59 / 74
Falling 3
花火
しおりを挟む
酷いハラスメントを受けた俺は、風呂から上がり派手な外観の城へと戻ってきたのだが……。
「あ、カイネっち!ちょっと見るッス、これぇ!」
帰ってくるなりラピスが、一点を指差して俺を呼ぶ。
中の豪華な風呂に入り終わったであろう堕天使達は、なぜか全員外に出ている。
よく見るとラピス達は、輪になって何かを取り囲んでいた。
そして、その中心には何かすごい見覚えのあるやつがいる。
「……いや、何やってんだよ、お前?」
それは不機嫌そうな顔で、そっぽを向いて座り込んでいるルガルだった。
「エルちゃんが何かいるって、急に外に飛び出して……。それで先程拾ってきたんですの」
「そこの草むらにいたの!エルが見つけたの!偉い?偉い!?」
メルメルとエルの話を聞いて、大体の経緯は何となく分かった。
あんな事があった後に拾ってくる側も、無抵抗で拾われる側も何なんだと思うが……。
「何で隠れていたのか問い詰めても、ずっとこんな感じなんスよ!?何か企んでんじゃないスか!?」
まだ悪魔への抵抗が残るラピスは警戒している。
「あの、ルガルさん?私達と何かお話に来たんですよね、ねえ?」
優しげなルルフェルの声には、少し耳をぴくつかせた。
そして、一瞬ルルフェルの方を見たが、またすぐによそを向いてしまった。
「勝手に入り込んできて、何で不貞腐れてんのよ。どういう状態なのよ」
「しかも、何か湯気出てるッスよ!火でも放つつもりなんじゃないスか!?」
こいつらが困惑するのも無理ない。
日中は散々暴れていたくせに、今は大人しく膝を抱えて、だんまりを決め込んでいるのだ。
さっきの感じだと、ルガルなりに歩み寄ろうとしているのは伝わった。
まさか、風呂上がってそのまま来るとは思わなかったが、きっとルルフェル達と和解しにきたのだろう。
ここは事情を知る人間が、素直になれない悪魔と堕天使の間を取り持ってやろう。
「あのさ、俺さっきルガルと話したんだけど、こいつお前らと……」
「わー!!わー!!わー!!お前となんか何も話とらんわぁ!!わ、わしから話すからお前は黙っとれぇ!!このぽんぽこりんがぁ!!」
全力で抵抗された。
何だよ、ぽんぽこりんって。
湯船で語ったお悩み相談室みたいな内容は、なかった事にしたいらしい。
だが、俺が黙ったら黙ったでルガルはしゅんとして、どうにも話が進まない。
何でこいつらは、面倒くささで個性を出すんだよ。
「ちょっと、何1人でしっとりしてんのよ?こっちは羽の先っぽがチリチリになってんのよ」
ユールの自虐に急かされるように、ルガルは口ごもりながらやっと話し始めた。
「きょ、今日のことは無かったことにしてのぉ、い、今まで通りわしと接するなら……。今後も協力してやらんこともないぞ?」
考えに考えてその言い方なのか……。
ルガルのどの立場から言っているのか分からないその言葉に、一番先に反応したのはルルフェルだった。
「無かった事になんてできないです、プンプン」
両手でプンプンポーズをを取りながら、おどけた風にルルフェルは言った。
よくこの空気でそんな事できたな。
「な!?話が違うぞカイネ!やっぱり、こいつら怒っとるじゃろぉ!」
「落ち着け、口でプンプン言うやつは絶対怒ってねーんだよ」
こんなほっぺ膨らませたやつが本当に怒っている訳ないだろう。
俺に言い寄ってくるルガルに、ルルフェルは続けて言った。
「今日の事も、いつかきっと笑って話せる日が来ます。傷付けあった事も乗り越えて、一緒に大切な思い出にしていくんです。無かった事にするなんて言わないでください」
ルルフェルが珍しく天使みたいなことを言っている。
「むぅ、じゃあ今まで通りってところだけでいいぞ……?」
かすかに天使味を帯びた堕天使に、悪魔は弱々しく要求を妥協する。
「あの、今まで通りってどんな感じッスか?」
黙っていたラピスもここで口を開いた。
最初は難しい表情をしていたが、今はいくらか柔らかな顔になっている。
ここまでのルガルの様子を見て、警戒するのが馬鹿らしくなったのかもしれない。
「どうも何も……。別に適当よ」
「私は野花に水を撒くような感じでしたわ」
やっぱり俺の予想通りだった。
こいつらは何も変わらない、いつも通りだ。
「いや、だから、その……。な、な、な、なかみゃ……」
具体的にどうして欲しいのか。
自分の口で言わざるを得なくなったルガルは、言い辛そうにもごもごする。
「ナカムラ?誰よ、それ?」
「知らんわそんなやつ!!仲間として接してくれと言っとるんじゃあ!!」
ユールの聞き間違いの勢いに助けられ、素直になれない小悪魔はようやく伝えたい事を言えた。
「ルガル。別にいちいち言わなくても、俺らは最初から……」
俺がいい台詞をそこまで言いかけたその時だった。
真っ赤な顔をしたルガルは、それに負けないくらい真っ赤な炎の球を口元にため始めたのだ。
「何するつもりッスか!?」
慌てたラピスがルガルの方へ駆け出した頃には時すでに遅し、ルガルはその大きな火球を……。
空に打ち上げた。
── ヒュルヒュルヒューッ……ドーーン!!!!
乾いた炸裂音がヘルヘイム中に響いた。
……と同時に、夜空を覆う大輪の花が咲いた。
ルガルの放ったそれは完全に花火だった。
それも、今までに見たこともないほど綺麗で大きな……。
「きょ、今日はすまんかったの!!バーカ!バーカ!」
ありがとうの意味を込めた花火だったのだろうか。
夏祭りの後みたいな切ない余韻と、疑う余地がない程の照れ隠しの言葉を残し、ルガルはまた逃げるように帰っていった。
「あ、カイネっち!ちょっと見るッス、これぇ!」
帰ってくるなりラピスが、一点を指差して俺を呼ぶ。
中の豪華な風呂に入り終わったであろう堕天使達は、なぜか全員外に出ている。
よく見るとラピス達は、輪になって何かを取り囲んでいた。
そして、その中心には何かすごい見覚えのあるやつがいる。
「……いや、何やってんだよ、お前?」
それは不機嫌そうな顔で、そっぽを向いて座り込んでいるルガルだった。
「エルちゃんが何かいるって、急に外に飛び出して……。それで先程拾ってきたんですの」
「そこの草むらにいたの!エルが見つけたの!偉い?偉い!?」
メルメルとエルの話を聞いて、大体の経緯は何となく分かった。
あんな事があった後に拾ってくる側も、無抵抗で拾われる側も何なんだと思うが……。
「何で隠れていたのか問い詰めても、ずっとこんな感じなんスよ!?何か企んでんじゃないスか!?」
まだ悪魔への抵抗が残るラピスは警戒している。
「あの、ルガルさん?私達と何かお話に来たんですよね、ねえ?」
優しげなルルフェルの声には、少し耳をぴくつかせた。
そして、一瞬ルルフェルの方を見たが、またすぐによそを向いてしまった。
「勝手に入り込んできて、何で不貞腐れてんのよ。どういう状態なのよ」
「しかも、何か湯気出てるッスよ!火でも放つつもりなんじゃないスか!?」
こいつらが困惑するのも無理ない。
日中は散々暴れていたくせに、今は大人しく膝を抱えて、だんまりを決め込んでいるのだ。
さっきの感じだと、ルガルなりに歩み寄ろうとしているのは伝わった。
まさか、風呂上がってそのまま来るとは思わなかったが、きっとルルフェル達と和解しにきたのだろう。
ここは事情を知る人間が、素直になれない悪魔と堕天使の間を取り持ってやろう。
「あのさ、俺さっきルガルと話したんだけど、こいつお前らと……」
「わー!!わー!!わー!!お前となんか何も話とらんわぁ!!わ、わしから話すからお前は黙っとれぇ!!このぽんぽこりんがぁ!!」
全力で抵抗された。
何だよ、ぽんぽこりんって。
湯船で語ったお悩み相談室みたいな内容は、なかった事にしたいらしい。
だが、俺が黙ったら黙ったでルガルはしゅんとして、どうにも話が進まない。
何でこいつらは、面倒くささで個性を出すんだよ。
「ちょっと、何1人でしっとりしてんのよ?こっちは羽の先っぽがチリチリになってんのよ」
ユールの自虐に急かされるように、ルガルは口ごもりながらやっと話し始めた。
「きょ、今日のことは無かったことにしてのぉ、い、今まで通りわしと接するなら……。今後も協力してやらんこともないぞ?」
考えに考えてその言い方なのか……。
ルガルのどの立場から言っているのか分からないその言葉に、一番先に反応したのはルルフェルだった。
「無かった事になんてできないです、プンプン」
両手でプンプンポーズをを取りながら、おどけた風にルルフェルは言った。
よくこの空気でそんな事できたな。
「な!?話が違うぞカイネ!やっぱり、こいつら怒っとるじゃろぉ!」
「落ち着け、口でプンプン言うやつは絶対怒ってねーんだよ」
こんなほっぺ膨らませたやつが本当に怒っている訳ないだろう。
俺に言い寄ってくるルガルに、ルルフェルは続けて言った。
「今日の事も、いつかきっと笑って話せる日が来ます。傷付けあった事も乗り越えて、一緒に大切な思い出にしていくんです。無かった事にするなんて言わないでください」
ルルフェルが珍しく天使みたいなことを言っている。
「むぅ、じゃあ今まで通りってところだけでいいぞ……?」
かすかに天使味を帯びた堕天使に、悪魔は弱々しく要求を妥協する。
「あの、今まで通りってどんな感じッスか?」
黙っていたラピスもここで口を開いた。
最初は難しい表情をしていたが、今はいくらか柔らかな顔になっている。
ここまでのルガルの様子を見て、警戒するのが馬鹿らしくなったのかもしれない。
「どうも何も……。別に適当よ」
「私は野花に水を撒くような感じでしたわ」
やっぱり俺の予想通りだった。
こいつらは何も変わらない、いつも通りだ。
「いや、だから、その……。な、な、な、なかみゃ……」
具体的にどうして欲しいのか。
自分の口で言わざるを得なくなったルガルは、言い辛そうにもごもごする。
「ナカムラ?誰よ、それ?」
「知らんわそんなやつ!!仲間として接してくれと言っとるんじゃあ!!」
ユールの聞き間違いの勢いに助けられ、素直になれない小悪魔はようやく伝えたい事を言えた。
「ルガル。別にいちいち言わなくても、俺らは最初から……」
俺がいい台詞をそこまで言いかけたその時だった。
真っ赤な顔をしたルガルは、それに負けないくらい真っ赤な炎の球を口元にため始めたのだ。
「何するつもりッスか!?」
慌てたラピスがルガルの方へ駆け出した頃には時すでに遅し、ルガルはその大きな火球を……。
空に打ち上げた。
── ヒュルヒュルヒューッ……ドーーン!!!!
乾いた炸裂音がヘルヘイム中に響いた。
……と同時に、夜空を覆う大輪の花が咲いた。
ルガルの放ったそれは完全に花火だった。
それも、今までに見たこともないほど綺麗で大きな……。
「きょ、今日はすまんかったの!!バーカ!バーカ!」
ありがとうの意味を込めた花火だったのだろうか。
夏祭りの後みたいな切ない余韻と、疑う余地がない程の照れ隠しの言葉を残し、ルガルはまた逃げるように帰っていった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる