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Falling 4
デバフかかっただけじゃねえか
しおりを挟む「おい!貴様らもこっち来て、私と一緒に声をかけろ!あれだけの魔力を吸収したのだ、もう少しで目覚めるぞ!」
とんでもない事を仕出かした自分の右手を、まじまじと見つめていると、この状況にただ1人順応しているアンリスが大声で俺たちを呼ぶ。
「魔力、魔力だったんスね。さっき吸われたやつ……」
自分の体が魔力を帯びている事を、ラピスは改めて実感して複雑な表情をしている。
「ま・お・う!ま・お・う!ま・お・う!」
「いいぞ、小さいの!」
アンリスの言う事を素直に聞いたエルが、魔王の耳元でコールを始める。
そんなノリにはなれない他の面々を置いてきぼりにして、アンリスとエルは声をかけ続ける。
「う……う……」
すると、魔王はその声に反応するように、小さく呻くような声をあげ始めた。
「ま、魔王様ぁ!!」
その声を聞いて嬉しくなった堕天使兼悪魔は、さらに声量を上げる。
「うるさい……」
目覚めた魔王が最初の言葉は、まさに俺達の気持ちの代弁だった。
千年越しの邂逅に冷たくされたアンリスは、見る見る落ち込んで大人しくなる。
「さて……」
そんなアンリスを尻目に、魔王はゆっくりと起き上がる。
次に一体何をするのか。
全く予測不能なその一挙一動に、俺は息を呑んで目を向けたが……。
「やってくれたな、お前ら」
やっぱり予測不能だった。
なぜか俺とルルフェルを見て、この魔王らしき少女は険しい顔で睨みつけてくるのだ。
「……やったって何をですか?」
魔王に感謝こそされど、敵視されるような事など何もしていないはずだ。
俺はその一心で魔王に恐る恐る聞き返した。
「とぼけるのか?妾の能力を利用し、スキルとして閉じ込めたかと思えば、あろう事か人間にギフトとして贈った」
その返答を聞いて、途端に俺の背筋は一気に凍りだす。
色々と疑問は絶えないが、内容的に完全にこちら側に非があるような気がしてきた。
「堕天スキルって、魔王さんの力だったんスか!?」
「そう。まさか天使に加工され、スキルにされるなんて、夢にも思わなかった」
魔王の話が本当かどうかは分からない。
だが、こいつが俺の手から出てきたのも事実。
いや、どちらにしろそれは俺がどうこうと言うよりも……。
「ルルフェル!確かお前の友達が作ったんだろ、このスキル!どうなってんだ、おい!?」
とりあえず、このスキルを天界から持ち出し、俺に渡した張本人を問いただす。
俺は完全に巻き込まれた被害者なのだ。
「し、知りませんよ!私も託されだけなんですからぁ!本当ですよ、本当!!」
首を横に振り、全力で否定するルルフェル。
嘘はついていない……気がするけど、こいつもめっちゃ隠し事してくるからなぁ……。
破滅司ってるやつだし。
「お前もお前だ、カイネ。妾が何度も出せと頼んだのに、お前は無視した」
「頼んだ……?」
矛先は俺に向けられたが、その内容は全く心当たりがない。
「お前の夢の中に何度も出て、天啓しにいった」
「天啓?」
天啓と言えば、人の夢枕であれこれ好き勝手にお告げをしてくる、ルルフェル達がたまにしてくる悪戯だ。
だが、あいつらがやってくるしょうもない天啓ごっこ以外に、そんな事された覚えはないのだが……。
「あ、それ全部こっちに来てたわよ」
ユールが手をポンと叩いて、思い出したようにそう言った。
……何でお前の方に行ってんだよ。
「何……?じゃあ、なぜお前は無視した?」
「いや、だって誰かの悪戯だと思うじゃない……」
天啓が本来の意味を成していない。
「俗に言う天啓ミスですわね、よくある話ですわ」
「ぐぬぅ……。堕天した身とは言え、この妾がそのようなミスを犯すとは……。それ程までに弱っているという事か……」
天啓で遊んだり頻繁にミスったり、何なんだ天使って。
それ頼りにして生きてる人間もいるんだぞ、しっかりしろよ。
「じゃ、じゃが、これで魔王様も晴れて自由の身じゃ!いやー天界に行かずに済んでよかったのぉ!めでたいのぉ!」
痛恨のミスに頭を抱える魔王を、ルガルは励ますように讃える。
手から小さい花火をパチパチと放ちながら、ちょこちょこ小躍りをしだした。
こうやって、まめによいしょよいしょして成り上がったんだろうな、こいつは……。
「いや、妾は天界に囚われたまま……」
しかし、その祝福はすぐに取り止めになる。
おめでたムードのルガルも、「ふぇ?」と足を止めた。
「どういう事です!?魔王様はここにおられるではありませんか!」
アンリスは魔王をぺたぺた触って、ちゃんと実体がある事を確認する。
「妾はスキルにされる際、半分に切り離された。いや、正確には3:7くらい……1:9かも。そして、9くらいの方はまだ天界に留まったまま」
切り離すってなんだ……。
段々少なくなっていく割合が、どうでもよくなるほど、こいつの体の仕組みが気になる。
「別にこれでもいいんじゃない?ちゃんと会話できるんだし」
やはりユールも天界には極力関わりたくないのだろう。
妥協したくて仕方がないユールに、「言い訳ないだろ」と、アンリスは食ってかかる。
「悲観する事はないよ。最初の予定通り、どうにかして天界に乗り込むだけの事。ボク達は不死の身なんだ、天使の裏をかいてちょっと出し抜くくらいなら……」
こっちの悪魔は、まだ強行突破の姿勢を捨てていないらしい。
だが、ギリィが悪魔の不死性を前提にした考えを提案していると、この魔王はまたとんでもない事を口にする。
「お前ら、もう不死ではないけど?」
自信満々に語っていたギリィの表情が、その前提条件と一緒にあっという間に崩れる。
「1の方の妾が動くには、かなりの魔力が必要だった。お前達の魔力も結構吸収したから、不死の体はもう誰一人保てていないはずだ」
行き当たりばったりではあったが、なぜか魔王を見つける事もできたし、だいぶ進展したかと思ったのも束の間、ただただ状況が悪くなっただけだった。
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