神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ

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第2話

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 夕方。
 しばらくの間、俺は広場で唖然として過ごした。

「チクショウ……。ふざけんな」

 最初からカードを奪う目的でパーティーに誘ったなんてあんまりだ。

(ザネリは領主の息子だけどそういうの関係なしに友だちだって思ってたのに)

 王立学院ではクラスもずっと一緒だったから俺はそんな風に思ってたんだ。



 ◆◆◆



 ここミハグサール王国では10歳を迎えると、5年間王立学院でこのカード世界の心得を学ぶことになる。
 卒業と同時に成人の儀も迎えてそこで神官から職業ジョブ才能ギフトやステータスの宣告を受ける。

 この宣告を受けることによって晴れて決闘者デュエリストとして認められ、魔符カードが使用できるようになるわけだ。

 またジョブには戦士職、魔法職、聖職、普通職の4種類がある。
 この中でも普通職は一番のハズレだって言われていた。

 普通職を宣告された者は冒険者をやらずに街で働く場合が圧倒的に多い。
 なぜかというと普通職は扱えるカードの種類が少なくて、戦闘面じゃほとんど役に立たないからだ。

 俺とは違ってザネリは戦士職の〈剣聖パラディン〉という役職を言い渡され、《鮮血のカリスマ》っていう自身のステータスを大幅に向上させるギフトを持っていた。

(戦士職なら〈武具カード〉が扱えるし、魔法職なら〈魔法カード〉が扱えるけど)

 普通職が使えるのは〈アイテムカード〉くらいだ。

 街でふつうに働くよりも冒険者は危険な分稼ぎもいい。
 頼れる身寄りのない俺は誰よりもお金を稼ぐ必要があったからそういう意味でもパーティーに誘ってくれたザネリには感謝していた。

(でも。まさか父さんから受け継いだカードを奪うのが目的だったなんて)



 ◆◆◆



 父さんは腕利きの冒険者だった。

 幼い頃に母さんが病気で死んでしまって以来、父さんが男手一つで俺を育ててくれた。

 だけど。
 5年前のある日を境に父さんはクエストに出かけたっきり帰って来なかった。

 当時の俺は11歳で父さんがなんで帰って来ないのかが理解できなかった。

 冒険者ギルドに相談したけど『よくあることだ』って言われて追い返された。
 ダンジョンのモンスターにやられたんだろうって話だ。

 けど父さんがモンスターになんかやられるわけがない。

 上位複合職である父さんはほとんどのカードが扱えて誰よりも強かったから。

 ジョブには戦士職、魔法職、聖職、普通職の4つを合わせた上位複合職ってものが存在する。

 これまでの長い歴史の中で上位複合職を宣告された者はほとんどいないって言われてるくらいだし。

(父さんは俺にとって英雄なんだ)

 今も絶対にどこかで生きてるって俺は信じていた。

 だからこそ。
 父さんから譲り受けたカードを勝手に奪い取られて俺は心底失望してた。

 カードは契約を結ぶことでその所有権が移る。
 基本的に契約を終えてしまったカードは他人に渡すことができない。

(中には契約を解除するなんてカードもあるみたいだけど。そんなもの俺は持ってないし)

 今頃ザネリは【HR英雄王の鎧】と契約してるはずだし、俺がそれを取り戻すのは不可能と言えた。

 実は今回報酬として受け取った【HR英雄王の剣】もギルマスの忖度によって貰えたっていう経緯がある。
 ザネリは領主の息子だから、これまで王立学院や冒険者ギルドでさまざまな忖度を受けてきた。

 ミハグサール王国の領主は、Aランク以上の者しかなれないっていう決まりがあったりする。
 これは力ある者しか領主にさせないっていうルールを王家が決めているせいだ。

 だから領主が自分の子供に跡を継がせる場合、まずは冒険者をやらせてAランクになるよう修行させるっていう仕来りがある。

 カードを使ってモンスターを倒すと経験値が獲得できて自然とレベルが上がる。
 このレベルによってランクも決まってくる。
 
 ランクが上がるたびに扱えるカードのレアリティも増えていくから高ランクほどいいカードが扱えるわけだ。

====================

[カードの種類とランク]

Lv.0~Lv.10 Fランク
N ノーマル
★(1)

Lv.10~Lv.30 Eランク
U アンコモン 
★★★(2~3)

Lv.30~Lv.50 Dランク
R レア
★★★★★(4~5)

Lv.50~Lv.70 Cランク
SR スーパーレア 
★★★★★★★(6~7)

Lv.70~Lv.80 Bランク
HR ハイパーレア
★★★★★★★★★(8~9)

Lv.80~Lv.90 Aランク
UR ウルトラレア 
★★★★★★★★★★★(10~11)

Lv.90~Lv.100 Sランク
SSR スペシャルスーパーレア 
★★★★★★★★★★★★★(12~13)

====================

 ザネリは今Bランクだから、あとちょっとで目標としてるAランクに到達する。

 今回、英雄王シリーズの武具が一式揃ったわけで、ザネリがここバイエフォン領の新たな領主となるのも時間の問題と言えた。



 ◆◆◆



「はぁ。これからどうしようか」

 クビになった以上、冒険者を続けるには新たに加わるパーティーを探さなくちゃいけない。

 でも思いのほかショックは大きい。
 また一から冒険者をやろうって気分にはなれなかった。

(それにこの街にもいたくないな)

 ここは領主が自ら治める首府――レネギスだ。
 近いうちにザネリの親父さんは息子に領地の支配権を委ねるかもしれない。

 気持ち的にも早くここから去りたかった。

(これまでにお金もある程度貯まったし。しばらくは冒険者のことは忘れて田舎でのんびりするのもいいかも)

 レネギスを出て東の方角へまっすぐ進むと小さな村がある。
 そこに家を借りて農家としてのんびり暮らすってのはどうかな。

「うん、悪くないな。そうしよう」

 思い立ってからの俺の行動は早かった。



 ◆◆◆



 さっそくアパートに戻ると、冒険者服から私服に着替える。
 それから荷物を整理して大家のおばさんに今日限りでアパートを出る旨を伝えた。

「急に出て行くなんて驚いたね。行く当てはあるのかい?」

「レネギスのはずれにある村に行ってみようと思います。田舎でのんびりと自給自足しながら暮らしてみようかと思いまして」

「そうかい。その若さで農家か。まあ冒険者だけが人生じゃないからね。またやりたくなったらいつでも戻って来なよ」

「はい。ありがとうございます。今までお世話になりました」

 俺は大家のおばさんに頭を下げるとその足でレネギスの門を潜った。
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