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Falling 4
いらなかったのか……?
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不死という最強のステータスを突然奪われたギリィは、取り乱してこそいないが、何かひどく考え込んでいる様子だった。
そして、考え込んだ末に何を思ったか、自分の腕に軽く傷をつけたのだ。
「……ホントだ、何だか死にそうな気がする」
そんなんで分かるのか……?
俺には分からない世界だが、別に自暴自棄になった訳ではなくてほっとした。
「やーい、やーい。死なないマウント取ってたくせにぃ。それじゃただの全身軟らか人間じゃない」
僅かに血の滲んだ腕を見つめているギリィを、ユールが無駄に煽っていく。
どうしてこう、こいつはいつも自分から墓穴を掘りたがるのか。
何されても知らんぞと思ったが、ギリィの反応は意外なものだった。
「そうかい?人間、人間に見えるかい?ホントかな?」
ギリィはなぜか嬉しそうにしている。
そうだった。
確かこいつら、前に人間になりたいとか言ってた。
「ねぇカイネ、人間のキミから見てどう?ボク、人間に近づいたかい?正直に言ってくれていいよ?」
うわ、こっちに振ってきた。
こんなはしゃいだ様子のこいつ、初めて見たかもしれない。
「近づいたとは思うぞ、前よりかは」
当たり障りのないコメントをしたが、それでも嬉しいのか、珍しく口元がだらしなく緩んでいる。
確かに今の表情は少し人間らしいかもしれない。
「アリスぅ?これでウチらもだいぶ人間に近づいたやんなぁ」
すやすや眠っているアリスを抱きながら、ティアも不死じゃなくなったことを喜んでいる。
「お前らは結構遠いけどな、だって見た目スライムだし」
「何や、意地悪言わんといてやぁ。一緒に空飛んだ仲やのにぃ、帰りのフライトも楽しみやなぁ?」
失敗した、素直に優しい言葉かけとけばよかった。
また、空中で悪戯されてしまう。
危険を察知した俺は、ルガルと帰りの担当の交換をしようとしたのだが……。
「あやつら、これでわしを怖がらないかのぉ?もっと気安く接してくれるかのぉ?一緒に寝てくれるかのぉ?」
何かこっちも嬉しそうにしている。
そう言えば、ルガルもルガルでヘルウルフ達のよそよそしさを気にしていた。
何なんだこいつら、世の中には不老不死を求めて、滅茶苦茶やってる人間もいるのに……。
「カイネ様、魔王さんが手からいなくなりましたけど……。その、能力はまだ使えますの?」
「あ、そう言えば」
聖水を花にいっぱい浴びたおかげか、メルメルがいつもより冴えている。
スキルの核になっていた魔王が出ていったのだから、もう使えなくなっているかもしれない。
「ルルフェル、ちょっと来てくれ」
「はいはいはーい!」
呼ぶとルルフェルは、子犬のようにすぐに来てくれた。
「ちょっと試し撃ちするから、動くなよ」
「それ私でやる必要あります!?その辺にやってくださいよ!」
だが、的にはなってくれなかったので、とりあえず一番無害などんぐりで試してみることにした。
すると、俺の手からはどんぐりが、次々にころころころころと。
どうやら、力を使う分には問題ないらしい。
「よかった。それ使えなかったら、カイネはただの思春期だもんね」
「うるせーよ、こちとら高等部中退の16歳なんだ」
俺とユールのいつもの軽口合戦だったが、それを聞いたラピスはなぜかぎょっとした顔をしている。
「え、カイネっち……中退なんスか?」
純粋に学歴を哀れまれてしまった。
自分で口走った事とはいえ、そんな反応されると心に刺さるものがある。
「そうなんですよ、びっくりですよね」
「おめえのせいだろうが!!」
中退の原因が他人事のように笑っている。
その頬を引っ張ってやろうと、俺は逃げるルルフェルを追いかけたのだが……。
「貴様らっ!さっきから何のつもりだ!?魔王様の御前だぞ!ふざけているのか!?叩き斬るぞ!」
ついにアンリスに怒られてしまった。
言われてみれば、さっきから魔王が不自然に大人しい。
もしかして、怒っているのかもしれない。
俺は恐る恐る魔王の様子を覗ってみる。
「お前ら、もしかして不死いらなかった……?せっかく与えてやったのに、妾が頑張って……」
魔王は落ち込んでいた。
部下との価値観のすれ違いを思い悩んで。
「ま、魔王様ぁ!!わ、私は不死の体を失ってとても残念です!死にたくないです!ですから、お顔を上げてください!」
アンリスは必死に魔王をフォローする。
俺の中で魔王の威厳が3段階くらいは下がった。
「……疲れた、今日はもう帰る。妾達の城に」
すっかり拗ねた魔王は、もう帰りたがっている。
しかも、あの城を当然のように共有資産として見ている。
「お、おい、ここにいる他の悪魔達はいいのか?」
念の為、まだ像のままの悪魔のことも確認しておいた。
魔王がいるなら、他の悪魔だってちゃんと従うだろうし。
そう思って尋ねてみたのだが、魔王の気持ちはもうこっちに向いていない。
「今はいい、疲れる。あいつら、魔力すごい食うし」
そう言って、とぼとぼ歩く魔王の後ろ姿を見て、俺の中の威厳ランクは更にもう1段階下がった。
そして、考え込んだ末に何を思ったか、自分の腕に軽く傷をつけたのだ。
「……ホントだ、何だか死にそうな気がする」
そんなんで分かるのか……?
俺には分からない世界だが、別に自暴自棄になった訳ではなくてほっとした。
「やーい、やーい。死なないマウント取ってたくせにぃ。それじゃただの全身軟らか人間じゃない」
僅かに血の滲んだ腕を見つめているギリィを、ユールが無駄に煽っていく。
どうしてこう、こいつはいつも自分から墓穴を掘りたがるのか。
何されても知らんぞと思ったが、ギリィの反応は意外なものだった。
「そうかい?人間、人間に見えるかい?ホントかな?」
ギリィはなぜか嬉しそうにしている。
そうだった。
確かこいつら、前に人間になりたいとか言ってた。
「ねぇカイネ、人間のキミから見てどう?ボク、人間に近づいたかい?正直に言ってくれていいよ?」
うわ、こっちに振ってきた。
こんなはしゃいだ様子のこいつ、初めて見たかもしれない。
「近づいたとは思うぞ、前よりかは」
当たり障りのないコメントをしたが、それでも嬉しいのか、珍しく口元がだらしなく緩んでいる。
確かに今の表情は少し人間らしいかもしれない。
「アリスぅ?これでウチらもだいぶ人間に近づいたやんなぁ」
すやすや眠っているアリスを抱きながら、ティアも不死じゃなくなったことを喜んでいる。
「お前らは結構遠いけどな、だって見た目スライムだし」
「何や、意地悪言わんといてやぁ。一緒に空飛んだ仲やのにぃ、帰りのフライトも楽しみやなぁ?」
失敗した、素直に優しい言葉かけとけばよかった。
また、空中で悪戯されてしまう。
危険を察知した俺は、ルガルと帰りの担当の交換をしようとしたのだが……。
「あやつら、これでわしを怖がらないかのぉ?もっと気安く接してくれるかのぉ?一緒に寝てくれるかのぉ?」
何かこっちも嬉しそうにしている。
そう言えば、ルガルもルガルでヘルウルフ達のよそよそしさを気にしていた。
何なんだこいつら、世の中には不老不死を求めて、滅茶苦茶やってる人間もいるのに……。
「カイネ様、魔王さんが手からいなくなりましたけど……。その、能力はまだ使えますの?」
「あ、そう言えば」
聖水を花にいっぱい浴びたおかげか、メルメルがいつもより冴えている。
スキルの核になっていた魔王が出ていったのだから、もう使えなくなっているかもしれない。
「ルルフェル、ちょっと来てくれ」
「はいはいはーい!」
呼ぶとルルフェルは、子犬のようにすぐに来てくれた。
「ちょっと試し撃ちするから、動くなよ」
「それ私でやる必要あります!?その辺にやってくださいよ!」
だが、的にはなってくれなかったので、とりあえず一番無害などんぐりで試してみることにした。
すると、俺の手からはどんぐりが、次々にころころころころと。
どうやら、力を使う分には問題ないらしい。
「よかった。それ使えなかったら、カイネはただの思春期だもんね」
「うるせーよ、こちとら高等部中退の16歳なんだ」
俺とユールのいつもの軽口合戦だったが、それを聞いたラピスはなぜかぎょっとした顔をしている。
「え、カイネっち……中退なんスか?」
純粋に学歴を哀れまれてしまった。
自分で口走った事とはいえ、そんな反応されると心に刺さるものがある。
「そうなんですよ、びっくりですよね」
「おめえのせいだろうが!!」
中退の原因が他人事のように笑っている。
その頬を引っ張ってやろうと、俺は逃げるルルフェルを追いかけたのだが……。
「貴様らっ!さっきから何のつもりだ!?魔王様の御前だぞ!ふざけているのか!?叩き斬るぞ!」
ついにアンリスに怒られてしまった。
言われてみれば、さっきから魔王が不自然に大人しい。
もしかして、怒っているのかもしれない。
俺は恐る恐る魔王の様子を覗ってみる。
「お前ら、もしかして不死いらなかった……?せっかく与えてやったのに、妾が頑張って……」
魔王は落ち込んでいた。
部下との価値観のすれ違いを思い悩んで。
「ま、魔王様ぁ!!わ、私は不死の体を失ってとても残念です!死にたくないです!ですから、お顔を上げてください!」
アンリスは必死に魔王をフォローする。
俺の中で魔王の威厳が3段階くらいは下がった。
「……疲れた、今日はもう帰る。妾達の城に」
すっかり拗ねた魔王は、もう帰りたがっている。
しかも、あの城を当然のように共有資産として見ている。
「お、おい、ここにいる他の悪魔達はいいのか?」
念の為、まだ像のままの悪魔のことも確認しておいた。
魔王がいるなら、他の悪魔だってちゃんと従うだろうし。
そう思って尋ねてみたのだが、魔王の気持ちはもうこっちに向いていない。
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