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Falling 3
日常
しおりを挟む「……寝不足だ」
昨夜は久しぶりにふかふかベッドで眠ることができ、日頃の疲れもすっかり取れるかと期待していたのだが、横のやつがこっちに寝返りうってきたり、寝言で名前呼んできたり、寝ぼけてどんぐり出したり……。
気が散るし、そわそわするしでほとんど眠れなかった。
「カイネさん、疲れてます?」
「……おかげ様でな」
そんな俺の受難などつゆ知らずのルルフェルに、皮肉まじりに返事をすると、彼女はにこにこ笑って肘でつついてくる。
「もお、そんなこと言ってえ~。お姫様みたいな寝方しててかわいかったですよ?」
「うるせえよ。育ちがいいんだよ、育ちがよぉ」
言葉にもいつものキレが出ない。
今日はもうゆっくり休んでいたい。
「あんた、やたら貴族アピールが多いわよね。そもそも本当に貴族だったの?すごい口悪いけど」
「ガチ貴族だよ、失礼だな」
俺の家柄に疑惑の目を向けるユール。
だが正直、それについて自分が一番驚いている。
身分や外聞も気にせず、何も取り繕わずにいると、俺ってこんなやつなんだな……と。
「カイ姉ぇ!カイ姉ぇ!ほらぁ!!」
そんなことを考えていると、遠くの茂みにエルがこちらへ駆け寄ってくる。
エルは見覚えのある大きな毛玉を抱えていた。
そして、その毛玉はエルの両手の中でくるんと翻り、毛の中に埋まっていた顔が見えた。
「お、おはようじゃ」
ルガルだった。
尻尾に完全に埋まるとボール状になるらしい。
その表情は少し、こちらの様子を伺うように緊張している。
もしかしたら、昨日の今日で、自分から出てき辛くて拾われてきたのかもしれない。
「エル、元いたとこに戻してきなさい」
「な、何でじゃ!」
捨て犬を拾ってきた子供を叱るように、ユールがエルに言った。
「今日は何しに来たんだよ」
「ぐぬぅ、今日はカイネが冷たいのじゃあ……。昨日は優しかったのにぃ」
寝不足だったからか、機嫌が悪いように捉えられてしまった。
「ル、ル、ルガルっち!」
すると、しょんぼり耳が垂れ下がってしまったルガルを、突然ラピスが初めてあだ名で呼んだ。
「み、みんなが仲良くしろって言うから、アタシも仲良くしてやらないこともないッスよ?」
一晩寝てラピスも気持ちの整理がついたのかもしれない。
多少ツンツンしながらも、悪魔であるルガルに歩み寄ろうとしている。
「何じゃ、ルガルっちって?値引きシールみたいな髪飾りしおって」
そんなラピスがつけている赤と白の髪飾りを、ルガルは特売品シールのように揶揄した。
本人には言わないが、実は俺も少し思っていた。
「はぁ!?誰が半額ッスか!?」
この2人が仲良くなるにはもう少し時間が必要そうだが、お互い手を取り合おうとする努力は見られるから大丈夫だろう。
「まあまあ、2人とも落ち着いてください!」
半ギレのラピスを収めるように、ルルフェルが間に入った。
そして、急にリーダーシップを取って今日の予定を話し出す。
「今日は足りない家具を沢山作るつもりだったんです!ルガルさんが来てくれて助かりました!」
おだてるようにルルフェルはそう言った。
「そうですわ!いっぱいいっぱい頑張って、生活水準を上げまくりますわ!!」
メルメルも頭の花を満開にさせてやる気満々だ。
「な、何じゃ。仕方ないのぅ、やっぱりわしが必要なんじゃのぅ!」
ルガルも満更でもなさそうにしている。
もう嬉しいの隠す気ないだろ。
騒がしい朝だが、今日はやけに心穏やかだ。
昨日は色々と大変だったから、日常の大切さを噛み締めているのかも知れない。
こんな魔物だらけの島に放り込まれて、堕天使や悪魔とかいう嘘みたいな存在と一緒に過ごして、そんな状況を日常だと感じてしまっているなんて、俺は一体……。
「すっかり慣れちまったな……」
無意識に口から出たその言葉を、ルルフェルは聞き逃さなかった。
「女の子に囲まれて生活する事にですか?」
「うるせえよ!」
悪戯っぽい顔をするルルフェルに、反射的に今日一番の声が出てしまった。
「ウフフフフ、やっと元気出ましたね!やっぱりカイネさんは、ちょっと荒っぽいくらいが一番好きです!」
こいつの能天気な笑顔に、俺は今日も振り回されている。
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