宇宙戦士ギンガレオン

第9話：風の哲学者、風谷早香

凍結の座標

堂坂 吠（ほえる）と佐々波 海香（うみか）は、イーグルガールダの謎の力について分析していたが、彼女のエネルギー波長は、伝説のボールカプセルの系統とは全く異なっていた。
「彼女は、カプセルの力ではない、別の宇宙の摂理に基づいている。」海香は冷静に推測する。「だが、彼女もカプセルを集めている。目的は不明だ。」
青波 穂乃果が、新たなカプセルの反応を特定した。
「次はアクア・ゾーンのクリスタル・ペンギン・カプセル！場所は、古い大学の図書館よ。なんだか、静寂を求めているような、凍えるような感情が渦巻いている…」
二人が現場に急行すると、コマンダー・ゾルは、静寂への異常な執着を持つ図書館の職員、サトシをダーク・アニマに変貌させていた。怪人は、絶対的な静寂を求めるアイス・アークティック（北極氷怪人）。周囲を絶対零度の氷で覆い、図書館全体を凍りつかせようとしていた。
ギンガレオン・スターレオとシャークバルド（アビスシャーク）は、火と水の力で連携して氷を溶かそうとするが、アイス・アークティックの氷の生成速度がそれを上回る。
「くそっ！氷が硬すぎる！このままでは、図書館のすべての資料が凍結し、歴史的な記録が失われる！」吠は焦る。

風の介入と素顔

その時、図書館の上空を、黄金色の風が舞い降りた。イーグルガールダの出現だ。
彼女は、氷の猛威を前にしても、優雅に空中に静止した。
「静寂は、死ではない。生あるものには、流転の音が許される。」
イーグルガールダは、そう宣言すると、風の杖を一振りした。黄金色の風が、アイス・アークティックの氷を粉砕するのではなく、氷の構造そのものを「融解の流動」へと変え、氷を蒸発させた。
怪人が動きを止め、イーグルガールダは彼の前に舞い降りる。
「イーグルガールダ！待て！貴様の力は強力すぎる！中の人間を傷つけるな！」吠が叫ぶ。
イーグルガールダは、「未熟な感情論」を諭すように、静かにヘルメットを解除した。
現れたのは、透き通るような肌と、風のような穏やかな眼差しを持つ一人の女性だった。彼女は、風谷 早香（かぜたに さやか）。
「私の力は、生命の流れを尊重する。闇を消滅させるのではない。流動させるのだ。」

秩序と流動の邂逅

「風谷さん…！？」吠は驚愕した。
風谷 早香は、吠と海香の高校の一つ上の先輩であり、詩的で哲学的な言動で知られる孤高の文学少女だった。
「堂坂君。貴様の論理は、固執しすぎだ。佐々波さんの効率は、滞留しすぎだ。」早香は、優等生である二人の欠点を、柔らかく指摘した。
早香は、杖から「流動の風」を放ち、アイス・アークティックの静寂への執着という闇を、「未来への流動」へと浄化させた。怪人は消滅し、職員は救出された。
そして、早香は、怪人が倒れた場所からクリスタル・ペンギン・カプセルを回収した。
「この氷の力は、流れを凍らせる。だが、流動あってこその命だ。」
早香は、カプセルを回収すると、再びイーグルガールダへと変身。彼女は、吠と海香に、**「力の起源」**に関する謎めいた言葉を残した。
「真のカプセルの力は、命の流転の中にのみ存在する。貴様たちのスターレオやアビスシャークも、孤独な力に留まれば、いずれ滞留し、絶望に染まるだろう。」
イーグルガールダは、クリスタル・ペンギン・カプセルと共に、風のように去っていった。
堂坂 吠と佐々波 海香は、自分たちと同じ学校の先輩が、自分たちとは全く異なる「哲学」と「力」でカプセルを集めているという、新たな謎に直面する。そして、早香の言葉は、優等生の論理に、「流動性」という新たな課題を突きつけた。