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第三話
しおりを挟む半ば意外で、半ば予想通りだったというか、あきらは実際にアルバイトを始めると周囲の期待以上の働きを見せた。初日こそガチガチに緊張して物も言えない有り様だったが、とりあえずそこに立って見てるだけでいいと言ったにも関わらず、最後の方には俺と一緒ならば注文も取れるくらいにはなれた。二日目にはかなり調子が出てきた様子で、ぎごちないなりに注文を取ってくるようになった。仕事ぶりはゆっくりだが確実で、俺にとっては、その反対よりは何倍も好感が持てるものだった。大体、剣道部から入ってくるアルバイトの場合、逆のパターンが多い。
元々、地頭の良さが俺たちとは比べ物にならないくらいわけだ。言ったことは大体通じるし、一度言えばめったに忘れないし、なんというか、とても便利だ。
「いや、そんなことないですよ。僕なんかまだまだ未熟者ですし。忙しい時間帯とか、疲れちゃって動けなくなることありますし」
「ピークタイムは慣れるまでは仕方ない。無理して料理床にぶちまけられても困る。それよりは、休みながら見て覚えるくらいのつもりでいてくれていい」
あきらは「そうですか」と軽く微笑んだ。謙遜しているが、彼の仕事ぶりは十分すぎるほど優秀だった。特に、新人には厳しい店長が、彼に対しては何も文句を言っていない。
初めのうちは気付かなかったのだが、あきらの声はとても不思議な響き方をした。それは見た目と同じくとても細くて頼りないくせに、なぜだか店内のどこにいるのか、はっきりとわかる。途切れることなく、話す内容が伝わってくる。そんな響き方。笑い声には、さらにそこに不思議な揺らぎが加わって、それを耳にすると俺はなんとなく胸がざわめく。
「カヅさん最近よくあいつと話してますね。あきらさんと」
ある日、店を閉める作業をしている時に、拓夢が切り出した。
「え、なに。同じバイト仲間なんだから当たり前だろ、ましてや新人だし。何か面倒くさいことでも言い出すつもりか?」
俺はモップを握る手に力を込めると、そっちを振り返りもせずに、そう答えた。
「あいつ、俺たちとはろくに喋ろうとしないんすよ。まぁ、最低限の挨拶とか仕事に関してのことは話しますけど」
「俺にだって、そんなもんだよ。というか、バイト同士ってのは、本来そっちの方が正しいんじゃないのか。俺たちが、普段から少し仲が良すぎなんじゃないか」
こう言っておけば気が済むだろう、という淡い期待もあった。しかし、背中に感じる拓夢の視線の圧力は弱まらない。
「もう少し放っておいてやれって。初めてのバイトだって言っていたし。こう言っちゃなんだが、俺たちみたいな脳筋とは元々が毛色が違うんだ」
俺はモップ掛けを一旦あきらめて、後ろを振り返ると、そう言った。拓夢はまだ口をとがらせている。言葉の上ではどうこう言うことは多くても、彼がそういうのを顔に出すのは、少し珍しい。
「お前だって、バイト始めた頃はそうだったろ? 今でこそ馴染んでいるが」
「そりゃまぁ……確かにそうですけど……」
拓夢も自分の言っていることが間違っていることを理解していたのだろう。それでも、やはり納得いかない、といった様子だ。
「それにしても、お前はどうしてそんなにあきらにこだわるんだ」
「別にこだわってなんかいないすよ。ただカヅさんがどう思ってるのかな、って思っただけで」
「へぇ」
「でも、もういいっす。別に」
拓夢はそれだけ言うと、黙々と掃除を始めた。俺は、その後姿を眺めていると、自然と片眉が上がっていることに気付いた。
軽くため息をついて、俺も掃除に戻った。
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