【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

文字の大きさ
71 / 74
Falling 4

デバフかかっただけじゃねえか

しおりを挟む

「おい!貴様らもこっち来て、私と一緒に声をかけろ!あれだけの魔力を吸収したのだ、もう少しで目覚めるぞ!」

 とんでもない事を仕出かした自分の右手を、まじまじと見つめていると、この状況にただ1人順応しているアンリスが大声で俺たちを呼ぶ。

「魔力、魔力だったんスね。さっき吸われたやつ……」

 自分の体が魔力を帯びている事を、ラピスは改めて実感して複雑な表情をしている。

「ま・お・う!ま・お・う!ま・お・う!」
「いいぞ、小さいの!」

 アンリスの言う事を素直に聞いたエルが、魔王の耳元でコールを始める。
 そんなノリにはなれない他の面々を置いてきぼりにして、アンリスとエルは声をかけ続ける。

「う……う……」

 すると、魔王はその声に反応するように、小さく呻くような声をあげ始めた。
 
「ま、魔王様ぁ!!」

 その声を聞いて嬉しくなった堕天使兼悪魔は、さらに声量を上げる。


「うるさい……」


 目覚めた魔王が最初の言葉は、まさに俺達の気持ちの代弁だった。
 千年越しの邂逅に冷たくされたアンリスは、見る見る落ち込んで大人しくなる。

「さて……」

 そんなアンリスを尻目に、魔王はゆっくりと起き上がる。
 次に一体何をするのか。
 全く予測不能なその一挙一動に、俺は息を呑んで目を向けたが……。

「やってくれたな、お前ら」

 やっぱり予測不能だった。 
 なぜか俺とルルフェルを見て、この魔王らしき少女は険しい顔で睨みつけてくるのだ。

「……やったって何をですか?」

 魔王に感謝こそされど、敵視されるような事など何もしていないはずだ。
 俺はその一心で魔王に恐る恐る聞き返した。

「とぼけるのか?妾の能力を利用し、スキルとして閉じ込めたかと思えば、あろう事か人間にギフトとして贈った」

 その返答を聞いて、途端に俺の背筋は一気に凍りだす。
 色々と疑問は絶えないが、内容的に完全にこちら側に非があるような気がしてきた。

「堕天スキルって、魔王さんの力だったんスか!?」
「そう。まさか天使に加工され、スキルにされるなんて、夢にも思わなかった」

 魔王の話が本当かどうかは分からない。
 だが、こいつが俺の手から出てきたのも事実。
 いや、どちらにしろそれは俺がどうこうと言うよりも……。


「ルルフェル!確かお前の友達が作ったんだろ、このスキル!どうなってんだ、おい!?」

 
 とりあえず、このスキルを天界から持ち出し、俺に渡した張本人を問いただす。
 俺は完全に巻き込まれた被害者なのだ。

「し、知りませんよ!私も託されだけなんですからぁ!本当ですよ、本当!!」

 首を横に振り、全力で否定するルルフェル。
 嘘はついていない……気がするけど、こいつもめっちゃ隠し事してくるからなぁ……。
 破滅司ってるやつだし。

「お前もお前だ、カイネ。妾が何度も出せと頼んだのに、お前は無視した」
「頼んだ……?」

 矛先は俺に向けられたが、その内容は全く心当たりがない。

「お前の夢の中に何度も出て、天啓しにいった」
「天啓?」

 天啓と言えば、人の夢枕であれこれ好き勝手にお告げをしてくる、ルルフェル達がたまにしてくる悪戯だ。
 だが、あいつらがやってくるしょうもない天啓ごっこ以外に、そんな事された覚えはないのだが……。

「あ、それ全部こっちに来てたわよ」

 ユールが手をポンと叩いて、思い出したようにそう言った。
 ……何でお前の方に行ってんだよ。

「何……?じゃあ、なぜお前は無視した?」
「いや、だって誰かの悪戯だと思うじゃない……」

 天啓が本来の意味を成していない。

「俗に言う天啓ミスですわね、よくある話ですわ」
「ぐぬぅ……。堕天した身とは言え、この妾がそのようなミスを犯すとは……。それ程までに弱っているという事か……」

 天啓で遊んだり頻繁にミスったり、何なんだ天使って。
 それ頼りにして生きてる人間もいるんだぞ、しっかりしろよ。

「じゃ、じゃが、これで魔王様も晴れて自由の身じゃ!いやー天界に行かずに済んでよかったのぉ!めでたいのぉ!」

 痛恨のミスに頭を抱える魔王を、ルガルは励ますように讃える。
 手から小さい花火をパチパチと放ちながら、ちょこちょこ小躍りをしだした。
 こうやって、まめによいしょよいしょして成り上がったんだろうな、こいつは……。


「いや、妾は天界に囚われたまま……」


 しかし、その祝福はすぐに取り止めになる。
 おめでたムードのルガルも、「ふぇ?」と足を止めた。

「どういう事です!?魔王様はここにおられるではありませんか!」

 アンリスは魔王をぺたぺた触って、ちゃんと実体がある事を確認する。

「妾はスキルにされる際、半分に切り離された。いや、正確には3:7くらい……1:9かも。そして、9くらいの方はまだ天界に留まったまま」

 切り離すってなんだ……。
 段々少なくなっていく割合が、どうでもよくなるほど、こいつの体の仕組みが気になる。

「別にこれでもいいんじゃない?ちゃんと会話できるんだし」

 やはりユールも天界には極力関わりたくないのだろう。
 妥協したくて仕方がないユールに、「言い訳ないだろ」と、アンリスは食ってかかる。

「悲観する事はないよ。最初の予定通り、どうにかして天界に乗り込むだけの事。ボク達は不死の身なんだ、天使の裏をかいてちょっと出し抜くくらいなら……」

 こっちの悪魔は、まだ強行突破の姿勢を捨てていないらしい。
 だが、ギリィが悪魔の不死性を前提にした考えを提案していると、この魔王はまたとんでもない事を口にする。


「お前ら、もう不死ではないけど?」

 
 自信満々に語っていたギリィの表情が、その前提条件と一緒にあっという間に崩れる。

「1の方の妾が動くには、かなりの魔力が必要だった。お前達の魔力も結構吸収したから、不死の体はもう誰一人保てていないはずだ」

 行き当たりばったりではあったが、なぜか魔王を見つける事もできたし、だいぶ進展したかと思ったのも束の間、ただただ状況が悪くなっただけだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

処理中です...