ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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ハンサム・ウーマン

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山頂には、大きな石柱が数本、等間隔に立てられていて、
その先に台座のようなものがあったの。
たぶん、あの最座の上に貢物を置くんだろうなって感じ。

古代の南米では、動物や時には人が生贄として、捧げられてたって、
本で読んだような気がするけど、ここでは、農作物が捧げられていたみたい。
なんとなく、その痕跡が残ってたから、ちょっとホッとした。

だって、たとえ、それが当時の文化だったとしても、過去生であったとしても
生贄を捧げてたなんてことは、受け容れ難いよね(汗)

「ね、アトランティーナ、あの台座の上に貢物を捧げてたんだよね?」

「そうね」

「あのさ・・・。生贄とかじゃないよね?」

違うとは思ったけど、念の為、アトランティーナに聞いてみた。

「ええ。ここでは、生贄は捧げていなかったはずよ。他の集落では、定期的に
生贄を捧げていたんだけど、ここは例外だったのよ。覚えていない?」

「えっ、この集落だけ生贄を捧げてなかったってこと?」

「そう。以前は、この集落でも生贄を捧げていたんだけど、
ミウがシャーマンになってから生贄を廃止にしたのよ」

「えっ、私が廃止したの!?」

「そうよ。<神は、慈悲深い存在であり、命を創りたもうた御方。
何かと引き換えに、その尊い、神から授かった命を差し出せとは
仰らないはずだ>って、言ったの。それで、生贄は廃止されて、
代わりに農作物を捧げることにしたの。

<この農作物にこそ、我々の愛と真心、そして、命を授けてくださった
神への感謝の念がこもっているもの。神への貢物として相応しいであろう>
ってね」

「へぇ~!なんか私、カッコイイね(笑)」

「そうよ。ミウは、先人の良いところは踏襲したけれど、
全てを過去に倣って行うようなことはしなかったの。
だから、お父上もミウには、一目置いていたし、集落の人たちも
ミウのことを新しいリーダーとして、慕っていたのよ」

「ふぅ~ん、スゴイ存在だったんだね」

「そうね、確かに、ミウの言葉を借りるなら、スゴイ存在ね。
でも、それゆえに、ミウ自身が背負ってしまった重りも大きかったんだと思うわ。
だって、ミウは、シャーマンではあったけれど、その前に一人の人間であり、
一人の女性だったわけだからね」

「ってことは、好きな人とかっていたの?」

「いたわよ。恋仲だった人がね」

「えっ、どんな人?」

「この集落の戦士だった人。戦士のリーダーね。ミウは、戦士でもあったから、
一緒に作戦を練ったりっていうこともしていたのよ」

「え~っ、ますます私、カッコイイ!」

「物語を読んでいたら、そんな女性は、カッコイイと思うかもしれないけど、
当人の立場に立ってみたら、大変だと思うわよ。背負うものが大きすぎて、
押し潰されてしまってもおかしくないと思うけど(苦笑)」

「そっか・・・。それで、結局は、その重圧に押し潰されて、
私は壊れちゃったのかもしれないもんね。それを未来にまで持ち越して、
未来の自分まで苦しめちゃったってことか・・・。

確かにカッコイイで、済まされる話じゃないよね。っていうか、
全然、カッコ良くなかった(汗)」

「カッコイイかどうかは別として、集落のみんなは、ミウのことを
尊敬していたし、慕っていたし、憧れてもいたわよ」

「今の私みたいに、第三者的目線だと、やっぱり、カッコイイんだよね(苦笑)」

「そういうことね。今の言葉で表現するなら・・・そうね・・・。
ハンサム・ウーマンって感じかしらね」

「ハンサム・ウーマンね。今の私が目指してるところだね(汗)
ところで、毎日、ここで儀式を執り行ってたって言ってたけど、毎日の儀式って、
どんなことをしてたの?」

「毎朝、太陽が地平線に顔を出した頃に山頂を目指して登り始めるの。
そして、ここで、集落の平和と農作物の豊穣、集落に住む人々の健康と幸せを
祈るのよ」

「それを毎日?っていうか、毎朝?一人で?」

「そうよ」

「太陽が地平線に顔を出した頃っていうことは、雨の日とかは登らないの?」

「雨の日は、集落にある儀式を行う場所で、祈るの。雨もまた、農作物を
育てる上でも、人々が生きる上でも大切な恵みだから、雨に感謝を
捧げるための儀式を執り行っていたのよ」

「ってことは、天気に関係なく、毎朝、何かしらの儀式を執り行っていたって
ことなんだ。へぇ~、すっごい真面目っていうか、律儀っていうか・・・。
今の私とは、全然、違うんだね(苦笑)」

「そうかしら?今のミウだって、一生懸命、仕事に取り組んでいるじゃない?
チーフとして、チームのメンバーをまとめているでしょ?
それに、ミウのチーム・メンバーは、みんなミウに憧れていると思うわよ。
だから、私から見たら、スピリットの質は変わっていないけどね」

「そうかなぁ。なんか、照れるね」

「そうじゃなかったら、何の相談もなく、大きなプレゼンを決めてきたら、
みんな反抗しただろうし、バラバラになって、形にならなかったと思うわよ」

「あっ、その点に関しては、私のわがままにつきあってもらって、
本当に感謝してるんだよね」

「彼らも感謝していると思うわよ。だって、新しい挑戦に参加することが
出来たんだもの。プレゼンの勝ち負けよりも彼らにとっては、
意義のあることだったと思うけど」

「あっ、なんか、そんなようなことを言われたような気もする(汗)」

「でしょ?当時のミウも周りから慕われているとか、憧れられているとか、
そういったことには無頓着でね(苦笑)
自分の立場、役割、責任で、動くような人だったの」

「自分の感情は抜きで?」

「蔑ろにしていたところはあるんじゃない?だから、時々、苦しくなっていた
みたい。でも、そんなミウのことを当時の恋人は理解していたから、
影で支えていたのよ」

「支えられていたことに気づいていたのかな?」

「さぁ、どうかしらね。そんな余裕は、もしかしたら、なかったかも
しれないわね。もし、そういう余裕が少しでもあったら、
結果は変わっていたかもしれないもの」

「結果って?」

「ミウが、未来に荷物を持ち込むことはなかったんじゃないかなってことよ」

「当時の私には、アトランティーナが傍にいなかったの?
アトランティーナじゃなくても、それに近いような存在とか。
だって、シャーマンだったんだよね?シャーマンって、神託を
授けられるんでしょ?」

「ミウの前は、ミウのおばあさま、つまり、ミウのお父上のお母様が
シャーマンをしていたの。だから、ミウは、そのおばあさまから、
シャーマンとしての在り方や心構えを教わっていたのね。

もちろん、ミウは、神託を受け取ることは出来ていたけど、
個人的な神託ではなく、集落に関するものを受け取っていたの。

でも、ミウも人間だし、感情に振り回されてしまうこともあったのよ。
最初の方に話したけど、現代みたいに情報がたくさんある時代では
ないでしょ?だから、どうしても受け取った神託をそのままではなく、
その時にある情報やその時々の感情を混じえて理解してしまうことが
多かったの」

「それって、せっかく神託を受け取っても信憑性が薄くなるよね?
なんか、神託を受け取ってる意味がないような気がする」

「今のミウなら、そう感じるかもしれないわね。
でも、私に出会う前のミウだったら、どうだったかしら?
たとえば、神託が降りてきても、それをそのまま信じることは
出来たかしら?」

「そう言われると・・・。難しいかもしれないね。そもそも、今の私は、
神託を受け取るっていう立場にないから、何を言われても信じないと思うな」

「そうよね。じゃ、そろそろ山を下りて、集落に戻ってみる?」

「うん!私のこと、見てみたい!」

「じゃ、深く息を吸って、ゆっくり息を吐いて。いつものように、
呼吸を整えていきましょうね」

「はい。スゥ~、フゥ~、スゥ~、フゥ~、スゥ~、フゥ~。ハァ~~~」

「身体の力は抜けた?」

「うん、大丈夫。今、とっても気持ち良いよ」

「じゃ、集落に戻るわね」

「はい」

またまた、あっという間に集落に戻った。やっぱり、身体がフワッと軽くなって、
浮き上がったような感じがした。身体は無いんだけどね(苦笑)
さっきとは違って、何やら騒がしくなっていた。

「アトランティーナ、さっきとは雰囲気が違うね」

「そうね。さっきから、少し月日が経っているから」

「えっ、そうなの!?」

「そうよ。社会科見学に来たわけではないんだから、日々の生活を観察する必要は
ないでしょ?ミウのスピリットが抱え込んでいる重りの核心を見ないとね」

「そうなんだけど・・・。もう?って感じもしないではないかな(苦笑)」

「当時の恋バナとか、見たかった?」

「まぁ、それも少しあるかも(汗)」

「それも含めて、ここに答えがあるから安心して」

「恋バナもあるの?」

「まぁ、見てみましょう。あっ、ここからは、私の説明ではなく、
あなたが体験するのよ」

「えっ、どういうこと?」

「私は、ここに居るから、ミウは、当時の世界に入るの。大丈夫。
ただ、体験するのではなくて、当時はミウが知らなかったことも体験することが
出来るようになってるから、何が起こっていたのかが分かると思うわ。

ちなみに、当時はミウではなくて、ルナだから。ま、言わなくても
当時の記憶の中に行くワケだから、分かるとは思うけど、念の為ね。
じゃ、行ってらっしゃい」

「え、え~っ!」

アトランティーナの言葉が、私にとって衝撃的だったからなのか、
どうなのかは分からないけど、一瞬、フッと目の前が暗くなったような気がして、
スッと意識が遠のいていった。


<次回へ続く>
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