【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

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Falling 1

ここもずいぶん狭くなりましたね

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「こんなとこもう嫌よ」


 豊穣の天使メルメルを無事に堕天させた俺は、荒廃した大地を緑化させながら帰路につくという、もう人間を名乗れないレベルのことをしていた。
 そして、食事やら風呂やらあれこれ済ませ、もう今日は寝ようかというところで、ユールが致命的に不満を漏らしたのだ。

「何だよ急に……?」

 いきなり不穏な空気を出すユールに、俺もちょっと身構えてしまう。
 深刻そうな表情をするユールは、息をぐっと吸い込んで思いの丈を叫ぶ。


「狭すぎるのよ!この小屋ぁ!!」


 溜めて何を言うかと思えばこいつは……。

「そんなの我慢しろよ」

 口ではそう言ったが、正直ユールの不満も分かる。
 恐らくここにいる全員が口にはしなくとも、「この部屋やたら狭い」という思いだけは共通していただろう。
 もう実家のような安心感さえ感じていたこの小屋だが、さすがにこう人数が増えると居心地が損なわれる。

「あんた外で寝なさいよ、肩幅一番広いんだから」
「そんな広い肩幅してねーよ!相対的にだろ!ていうか、お前らの羽が一番場所取ってんだよ! 」

 天使……いや、堕天使の羽というのは結構サイズがあって結構かさばるのだ。
 しかも、寝ている時は寝返りを打つ感覚で羽をばっさばっさ広げる事もある。
 朝目覚めると、口に羽が入っているなんて事もざらにあった。
 3人だった時でもこんな感じだったのに、4人だともう…。

「ユールちゃん!嫌なんて言わないでください!私達の楽園にするんですよ、ここを!」
「羽をばたつかせるな!羽が舞う!」 

 熱弁するルルフェルの羽を抑え、俺はコンパクトに背に畳んでやった。
 ペットとか室内で飼ってる人って、こんな感覚なんだろうか。

「体に対して羽が大きすぎるんだよ、お前ら」
「仕方ないじゃないですか、そういう種族なんですからぁ」
「いいじゃない、羽まみれになったらV系みたいでかっこいいじゃない」

 V系って、天使がどこでそんな言葉覚えてくんだよ……。
 そんなどうでもいい疑問を抱きながら、俺はふと気づく。
 
 何か一人静かだなと。

 気になった俺は、さっきから会話に参加しないメルメルの方をちらっと見る。


「うふふ、えへ……こ、これ、これですわ、っはあぁ♡」 


 予想外の光景に唖然とした。
 メルメルが自分の頭にある花の葉部分をちぎって、匂いを嗅いでいる。
 いや、吸っていると表現した方がいいかもしれない。 


「ふぅ……。皆さんにもこれ差し上げますから、どうか落ち着いてくださいですの」


 ビジュアル的には、完全に違法な薬をやっているような絵だ。
 トロンとした顔をしながら、俺達にちぎった葉を差し出してきた。

「メルちゃんの葉っぱって、リラックス効果ありますもんね!天界でもかなり流通してて……」 
「ありますもんね、じゃねーよ!!それ吸うの、もう禁止!天界の倫理観どうなってんだよ!?」

 合法か違法かは分からんが、絵面的にアウトなので、俺はメルメルから葉を取り上げた。
 全くどうなってるんだ、こいつの体は……。
 何でですのぉと、弱々しく追いすがるメルメルだったが、その声は突如割り込んできたノイズにかき消される。


「すぅー……すぅー……むにゃむにゃ……」


 ユールが寝息を立ててもう寝ている。
 本当にやりたい放題だな、こいつは……。
 赤ちゃんかよ。

「はあ、今日は疲れたし俺達ももう寝ようぜ……」

 残り二人も今日は疲れているだろう、狭いのはとりあえず我慢して寝ることにした。
 入口から俺、メルメル、ルルフェル、ユールの順で並んでいる。
 風が入ってきて一番寒い入口側が俺の定位置になっていた。
 まぁ、寒いのは初日に剣で突き刺した穴のせいなので、俺は甘んじて今日もそこで寝るのだった。



◇◇◇◇◇◇



「カイネ様、もう寝ましたか……?」


 すっかり夜の静寂に包まれ、俺が母親に抱かれた子供のような顔をして、うとうとしていた頃……。
 隣で寝ていたメルメルが、不意に俺にだけ聞こえるような小さな声で囁いた。

「皆さんの前では、照れくさくてはしゃいでしまいましたが……。改めて、本当にありがとうございましたわ」

 急に優しいウィスパーボイスで礼を言う堕天使に、こっちの方が照れくさくなった俺は、一心不乱に寝たふりを敢行する。

「ずっと怖かったんですの。天界から逃げてきて、狼みたいなモンスターに追い回されて。疲れ果てて地面に埋まって、お花に養分を蓄えようとしていた時、私ずっと祈ってましたの……」

 メルメルは俺にぴったりくっついて、鼓動しか反応のない背中に話し続ける。


「昔読んだ物語に出てきたような、素敵な王子様がお水をかけてくれることを……」


 ついさっき、トリップしかけてたやつとは思えない儚げな声だった。
 いや、水をかけたと言うか、災害レベルの水をぶちまけたと言うか……。
 
 まるで天使のようなその囁きに、俺は妙にドキドキして寝不足になってしまった。
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