ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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頭より気持ちを優先

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午前中いっぱいかかったとはいえ、まだ、11時半を
少し回ったくらい。今から会社を出れば、ランチピーク前に
お店に入ることが出来る。

チームメンバーが私を入れて6人でしょ。それに部長と
弦ちゃんを加えて8人。まぁ、結構な人数なワケで、通常なら
予約必須って感じだよね(苦笑)それを予約なしで入ろうと
してるんだから、ちょっと無謀かもしれないけど、ここは
思いの力を使えばなんとかなるでしょ!(笑)

「部長、少し早いですけど、人数も多いですし、もう出ませんか?
ランチど真ん中の時間だと入れない可能性もありますからね」

「そうですね。合計で・・・8人ですか。なかなかの大所帯
ですね(苦笑)私は大丈夫ですが、皆さんも大丈夫ですか?
午前中のうちに片付けておきたいことなどがあれば、そちらを
優先させてくださいね。」

「いえいえ、せっかく、部長と藤崎さんとご一緒できるワケですから、
みんなも調整すると思いますよ。ね、みんな、このままランチに行っても
大丈夫だよね?午前中のうちに処理しておかないといけない案件が
ある人っている?」

「はい、もちろんです!先程、頂いたお話は、まとめてあるので、
午後、みんなでシェアして、詰めて行けば大丈夫だし、もう、ほとんど
作業は終わってるので、特に午前中のうちに処理しておかなきゃ
ならないことがある人はいないと思うんですけど・・・大丈夫だよね?」

「はい、大丈夫です!」

いつもなら、谷潤也が声をあげるのに、今日は中川理沙子が声をあげて、
みんなに聞いてくれた。まぁ、彼女も思ったことはハッキリ口に
するタイプだし、食べることが大好きだから、部長と一緒だったら、
ちょっと良いランチにありつけるかもって、ちょっと前のめりに
なったのかな(笑)彼女だけじゃなくて、他のメンバーも部長と
ランチなんて久しぶりだから、ちょっとは楽しみなのかもしれないね。

前の部長だったら、一緒にランチなんて勘弁って感じだったけど、
真田部長は、みんなから慕われてるんだ。話が分かるし、色々と勉強に
なる話もしてくれるし、何より私たち一人ひとりのことを認めて
くれてるのが伝わってくるから、嬉しいんだよね。

たぶん、みんなも同じように思ってるんだと思う。でもさ、上司と一緒に
ランチに行くのがイヤじゃない環境って、恵まれてるよね。私は、素直に
そう思うし、そういう部長の下で仕事が出来ることを有り難いなとも
思ってる。

「じゃ、みんなで行きましょう!ところで、お店はどうしますか?
私は、普段、あまり外に行かないので、お店を知らないんですよ(苦笑)」

「あっ、それなら大丈夫です。ウチの中川理沙子がグルメなので、
美味しいお店は網羅してると思うので(笑)」

「そういえば、前回、シネコンの近くでランチした時も
中川さんオススメのお店でしたよね?あの時も美味しかったなぁ」

「あ、ありがとうございます!出来るだけ、会社に近い方が良い
ですよね?移動する時間が勿体ないし。何か食べたいものってありますか?
藤崎さん、部長、いかがでしょう?」

「藤崎さん、いかがですか?ここは、藤崎さんが好きなものを
優先させましょう」

「いやいや、そういうお気遣いは必要ありませんから(汗)
でも、ありがとうございます、真田部長。そうですねぇ・・・。
どちらかというと、あっさりしたものが良いかな。でも、軽すぎない方が
良いし・・・。なんて難しい注文でしたね(汗)

僕は、好き嫌いもないし、何でも食べられるので、中川さんオススメの
お店でお願いします」

「わぁ~、なんか信頼して頂けて嬉しいです!そうだなぁ・・・。
とりあえず、エレベーターで下まで降りましょう。その間に考えます!」

「あっ、中川さん、今日のランチは私がご馳走しますので、ちょっと
高めでも大丈夫ですよ(笑)」

「えっ、本当ですか!?やった~!じゃあ、なかなか行けない
お店でも良いですか?すっごく美味しいんですけど、ちょっと
高めなんですよ(苦笑)」

「それは、何料理なんですか?」

「和食です。だから、さっき藤崎さんがあっさりしてるけど、
軽すぎない方が良いって言った時に浮かんだんです。どうですか?」

「良いじゃないですか!会社からもそんなに離れていないんですよね?」

「はい!歩いて5分以内くらいです」

「じゃあ、そこにしましょう!」

やった~!理沙ちゃんが言ってるお店、たぶん、私も知ってる店だ。
あのお店、美味しいんだけど、ちょっと高いんだよね(汗)だから、
たま~にしか行けないから嬉しいかも。思わず頬が緩んじゃった。
もしかしたら、『行きたいなぁ・・・』って思ってた私の思いを
宇宙が叶えてくれたのかな?(笑)

弦ちゃんは、そんな私の表情を見逃さなかったみたいで、スッと傍に
寄ってきて、私の顔を覗き込んできた。

「ミウさんも知っているお店なの?」

「えっ!?」

「だって、中川さんが言った途端、顔が緩んだでしょ?(笑)
っていうことは、やっぱり、美味しいお店ってことなんだよね?」

「えっ、私、そんなに顔に出てた?(汗)」

「うん、思いっ切り(笑)ミウさんって、表情が豊かだから
分かりやすくて良いよね」

「それって褒めてる?(笑)彼女がオススメしてるお店、私が思ってる
お店だったらいいなぁって思ってた。美味しいんだけど、ちょっと高い
から、たま~にしか行けないの。しかも、つい値段でメニューを
選んじゃうから、本当に食べたいものが食べられなかったり
するんだよね(苦笑)」

「久遠さん、今日は遠慮せずに、食べたいものを注文してくださいね。
お財布は私ですから(笑)」

「あっ、聞こえちゃいましたか?(笑)では、遠慮なく、今日は
食べたいものを選びます」

「そうしてください。プレゼンに勝った時も何もお祝いが
出来なかったので、日は、そのお祝いということで、久遠さんだけで
なく、皆さんも好きなものを食べてくださいね。もちろん、藤崎さんも
ですよ。遠慮なさらないでくださいね」

「部長、ありがとうございます!イベント前の決起ランチ会ですね」

「そういうことになりますね。食事は、とても大切です。
人は、食べるもので出来ているんですからね。食べたいものを食べるのが
一番!もちろん、栄養のことを考えて食べるものを選ぶことも大事です
けど、『食べたい!』って思うのは、それを身体が欲しているから
なんですよね。だから、自分の『食べたい!』っていう気持ちを優先して
選んだ方が、心にも身体にも良いんですよ」

「なるほど・・・。さすが、部長!じゃ、今日のランチはイベントの
成功祈願も兼ねて、食べたいものを選びます!」

「はい、そうしてください」

こうして、私も含め、チームのみんな、テンション高めでお店に
向かったんだ。でも、朝からレオンくん、ひと言も発してないかも。
それに、敢えて自分の存在を消してるような気もする。

どうしたんだろう?だって、目も合わないんだよ。絶対、何か変!
それで、弦ちゃんにコソッと言ってみたの。

「ね、弦ちゃん、レオンくん、いつもと違うよね?」

「あっ、僕も思ってた。何かあったのかな?」

私たちがコソコソと話してたら、谷潤也と中川理沙子がすかさず
突っ込んできたんだ。あの二人、目ざといっていうか、何か見つけると
黙ってられないタイプなんだよね(苦笑)ま、見て見ぬフリして、
心の中で、あ~でもない、こ~でもないって勘繰られるよりは
マシなのかもしれないけど(苦笑)

「なんですか、二人でコソコソして。秘密の話ですかぁ?」

「なんか、藤崎さんとウチのチーフって、お似合いですよねぇ?」

そんなことを言いながら、二人共、ニヤニヤしてる。これって
冷やかされてるんだよね?でも、なんでだろう。イヤな感じが
しないんだよね。レオンくんとのことを冷やかされた時は、
なんかイヤだった記憶があるから、めっちゃ不思議。

私が弦ちゃんのことを好きだっていう自覚があるからイヤじゃないのか、
それとも、それ以上にレオンくんのことが気になって、それどころ
じゃないのか、どっちなんだろう?

「いや、レオンくんが今日は、いつも以上に静かだなと思って。
藤崎さんとレオンくんって、以前から知り合いだって聞いてたから、
藤崎さんに確認してたんだよ」

「えっ、藤崎さん、レオンくんと知り合いなんですか!?」

「ええ、まぁ(汗)」

「レオンくん、そうなの!?」

「うん、以前、同じところで働いていたことがあるから」

「え~っ、そうなんだ!でも、そういえば、今日って、まだひと言も
発してないね。さっきの打ち合わせでも、ただ聞いてるだけだった
よね?どうしたの?」

「いや、別に。何も言うことがないから黙っていただけで、
特に意味はありません」

「レオンくん、本当に何も言うことはなかったの?ほら、いつもなら、
私たちが気がつかないところもレオンくんが気づいて、色々指摘して
くれるじゃない?それもなかったの?」

「ミウさん、そんなに自信がないんですか?ずっと、ミウさん、
確認していたじゃないですか。今更、何もないですよ。あとは、当日、
何があっても対応できるような心構えが出来ていたら、それで良いと
僕は思いますけど」

「確かに、龍崎くんの意見、一理あるとは思うけど、仲間が心配して
くれているんだから、もう少し言い方を変えた方が良いかもしれないね」

「すみません。でも、イベントを今週末に控えたタイミングで会社に、
しかも朝イチで何の予告もなく弦夜が来た意味が分からなくて、ちょっと
苛立ったのは事実です」

「レオン、ごめん。昨日、思いついたんだ。思いついた段階で、レオンに
連絡を入れれば良かったね。申し訳ない。別に、皆さんにプレッシャーを
与えるつもりで来たわけではないんだ。ただ、会社は違うけど、
今回のイベントに関しては、僕もチームの一員になったつもりでいたから、
進捗状況を直前に、見て、聞いて、確認したかったんだよ。

でも、僕のわがままで、レオンの気分を害してしまったのなら謝る。
本当にごめん」

「いや、謝らなくても良い。僕も大人気なかったと思う。イライラし出すと、
内側にそのイライラを閉じ込めておけなくて、つい顔や態度に出して
しまうのは、僕の悪いクセだと思う。弦夜、悪かった」

「レオンくん、苛立った時は、黙ってないで、ちゃんと言って欲しいな。
そうじゃないと分からないから。こうやって、言葉にして相手に伝えた方が
お互い、気持ち良いじゃない?前にも言ったよね?

それに内側に感情を閉じ込めておけなくて、つい顔や態度に出ちゃうって
ことが分かってるなら尚更。これからは、ちゃんと言葉にしてください。
いい?分かった?」

「ミウさん、ごめんなさい」

「でも、お店に入る前に解決して良かったね。藤崎さんとチーフの
コソコソの甲斐がありましたね(笑)」

「無駄に突っ込まれたけどね(笑)」

「すいません!(笑)」


<次回へ続く>
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