いステータスがこの世に存在したのか)

 前世だとどのパラメーターも10000は軽く越えていたからな。
 俺はまるで他人事のように感心していた。
 
「あなたのクラスは…………ぷぷっ。れ、錬金鍛冶師……ですぅ……? ぷぷっ」

 神官が笑いをこらえながら口にする。
 
(錬金鍛冶師か。珍しいな)

 ハズレ職とされる錬金術師と鍛冶師が組み合わさったクラスだ。
 生産職だから今後永遠にレベル1から上がることはない。

「ギャハハッ! 人生詰んだなあの害虫ぅ! 錬金鍛冶師だってよぉ~!」
「これまでの成績が良くても生産職なんてなぁ。恥ずかしすぎるだろ……ぷぷっ」
「〝死に戻りデマイズバック〟だから仕方ねーって。今度こそちゃんと死んでほしいぜ~」
「ド田舎準男爵には相応しいよなぁ~! 最後まで俺たちを笑わせてくれるわ! くっくっく!」

 会場はあっという間に笑いの渦に包まれる。
 ずっと学院ではトップの成績だったから相当恨みを買っていたようだ。

 罵詈雑言があらゆるところから飛んでくる。

 だが。
 このクラスは俺にとって好都合と言えた。

 下手に戦士職や魔法職を言い渡されて目立つような真似はしたくない。
 実力を隠すのが難しくなるからな。



 ◇◇◇



 その後。
 シルルが言っていた通りマモンは勇者の祝福を受けた。

「おぉっ……! この者マモン・バッカールには勇者職の啓示が現れていますっ! 我が王立学院から勇者様が誕生するとは……なんということだ……!」

 神官が興奮気味にそう叫ぶと会場の熱気は最高潮へと達する。

 このザナルスピラでは勇者が現れたのは実に800年ぶりのことだった。
 そんなこともあって会場は当然お祭り騒ぎとなった。

「私たちは歴史の転換期を目撃してるんだわ! マモン様最高っ♪」
「ひゃっほ~! 祖国から勇者様の誕生だぜ!」
「マモンのヤツ、凄すぎだろ!? 同じ学院生として実に誇らしい!」
「彼は一躍時の人だ! これは後でサインを貰っておかないと」

 もちろん宣告されたマモンもマモンでかなり驚いているようだった。
 
 その気持ちは俺にも分かる。
 前世で神官から〝あなたには勇者職の啓示が現れている〟って言い渡された時は何かの冗談かって思ったからな。

 勇者として祝福を受けた者が誕生すると、それは近い将来魔王が復活することを意味している。
 そして、石板が示した仲間と共に勇者は魔王討伐の旅に出なければならない。

 この辺りの掟についてもミズガコレルと特に変わりはないようだ。
 俺も神官に言い渡された仲間と一緒に魔王討伐の旅に出たから。





 勇者誕生の興奮が一段落すると、会場の関心はこの後誰が勇者パーティーに加わるかに移った。

「あんた、勇者パーティーに呼ばれるんじゃないの~?」
「いやぁさすがに無理っしょ」
「呼ばれるのはもの凄いステータスを受け取ったヤツじゃね?」
「俺だったらいいのになぁー。こんなチャンス一生に一度あるかどうかだし」

 ひょっとすると自分が勇者パーティーに名を連ねることができるんじゃないか。
 そのような期待もあってか会場の熱は再びヒートアップする。
 
 そんな中で最初に名前を呼ばれたのはビアトリスだった。



「「「おおおおおおおっ~~!!」」」



 納得したようなどよめきが会場全体に広がっていく。

 ビアトリスはマモンの幼馴染であり、優れた聖女を数多く輩出する名門魔術家の長女だった。
 勇者のよき理解者としてはパーティーに絶対的に欠かせない存在だ。
 
 続けて名前を呼ばれたのはルヴィ。



「「「うおおおおおおおおっ~~~!!!」」」



 彼女が勇者パーティーに名を連ねたことで会場はさらに盛り上がる。

 ルヴィは中央大陸の東方にあるリムール公国っていう魔術師の国の出身でグレーゼ王立学院から推薦を受けてやって来たという異色の経歴の持ち主だった。

 リムール公国じゃ幼少期から神童って呼ばれていたようで、学院内では天才魔術師なんて謳われていたな。

 誰もが納得できる二人の名前が呼ばれたことで次に名を連ねる者に全員の関心が集まっていた。
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