【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

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Falling 3

ごめんなさい!!

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 目敏くユールの羽が焦げ付いていた事に気づいたラピス。

 今朝見た設計図と全然外観違うじゃねえかとか、城なのに何で引き戸何だよとか、話したい事は色々あるが、そういう話をしてくれる雰囲気ではなかった。

「よく見たらみんな少し服が薄汚くなってるし、一体向こうで何があったんスか?」

 悪戯した子供を問い詰めるような声で、ラピスが指摘してきた。
 あんな砂っぽい場所で戦ってたんだから服も汚れるはずだ。

「悪魔を助けた時ルガルと少し揉めてさ、それでちょこっと小突かれて……」
「小突かれたってレベルじゃないッスよ!カイネっちに至っては、何かしっとりしてるし!」

 濁した言い方をしたら怒られた。
 俺がしっとりしてるのは、変なのの体内に取り込まれたからだ。
 言い負かされた俺に代わって、今度はルルフェルが説明を試みる。

「あのですね、ルガルさん、何だか私達のことが気に入らなかったみたいで……。私達、燃やされかけたんです」

 すごい直球で行った。

「で、でも!もう1人の悪魔さんは、仲良くしてくれましたし!私もアリスちゃんとお友達になりましたし!」

 落としてからすぐ上げたルルフェルだったが、ラピスの目は笑っていない。

「やっぱり危険な目に遭ってるじゃないスか!もう悪魔となんかと関わらないって、みんなここで誓うッス!!」

 ラピスは最初から悪魔との共存に反対していた。
 彼女の反対を振り切ってルガル達に協力した結果、こんな感じになって戻ってきたのだ。
 ラピスが感情的になるのも分かる。

「どうして何も答えてくれないんスか、みんなこんなボロボロになってるのに……。悪魔なんかと一緒にいたら、きっとまたみんな傷つくことになるッス!!」

 ラピスの言っている事は多分間違っていない。
 きっと、今後も危ない目に遭う事になりそうだ。
 だが、天界から逃げてこのヘルヘイムを拠点としている以上、どの道危険な未来は待っているだろう。
 堕天って言うのは、それだけリスキーな選択のはず。
 だが、それをどうラピスに伝えればいいのか。
 何かの地雷を踏む気がしてならない俺は、中々切り出せずに困っていたが……。

「カイネさん、私に任せてください」

 悩む俺に、ルルフェルがそう耳打ちをしたのだ。
 お前に任せるのは、それはそれで不安だけど……。

「実はアリスちゃんに誘拐された時に、私全部聞いたんです。どうして力を使えるのかとか、悪魔と私達がどんな存在なのかとか」
「え、マジで?」

 どうやらルルフェルも知らされてたらしい。
 知っててあんなヘラヘラしてたのか、どんなメンタルしてんだこいつ。

「アリスにはどこまで話されたんだ?」
「私達は美少女の姿をしてるだけで、実際は魔力に依存する魔物崩れ……って事ですよね?」

 美少女は置いとくとしても、魔物崩れって……。
 「本当に大丈夫なのか」と心配する俺に、ルルフェルは何も言わずにただニコッと笑って見せた。
 こいつの能天気さが、今は少し頼もしい気がした。
 やっぱり、人間の俺がどうこう言うよりも、同じ境遇のやつが言った方がいいのかもしれない。

「分かった、頼むよ」
 
 ここはルルフェルを信じて頼ってみよう。
 俺のGOサインを得たルルフェルは、事情を知る堕天使代表として、興奮しているラピスに臨んだ。


「ラピスちゃん……。私達、実はもう魔物なんですよ、殆ど」


 いきなりアクセル全開の切り出し方だった。
 ラピスどころか、他のみんなも突然の魔物発言に絶句している。

「魔力は魔王さんがヘルヘイムに撒いた力で、この島はそれに満ちているんです。魔物や悪魔は魔力で生きていて、私達も魔力無しでは生きていけないんです。」

 ルルフェルはどぎつい事を淡々と説明する。
 あと俺より色々聞かされてるな、こいつ……。

「能力が使えたのも、私達がルガルさん達と同じように、魔力を使えるような体になったからで……」
「何言ってるのよ、ルルフェル……。嘘でしょ……?」

 ユールの縋るような問いを、ルルフェルは首を横に振って突き離す。

「天使の力が抜けた空っぽの体に、魔物達と同じ魔力が入った状態なんです。だから、私達はもう……」

 そこで初めてルルフェルが口籠った。

「私達は協力して貰う側なんです。魔物の上位存在である悪魔に、仲良くしてあげるって手を差し伸べて貰っているんです」

 ルルフェルも辛いのだろう、その言葉はどこか自虐的だった。
 そして、ずっと黙って聞いていたラピスがここで口を開く。

「何スか……?それ……?」

 その声は怖がっているのか、怒っているのか、それとも悲しんでいるのか。
 どんな感情なのか俺には計りかねた。

「アタシ達が魔物……?そんな、そんなの聞いてないッス!!」

 感情が爆発したラピスが叫んだ。
 ……いよいよまずいぞ、俺も上手くフォローに回らないと、これからの生活に軋轢を生むかもしれない。
 そんな事を勝手に考え、一人であわあわしていたが、その焦りも次の瞬間には全て吹き飛ばされた。


「ごめんなさい!!」


 突然ルルフェルが全力で謝り出したのだ。
 土下座までして。

「私が全部悪いんです!!堕天なんて、よく分かりもしないものにみんなを巻き込んで!!」

 こんなルルフェルは、初めて見たかもしれない。
 俺も巻き込まれた側だが、こっちの方が辛くなるほど悲痛な姿だった。

「な、何してるのよ!?そんな地面に頭を擦り付けて!」
「土が恋しくなったんですの……?」
「ルル姉ぇ……」

 堕天使達は、ルルフェルの行動と言動、全てにただただ動揺している。

「もっと、もっと早く謝るべきだったんです!!こんなことになるなんて…………私!!」

 ルルフェルの言葉は止まらない。
 黙っていたらずっと謝っていそうな勢いだった。
 そんなルルフェルの姿を見かねたのか、わなわな震えるユールがその言葉を遮った。


「さっきから勝手な事ばっか言わないでよ!!」


 ユールは荒っぽい言葉遣いでそう叫んだ後……。

「あんたに下界に一緒にって誘われた時、その………結構嬉しかったのよ?」

 デレた、目を逸しながら確実にデレた。

「そ、そうですわ!大変な事もありますけども、私達はルルフェルさんのおかげで自由になれましたの!」
「そうだよ!エルはよく分からないで来ちゃったけど……。それでも、みんなと一緒で楽しいよっ!」

 続くようにメルメルとエルも励ましにいく。

「あ、お、俺も……」

 俺はと言うと、凄いかっこ悪い感じで便乗してしまった。


「ル、ルルっち!!」


 俺の声を掻き消すように、今度はラピスが大きな声を出した。
 ラピスも昂った感情の投げ出す先を、完全に失っているように見える。

「困らせてしまってごめんなさいッス……」

 そして、謝りだした。
 何なんだよ、この感情の投げ合い。

「アタシもどうしたらいいか分からなくて、言い過ぎてしまったッス……。ここにいるのはアタシ達が自分で選んだ道、ルルっちは全然悪くなんかないッス!だから、もう謝らないで欲しいッス!」
「み、みんなぁ……!」

 その言葉を聞くと、ルルフェルはさっと土下座を解除し、脇目も振らずにラピス達全員と抱き合う。
 5人とも今までにないくらい団結している、どうやら無事に丸く収まったらしい。

 蚊帳の外感が半端なかった俺は、とりあえず後ろで腕を組んで頷いておく事にした。
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