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第十二話
しおりを挟むハロウィーンパーティが終わってからしばらくの間は、俺にとっては、なんも目立った変化は起こらなかった。俺は若干の混乱を抱えつつも、普通に日常生活を過ごすことができていた。あきらはそんな俺に、完全に以前と変わらない様子で接していた。変化はむしろ、あきらの方に起きていた。あきらは今や完全に注目の的になっていた。あの時のコスプレ姿がかなり評判になったらしく、あきらと同じ大学の学生や周囲の高校生たちが、あきら目当てに来店するようになっていた。あきらはまるで押し寄せるファンをあしらうアイドルのように、一緒に写真を撮ったりサインに応じたりしていた。
「すごいな、あきらちゃん。働き始めた時はあんなことできる子だとは思ってもみなかったよ」
いつの間にか俺の隣には、普段はなかなか厨房から出てこないことで有名な店長が立っていた。俺と店長は突っ立ったまま、あきらが注文を取る姿をぼんやりと眺めていた。
「愛嬌は増したし、くるくるとよく働くし。彼がいなくなったらどうしようだとか、ちょっと考えたくなくなるレベルになったな。今のうちに時給上げとくか……」
「そうした方がいいと思いますよ。あきらだったら拓夢たちも文句言ったりしないでしょうし」
「だよな。それにしても、剣道部出身の連中ともうまくやってるもんなあ。あいつら、基本的にお前の言うことしか聞かなかっただろ。それが、あきらちゃんには妙に懐いてるんだから」
「とは言ってもあきらも大学生ですからね。いつまでもこの店でバイトしてるわけじゃない。長くてもあと一年ちょっとで辞めることになるんですよ」
「まぁ、彼だったらいい進路見つけられるだろうよ。お前とは違ってな」
いきなりの辛辣な言葉に、俺は思わず顔をしかめてしまった。
「話変わるけどさ、お前さ、今まで正社員になる話ずっと断ってきたじゃない。あれさ、いきなり店長待遇で雇うって言われたら、考える?」
突然切り出されて冗談の一種かと思ったのだが、こちらに顔を向けた店長の様子は真剣そのものだった。
「まだ全然本決まりじゃないんだけど、オーナーがもう一店舗増やそうかなって言っててさ。場所が、ここよりは売り上げが伸びそうなところなんだよ。俺をそっちに持っていきたいらしくて。出来れば俺もそうしたいんだよ。給料も上がりそうだしさ」
突然大量の情報を流された俺の頭は軽くフリーズし、見慣れない物でも見るような目付きで、店長の顔を見つめてしまった。
「正直、この店舗は、剣道部のバイトたちさえうまく扱えりゃ回る店なんだ。店長がいるいないよりかは、お前の存在の方がよっぽど問題になる」
「それは……、買い被りだと思います。俺はただ長いこと働いてるだけで」
「こんな店で長いこと働けてるだけで大したもんだと思うけどな……。まぁ、オーナーもあんな人だし、店もこんな状況だけど、オーナーもお前だけは使い捨てにするつもりはないとおっしゃっている。俺もできる限り力になるつもりだ」
その時、喋っている俺たちに気が付いた様子で、あきらがこちらに振り返った。店長は笑顔で、手だけで「頑張ってくれ」みたいな合図をした。
「大体さ、いつまでもこんなとこでふらふらバイトしてんのもどうかと思わねえか?いい加減、何かしら決めてもいい頃合いだろ。思い切って今回の話に乗っちまったらどうだ?」
店長の声色は普段よりも少し厳しめだった。それだけ、真剣に話してくれているんだろうということは、感じた。
「……少し、考えさせてもらっていいですか」
「当たり前だろ!お前自身の進路だぞ。こんな大切なこと、本来いくら考えたって時間が足りないもんなんだ。これをきっかけにとりあえず考えろ。しばらくの間考え続けていろ」
うつむいた俺の背中を、店長が思いっきりはたく。そこだけ赤く熱を伴ったような痛みが、なんだか心地よく感じられた。
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