【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

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Falling 3

覚悟

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「と、とにかく!理由は全然分からないけど、これで戦えるわよ!」

 細かい理由はさて置いたユールが、割り切ったように勢いよく片手を振り上げる。
 聖水の渦は一本の槍となり、ユールの遥か頭上へ高く舞い上がる。
 こんな攻撃的な聖水、初めて見た。

「ぷはあ!!」

 渦から開放されたルガルが宙に打ち上げられる。

「ちょっと痛い目見て貰うわよ!」

 久々に能力が使えて気分がいいのか、ユールは掲げた手をノリノリで振り下ろす。
 しかし、その上機嫌な顔も、不意に鳴り響く不穏な音に掻き消されるのだった。



─── ドスッ!



「ふえ……?」

 目の前で起こった惨劇にエルは、開いた目も閉じられないまま固まっている。
 ユールの放った聖水の槍は、一閃その体を貫いたのだ。

「バ、バカ!いくら腹立つからって、そこまでする必要ねえだろ!?」
「ち、違うのよ!何でだか、全然加減できなくて、そんなつもり……!」

 ユールは大急ぎで治療をする、今しがた串刺しにした聖水で。
 ルガルの同胞であるギリィは、落ち着いた様子で、慌てふためく俺達を不思議そうに見ている。


「ねえ、何をそんなに慌ててるんだい?」


 呑気なその声に返事をしている余裕はない。
 ギリィは構わず質問を続ける。

「ルガルはキミ達の敵だろう?何でそんな事してるのかな?」

 そう問いかける彼女は、皮肉や嫌味でもなく、多分純粋に疑問に思っている。

「敵っつうか……」

 俺は曖昧な言葉を吐き出すのが精一杯だった。
 自分の気持ちすら理解できていないのに、こんな仲間の危機に平然としているやつに、分かって貰える言葉なんて思いつかない。
 思い悩む俺の顔をじっと観察し終えたギリィは、笑い話をするかのような明るいトーンで、俺達を更に揺さぶる一言を言い放った。


「ま!どっちにしろ悪魔はさ、死にたくても死ねないんだけどね♪」


 朗らかな声で悪魔はそう告げる。

「え?」

 聖水で傷口を治癒していたユールの手が、ピタッと止まる。
 その言葉と同時に、ルガルが目を開けたからだ。

「……あまりわしらの情報は、お前らに与えたくなかったんじゃがのぉ」

 ゆらりと何事も無かったかのように立ち上がるルガル。
 俺達は呆然としたまま、ルガルのボロボロになった小さな体を見つめる事しか出来なかった。

「何のつもりじゃ?自分で殺した相手を治療しようなどと。まあ、冷たくて傷口に染みただけじゃがの」

 ユールはその問いに、何も答えることはできなかった。
 
「ギリィの言った通り、わしら悪魔は不死身じゃ。天使と同じようにの」

 バレては仕方ないとドヤ顔でタネ明かしをするルガルは、次々に俺達の知らない情報を口にする。

「この辺を探索してて、段々記憶が戻ってきたんじゃ。千年前のあの戦争は地獄じゃったのぉ、不死の兵隊同士で殺し合っとったんじゃ。泥沼もいいとこじゃわ。じゃから、わしら悪魔は天使に殺されず、あんな風に像にされとったんじゃ」

 ルガル達が像になっていたのは、そうせざるを得なかったから。
 

「魔王様から頂いた不死の力。この力がまだ続いているという事は、きっとどこかに魔王様もおられるという事じゃ」

 そして、魔王を復活させ再び悪魔の繁栄を。
 きっとそれが彼女の目的、使命だ。

「ハハ、ルガルの体から出てるその赤いの。何の意味があるんだろうね、その液体」

 流れる血を見て楽しそうに笑うギリィ。
 そして、今の話を聞いた俺は、突きつけられた現実からもう目を背ける事はできなかった。
 こいつらは悪魔で、人間の俺とは違う、もっと上位の畏怖すべき存在なんだ。

「で、後出しで悪いけどボク達は不死身な訳で。……どうする?カイネだけは、ボク達がしっかり守ってあげるけど」

 既に俺が悪魔側についたかのように、ギリィは問いかけてきた。
 仲間を諦めて自分だけ助かる道を必ず選ぶと、そう確信しているような。

「……さっき、他のやつは始末するって言ってたよな?」
「そうだね、それは仕方ないよね。ヘルヘイムはボク達のものなんだから、不必要なものは排除するよ」

 あっけらかんとした単純明快な解答。
 だが、それだけは絶対に受け入れる訳にはいかない。

「だったら、お前らが不死だか何だかなんて関係ねえよ」

 ヤケクソだっただけかもしれない。
 でも、それは俺がやっと絞り出した正真正銘の本音だった。
 こんな短い時間でも、このポンコツ堕天使達と過ごした時間は、貴族やってた時よりずっと自分らしくいられて……。

「じゃあどうするの?」

 ギリィの声は、腹立たしい程にわくわくを隠し切れていない。


「やれるだけやってやる。そんでお前ら二人に、地獄でルルフェルに謝らせてやる」


 もう覚悟はできた。
 うだうだと迷っていれば、ただ悪戯に傷つくだけだ。きっとお互いに。

「ちょっと!まだ地獄には行ってないでしょ!」

 不死の悪魔か。
 今まで散々有り得ない事ばっか起きてきたんだ。
 今更そんなの出てきたって、もう怯んでいられない。
 守られてばっかりなんて、恰好悪い。
 死なないならボコボコにしてやって、それで無理矢理説得して……。
 
 そんであいつに、二度とあんな顔はさせねえ。

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