【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

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Falling 1

モヤモヤします

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 私はルルフェル!
 天界を守護する七人の大天使の一柱……だった堕天使です!
 今はこのヘルヘイムという物騒な孤島で、私みたいな堕天使でも快適に暮らせる場所をつくろうと頑張っています!

 今日はカイネさんの提案で、拠点の近くに果物をたくさん生やそうということになりました。
 図鑑にも載っていないような変な生魚ばかり食べていたカイネさんは、まともな食事がしたいと血走った目で訴えていました。果樹園を作ってフルーツパーラーを開くんだとか、訳の分からないことを言ってはりきっていましたが、この植物を生やす能力、使ってみると結構疲れるらしいです。
 色取り取りのフルーツを次々と生成したカイネさんは、もうバテバテで座り込んでしまっています。
 もう、しょうがない食いしん坊さんですね!


「あの大丈夫ですか?カイネ様……」


 そんなカイネさんに、メルちゃんが心配そうに寄り添います。

「ああ、大丈夫。メルメルのおかげで今日はまともな食事ができそうだ、ありがとな」
「そんな、感謝するのは私の方ですわ。天界では果物なんて作らせて貰えなかったので、何だか見ているだけでワクワクしますわ」
「何だよそれ」

 天使は基本食事をしませんもんね。果物なんて作っても、無駄なことするなって怒られますからね。
 そんな事よりあの二人。
 昨日会ったばかりなのにやけに仲良いですよね、楽しそうに談笑しちゃって。

 ……私、知ってますからね?
 昨日の夜、何か二人でこそこそ話をしていたの。
 みんな仲良しなのは嬉しいはずなのに、何でこんなモヤモヤした気持ちになるんでしょう……?
 

「よし、それじゃあお前ら。この能力すごい疲れるから、あと一本だけ生やして帰るけど……。何か食べてみたい果物とかある?」


 そんな事を考えていたら、カイネさんが私達にも選択権をくれました。
 貴族出身のくせに口が悪いのが玉にキズですが、時折こういう優しさもチラ見せしてくるんですよね~。
 人間って皆そうなんですかね?

「私、レモンを食べてみたいですわ!お口がきゅーってなるらしいのですが、本当なのでしょうか!?」
「レモンか、まだ柑橘系はなかったな……」

 メルちゃんに先を越されてしまいました…。
 下界の植物の知識は乏しいですけども、私も何か知っているものを言いましょう!

「わ、私はあの……ミントとかいいと思います!」
「いや、それは要らない」

 あれ?即答で否定されてしまいました。
 何がいけなかったんでしょうか……あれ?

「ユールは別に何でもいいんだけどさ……。イチゴって知ってる?こんな形で赤くて、すっごく甘いらしいんだけど?」

 今度はユールちゃんが、モジモジしながら提案しました。
 このいじらしいところは、私も見習うべき点ですね。

「お前、意外とかわいいもの選ぶんだな」
「う、うっさいわね!イチゴみたいになれ!あんたの肌、イチゴみたいになれッ!」

 むぅ、やりますね……。
 こういうかわいらしいとこあるんですよね、ユールちゃん。
 私も負けてられません、ここで一つポイントを稼ぎますか……!


「ハッカ!ハッカとかどーです!?前に下界に来た時に見ました!」


 私の知っている数少ない下界の植物。
 昔、こっそり下界に降りた時、すっごくかわいい花を咲かせているのを見たんです!
 ……カイネさん、私にもかわいいって言ってくれますかね?


「いや、要らないかな」


 また却下されました、すごい素っ気なく……。
 これ、私嫌われてないですか?
 大丈夫ですよね?
 何だかモヤモヤします、さっきから…。
 んん……えい、もう直接ぶつかってみましょう!


「もー!さっきから何で私のだけ却下するんですか!?私、何かしましたか!?」
「わ、急に何だよ!?何でって、お前がスースーする草ばっか提案してくるからだろ?最低限実の成る物を……ていうかお前、さっきからぶつぶつ呪詛みたいに何言ってたんだよ、気が散るんだよ」


 あれ、何か声に出ちゃってたみたいです、私の心の声……。
 内容は聞こえてなかったみたいですけど……。
 うぅ恥ずかしい…。
 そうやって私が恥辱に悶えていると、突然カイネさんが手を伸ばしてきたんです。
 

「な、なにふるんでふかぁ!?」


 この人、私のほっぺを両手でぐいーっと引っ張ってきました。
 いきなり女子のほっぺを引っ張るなんて……本当に貴族出身なんですか?
 これ、何かしらのハラスメントになるんじゃないです?

「お前、さっきからボーっとしてどうしたん……すごい伸びるなあ!?お前のほっぺ!!」
「ふぁ、放してくらさい~!」

 しっかり手入れのされた私のほっぺは、思いのほかよく伸びたようで、カイネさんも気に入ってくれたみたいです。
 でもそんなことをしていたら、さっきまでのモヤモヤは、いつの間にか何処かへ消えていたんです。
 何ででしょう?痛いのがいいとか、私そんな趣味ないですし。


 天使だった時は感じなかったこの感情が一体何なのか……。
 

 それは分からなかったですけれど、ミントやハッカは果物じゃないし、スースーする草は受けが悪いっていうことを学んで、また一つ私は賢くなりました。



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