短編集

茉莉花

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最後の審判

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目を開けるとそこにあったのは、いつも見ていた青い空ではなく、ただ暗闇が広がっていた。
 身体を起こそうとするが思うように身体が動かない。脈が通ってないのか、と思うほどに身体は冷たく、立つだけでもかなりの時間をようした。
「目が覚めた人からこちらに来てくださーい」
 どこからか聞こえた声に従って、足を一歩ずつ進める。それにしても、ここはどこなんだ...。
「お名前をお聞きしてもいいですか?」
 声のする方に向かって歩いた先にいたのは、まだ年端も行かない少女だった。彼女に促された通り名前を伝える。
「――さんは、以前の記憶をお持ちだったりしますか?」
 記憶の限り少女に話をする。しかし、肝心な部分の記憶がない。どうしてこんな所にいるのか。ここはどこなのか。それらがわからないのだ。
「わかりました。それでは、それらの記憶は一切必要ないので今から抹消させていただきますね」
「抹消……って、抹消ですか!?」
「はい。あなたが思われてる抹消で間違いないですよ」
「え、ちょ……。それってそんな軽く簡単にして大丈夫なんですか!?」
「あ、はい。いつもしてることなのでなにも問題ないですよ~」
 どうやら彼女、とんでもない人物なのか人の記憶を消去できる人物でそれも日常的にやっていることらしい。え……記憶なくなるん?え……。
「とりあえず、時間も時間なので話進めますね」
「あ、はい。」
「とりあえずこの器具を使ってやっていきたいと思っているんですけど、これでいいですか?嫌だったら仰ってくださいね。無視するので」
 エンジェルスマイルのような営業スマイルと共に出てきたのは大きい鎌。
「え、ちょ!? えぇ!? なんでそんなもの……」
「それはですね、私が死神だからですよ?」
 自称死神によると、どうやらここは死後の世界らしく死者が訪れる場所とのこと。
「それでですね、他の死神に先程から連絡をとってるのですが、なぜかあなたの情報持ってる死神がいなくって、、、」
「情報、、?」
「はい。こんなことあまりないんですけどね~……。大変言いにくいのですが、前世で断罪とかされた方ですか?」
 従来の方法だと、どうやら死神が取り付くことによって生物は死に、そのままここに連れて行かれ手続きをするらしい。そのまま放置は珍しいとのこと。
「いや、断罪って……そんな、だって……」
「思い当たる節でもあるんですか?」
 刹那、蓋でもされていたのか。フラッシュバックのように記憶が蘇った。
 ――違う……俺じゃないんだ。俺じゃない。
 ――じゃあ誰がやったんです?それか証明できるアリバイでもあるんですか? ないですよね?
 ――俺はやってない。俺は……俺は……!!
「違うんだ……。本当に俺じゃないんだ」
「そうなんですね。とりあえずここに来たあとにも判決が待っていまして……」
「判決?」
「はい。あなた方でいう天国に行くか、地獄に行くか、それを決める必要があるんですよ~。まぁ、これが最後の審判になるんですけどね。とりあえず、記憶消させていただきますね」
 視界に映る大きく振り下ろされんとする鎌。
「避けないでくださいね~。はーい少しチクっとしますよ~」
 いや、チクっとするとかそういう類のじゃないだろ。
「あ、それともあれですか? そういう趣味の方でしたら言ってくださいよ~」
 死神が指を鳴らすと、椅子とロープが何もない空間から出てきた。
「これは……?」
「いまからこれで拘束するんですよ。わざわざ言わせるなんて、よっぽどお好きなんですね」
 いや、そういうわけじゃないんだが……。
 抵抗するもむなしく、あっけなく拘束。そして振り下ろされる鎌。それをただ眺めるのも嫌なので目をつぶってその時が来るのを待った。
「さてさて、どんな一生を辿って来たのかな~」
 死神が見たそれは、彼女の口を閉ざすには十分だった。彼女は目の前で気絶している青年を担ぐと地獄まで行くと、外れにある釜まで向かった。
「今日の予定は~っと」
 特になにも書かれていないのでそのままお湯と共に釜の中へドポン。ついでにいろいろ追加。
 たまにいるのだ。ここに来るべきじゃないのに来てしまう命が。まだ、今ならまだ……。
 お湯は白く濁り、紅く染まり、黒くなる。
 死神はお湯が決して沸騰しないように火を調節しながら混ぜ続けた。
 そしてお湯が透明になった頃。火力を一気に上げ水分をとばした。
 ――よし。これでオッケーと。次来るときは私が取り憑いてやるから待っといてよ。
 
 それから十ヶ月後、どこかで一つ産声があがった。そして時を同じくして死後の世界では、とある死神が長期休暇をとったとか。なんでも現世を見に行きたいとかなんとか……。
「本当にいいのかい? 百年分も使って……」
 
「はい。約束なので」
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